〈女王様と“奴隷”…女同士の絶対服従カップル〉養子縁組を結んだオペラ歌手×元自衛隊員「ムチ打ちはしません」

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現役オペラ歌手兼SMクラブの女王様として働く「さだにゃん」と、元自衛隊員で現在は経理の仕事をしている「みーちゃん」は、養子縁組をしており、都内に暮らす同性カップルだ。2人は自分たちのことを「絶対服従同性カップル」と名乗り、YouTubeやSNSで話題になった。2人の生い立ちや馴れそめ、私生活について聞いてみた。

【画像】オペラ歌手兼SM女王「さだにゃん」の女王様姿

「SMじゃなくて、ドミナント/サブミッシブの関係なんです」

東京藝術大学を卒業し、昼は現役オペラ歌手として音楽教室を営み、夜はSMクラブで女王様として働く「さだにゃん」(30代前半)。彼女と養子縁組をしているパートナーの「みーちゃん」(30代後半)は、防衛大学校を卒業した元自衛隊員で、現在は会社員として働いている。

----さだにゃんさんとみーちゃんさんは、いつSMに目覚めたんですか?

さだにゃん  幼稚園の年長か小1くらいのときにアニメ「美少女戦士セーラームーン」を録画したくて、父の書斎にあったビデオをデッキに入れたら、レズビアンのSMモノのアダルトビデオが自動で再生されたんです。

内容は、美しい女性2人がボンデージ(エナメル風のコスチューム)を着てイチャイチャしているシーンから始まって、そのあと男の人が女性たちにいじめられる、っていうものでした。

私はそのビデオを観た瞬間、「すごく美しいな」と思ったんですよ。それ以降、大好きになって、その日からセーラームーンそっちのけで、親の目を盗んで何度も観ていました。

みーちゃん  私はそもそもSMに目覚めてないと思います(笑)。さだにゃんが主催するSMイベントをスタッフとして手伝うことがあるんですけど、「あまり理解できない世界だな」と思いながら見ています。

さだにゃん  「SM」と「ドミナント(支配する側)/サブミッシブ(支配される側)」って別物なんですよ。みーちゃんと私は、ドミナント/サブミッシブの主従関係であって、そこまでSMの関係ではない。だから、毎日みーちゃんをムチで打つとかはしていないです。ときどき噛みついたりとか、少し首を絞めたりとか、ちょっと拘束したりとか、すれ違うときにお尻を叩くくらいはするけど(笑)。

みーちゃん  私は痛いのが嫌いなんです(笑)。

----2人はどんな幼少期・学生時代を過ごされたんですか? 

みーちゃん  私はXジェンダーなので、物心ついたときから「性別」という概念がないんです。幼稚園で男女別に並ばされるときも、自分が男の子か女の子か、どっちかわからなくて。でも、いつも女の子のほうに並ばされるから、「自分は女の子なのかなぁ」と思っていました。

初恋は小4のときで、相手は女の子でしたね。好きになる相手の性別については何も考えていませんし、女性を好きになることに対して葛藤とかもなかったです。

 さだにゃん  私は、母が実家で音楽教室をしていたので、ずっと家で音が鳴っている環境で育ちました。小2のクリスマスに父からバイオリンをプレゼントしてもらってからは、バイオリンを弾いていた記憶しかないです。
ご飯を食べる時間とお風呂に入る時間以外はずっと練習していましたね。初恋は、幼馴染の男の子でした。

----ということは、さだにゃんさんはもともと男性が恋愛対象だったんですか?

さだにゃん  いえ、私はみーちゃんと出会うまでは女性とお付き合いしたことがなかったんですけど、もともと女性も好きでした。もし、学生時代に可愛い女の子に告白されていたら、何も考えずに付き合っていたと思います。
私はポリアモリー(複数の人と同時に付き合う恋愛スタイル)なので、現在もみーちゃん以外の男性とも主従関係を持っているんです。

----それに対して、みーちゃんさんは嫉妬しないんですか?
 
みーちゃん  いえ、むしろ痛いことは他の人にやってくださいって思っています(笑)。

「私が何を好きになろうが、他人には関係ない」

----みーちゃんさんは、自身がXジェンダーであることを、周囲にいつカミングアウトしたのでしょうか?

