記事のポイント
ジェイリンドバーグはゴルフでも「トンネルフィット」を導入し、選手のスタイルを通じてブランドの認知とファッション性を高めている。
若年層や高所得層を含むゴルフ視聴者層の拡大により、同市場はプレミアムブランドにとって魅力的なマーケティング機会となっている。
スポーツとファッションのクロスオーバー戦略が進展し、アンバサダーの活用は今後さらに文化的領域へと広がる見込みである。


「トンネルフィット」はいまや、バスケットボールやフットボールといったスポーツでよく知られた現象となっている。これは試合前に選手たちが会場入りする際に着用しているファッションのことで、視聴者の関心を集めているだけでなく、選手に衣服を提供するブランドにとってもマーケティングの機会となっている。

最近では、ゴルフのトンネルフィットが登場した。ゴルフやテニス、スキーで知られているスウェーデンのアパレルブランド、ジェイリンドバーグ(J.Lindeberg)は、1月からゴルフのアンバサダーを起用し、トンネルフィットを意識したスタイルの発信を推進している。同社はマット・ウォレス、ビクトル・ホブラン、キャスリン・ニュートンといったプロアスリートと協力し、マスターズ(Masters)やバルスパー選手権(Valspar Championship)といったメジャーゴルフトーナメントの前にアンバサダーに衣服を提供している。

ゴルフ界でも「トンネルフィット」がビジネスチャンスに



この戦略は、ファッションとスポーツの世界の最新のクロスオーバーを示している。男女を問わずバスケットボール選手がファッションアイコンとなった一方で、同じような変化がテニスやF1、そして今ではゴルフといったほかのスポーツにも波及している。

ジェイリンドバーグのアプローチは、同社のシニアPRおよびマーケティングマネージャー、エミリア・エッサー氏の発案によるものだ。

「長い間、これをやろうとしてきた」とエッサー氏は米Glossyに語った。「NBAとNFLでは選手たちの試合会場への到着時のスタイルが、ファッションブランドにとって非常に重要な瞬間となっており、各ブランドはそこに多くの労力と資金を投入している。しかし、ゴルファーがコース外でどのような服を着ているかについては、これまではほとんど話題にされていなかった。これは、当社のプレタポルテや、ファッション寄りのビジネスの側面を打ち出す絶好の機会だった」。

ジェイリンドバーグのアンバサダーたちは、ゴルフコース上で同社のパフォーマンスウェアを着用しているが、同社はもっとファッション性の高い商品も数多く取り揃えている。5月12日から19日にシャーロットで開催されたPGA選手権(PGA Championship)では、マチュー・パボン、ホブラン、ウォレスといったゴルファーたちがジェイリンドバーグのファッションコレクションを着用して会場に現れた。ジェイリンドバーグだけでなく、選手たちも皆、自分のソーシャルメディアアカウントにそのルックを投稿した。

バスケにも匹敵するゴルフ人気



ゴルフの視聴率は、米国ではバスケットボールなどのスポーツに匹敵する。PGAツアー(PGA Tour)の日曜夜の最終ラウンドの平均視聴者数は約200万人で、これはNBAの平均的な試合とほぼ同じだ。マスターズのような重要なトーナメントでは、視聴者数が1200万人に跳ね上がることもあり、これは平均視聴者数が約1200万人のNBAチャンピオンシップと同程度だ。

また、ゴルフ界にはバスケットボール界ほどの有名選手はいないかもしれないが、なかには巨大なオーディエンスを獲得しているゴルファーもいる。たとえばビクトル・ホブランはインスタグラムに76万人以上のフォロワーを抱えている。

「特にCOVIDの時期には、ゴルフがより身近なものとなった。ほかにやることがなく、安全にできるスポーツだったので、若い観客がプレーしたり、観戦したりするようになった」と、エッサー氏は指摘した。米国では4500万人以上がゴルフをプレーしており、このスポーツを楽しむ若者の数は2020年以降、40%増加している

高所得層を惹きつける、ゴルフ×ファッション



ゴルファーのスター性を活用しているブランドはジェイリンドバーグだけではない。別のゴルフ専門ファッションブランドであるマルボン(Malbon)も、ジェイソン・デイといった選手に衣服を提供している。マルボンの大胆で派手なブランディングのルックは、コース上では目を引きすぎてプレーの妨げになるとして、デイはトーナメント中のスタイルをトーンダウンするよう何度も要請されていた。

ゴルフの観戦者も裕福な傾向にある。2024年のある世論調査では、米国のゴルフ視聴者の約74%が年収7万ドル(約1000万円)以上の中・高所得層であることがわかった。そのため、よりプレミアムな製品を提供するブランドにとって、このスポーツは絶好の機会となっている。ホブランは今年初め、自身がプレーするコースを描いた柄のジェイリンドバーグのセーターを着てマスターズに現れた。エッサー氏によると、約250ドル(約3万6000円)で販売されているそのセーターは、すぐに完売したという。

カルチャーとの融合 「スポーツ」を超えたブランド戦略



多くのファッションブランドがそうであるように、ジェイリンドバーグも文化的な分野への進出を以前にも増して模索するようになっている。リーバイス(Levi’s)やオールドネイビー(Old Navy)といったブランドのリーダーたちはここ数カ月、米Glossyに対し、アスリートやミュージシャン、エンターテイナー、コンテンツクリエイターなどと一緒に仕事をすることで、自社ブランドを消費者のトップオブマインドに維持することができると語っている。

「我々は、本気でスポーツとファッションのクロスオーバーを構築しようとしている」とエッサー氏は言う。「来年には、たとえばアンバサダーをファッションショーの最前列に招待したり、ショーに出演させたりするなど、アンバサダーとの取り組みをさらに拡大していく予定だ」。

昨年のゴルフアパレル市場の価値は90億ドル(約1兆28044億円)以上であり、ジェイリンドバーグは2020年以降に売上を伸ばし、現在は1億3000万ドル(約185億5000万円)以上に達している。

[原文:Fashion Briefing: Forget the NBA, golf tunnel fits are here]

DANNY PARISI(翻訳:Maya Kishida、編集:戸田美子)
Image:Malbon(X)