みーちゃん  家族には、さだにゃんと結婚(養子縁組)するときにカミングアウトしました。最初は一番理解ありそうだった妹に伝えて。そのあと妹から母に伝えてもらい、母から父に伝えてもらいました。

妹は、前から私の部屋が「あまりにも男っぽすぎる」と言っていたので、もともと勘づいていたのかもしれません。母も前からうっすらと気づいていた様子でした。

さだにゃんを私の実家に連れていき、一緒に結婚の挨拶をしたとき、家族はなんだか気をつかってくれている感じでした(笑)。今ではさだにゃんと私、母、妹で台湾旅行に行くくらい仲がいいです。

大人になってからカミングアウトしたので、傷つくこともなかったですし、あまり考え込まない性格なので、自分がXジェンダーであることに対して葛藤したり、悩んだりしたこともないですね。

さだにゃん  みーちゃんのお母様は、とてもよくしてくださっています。「音楽教室のレッスンで人の心に触れることがよくあり、悩んでいる」という話をしたら、心理系の本を何冊も送ってくださったこともありました。

みーちゃん  母は臨床心理士として働いているということもあり、すごく理解があるんです。家族の中では葛藤があったのかもしれないですけど、表面上はずっと普通に接してくれていますね。

----さだにゃんさんは、自身がポリアモリーであることに対して、周囲から批判を受けたことはありますか? また、それに対して悩んだことは? 

さだにゃん  周りの友人や知人は、私がポリアモリーであることを理解してくれています。あと私が卒業した東京藝術大学には、LGBTQの方がたくさんいて、隠している人もあまりいなかったので、葛藤や悩んだことはないですね。それに、私が何を好きになろうが、他人には関係ない。女性を好きになることに対しても、「可愛いものはみんな好きじゃん」って感じです。

交際開始半年で養子縁組。理由は「死に目にあえないかもしれない」から

----そもそも、2人の出会いはいつなのでしょうか?

さだにゃん  2年前に友だちが主催したレズビアンイベント出会いました。

みーちゃん  はじめて出会ったとき「綺麗な人だなぁ」と思って、私からアプローチしました。そばをウロウロしたり、話しかけたりしていましたね。

さだにゃん  私はそれまで女性と付き合うきっかけがなかったんですが、みーちゃんはすごいガツガツ来てくれたんですよ。

----どのような経緯で付き合うことになったんですか?

みーちゃん  出会って2日目にさだにゃんが酔っ払って私に電話をかけてきて、「結婚してくれないなら死んでやる!」と言われたんです。そのあと、「お付き合いしてください」とLINEでメッセージが送られてきました。

さだにゃん  私はその記憶がまったくなくて(笑)。でも、それがきっかけでお付き合いすることになりました。

----2人が同棲するようになったきっかけは?

さだにゃん  お付き合いしてから、みーちゃんが私を家に帰してくれなくなったんですよ。みーちゃんの家は私の自宅から遠くて、音楽教室の仕事のたびに、片道40分かけて行き来していました。
でも、SMクラブの仕事の予約が急に入って、みーちゃんの家に調教道具の縄を取りに行かなきゃいけなくなることもあって、けっこう大変だったんです。だから、一緒に住むことにしました。

----どのような経緯で養子縁組に至ったのでしょうか? 

みーちゃん  東京都のパートナーシップ制度だと、万が一パートナーに何かがあったとき、都の病院以外だと立ち会えない可能性があるんです。それだと、死に目にあえないかもしれないので、早く養子縁組しようって話になりました。

さだにゃん  2022年7月に付き合い始めて、同年12月に籍を入れました。養子縁組は1日でも年上のほうの籍に入る決まりになっているので、私がみーちゃんの籍に養子として入っています。

----同性婚が認められていない日本の現状に対して、率直にどうお考えですか?

さだにゃん  日本では現状、同性カップルが同じ籍に入るためには、養子縁組をするしかありません。でも、今の法律では、一度養子縁組をした相手とは結婚できない。もし将来的に日本で同性婚が認められたら、それに対して何らかの救済措置があることを願っています。

みーちゃん  同性婚が認められたら、どうするのが私たちにとって一番いい形なのか、さだにゃんと話し合って決めたいですね。

----今後の目標は何ですか?

さだにゃん  SMとアートを融合させた「artiSM」というイベントを主催しているんですけど、そのイベントを海外でも開催したいですね。私たちがやるSMはとても美しいので、海外の方々にも観てもらいたいです。

----お2人の将来の夢は何ですか?

みーちゃん  田舎で隠居とかしてみたいね。

さだにゃん  そのときは、SMカルチャーが盛んな札幌がいいなぁ。SMって、寒いところで盛んなんですよね。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班