(※写真はイメージです/PIXTA)

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リノベーションは、古い家を新品同様に綺麗な住まいへと変貌させることも可能です。しかし、後々後悔するケースもあって……。本記事では、高橋さんの事例とともに、リノベーション物件の注意点について、FP相談ねっと・認定FPの小川洋平氏が解説します。

実家を理想の終の住処にリノベ

高橋洋介さん(仮名/66歳)は、妻の啓子さん(仮名)とともに年金生活を送っています。年金額は夫婦で月22万円です。都内の中堅企業で勤務し、65歳で定年退職しました。東北地方の実家では高橋さんの母が暮らしていましたが、母が介護施設に入居したことで空き家となったことを機に、都内のマンションを売却して実家に移住を決めたのでした。

実家は築60年の木造住宅、傍から見たらボロボロ。ですが、これを改装して住めないかと考えたのです。売却も視野に地元の不動産会社に相談したところ、リノベーションして住むことを提案され、「マンションを売ったお金もあるし、どうせなら思いきってきれいにしようか」と妻と相談のうえ、決断。実家をリノベーションして住むことに。

外壁も最近の流行りのものに張替え、家のなかも3つの部屋と台所にわかれていましたが、壁を取り払い、フローリング材を敷いて1つの広いリビングにしました。窓もすべて樹脂製の二重サッシに変えるなど、断熱性能の強化、耐震性能の強化も行い、見違えるように生まれ変わりました。自治体の補助金が総額で200万円ほど受け取れたため、持ち出しは2,000万円ほどです。

そんな生まれ変わった実家に移り住み、近所に住む地元の古い友人たちを招いてホームパーティーを行うなど、新居生活を楽しんでいたのでした。

「くさっ」…新居を襲った悲劇

生まれ変わった実家に移り住んでから2年が経ったころ。ある日の朝、啓子さんに「ねえ、なんだか妙な臭いがしませんか?」と揺さぶられて起こされた高橋さん。「確かに言われてみれば異臭がするような……」と首をかしげます。

はじめは気のせいかと思っていましたが、日に日に臭いはきつくなり、外から家のなかに入ると「くさっ」と思わず鼻をつまむほどに。そして、壁紙にも謎のシミが。はじめは黒い点々模様がある程度で、醤油などを飛ばしたのかな?とあまり気に留めていませんでしたが、だんだんとシミは大きく、広範囲に広がっていきます。

「これは、家のなかになにか問題がある」と考えるようになりました。

判明した悪臭の原因

リフォーム業者を呼び、壁の内部をチェックしてみたところ、壁の内部で結露が発生してしまっていたことが原因と判明。リフォーム業者が言うには、生活スタイルによっては、壁の内側で結露が発生することがあるとのこと。高橋さんは、冬場に大量の水蒸気を発生させるファンヒーターを使用していたため、湿気が壁の内側で冷やされてしまい、結露が発生しやすい状態だったと説明がありました。

そして、その影響により柱はシロアリに食われてしまい、シミになっていた部分だけでなく、床下や屋根裏でも同様の状況。そして、すでに柱は痩せ細り、強度も落ちてしまい、このまま住むのは危険な状態となってしまっていたのでした。

驚愕の事実に高橋さんは絶句します。「2,000万円も払ったんですよ!」と妻の恵子さんは泣き崩れました。

リノベーションにより欠陥住宅になった高橋家

「欠陥住宅……」高橋さんは他人事だと思っていたことが自分の身に起きてしまったことを認識しました。ネットの記事やテレビなどで欠陥住宅の事例を見たことがありましたが、まさか我が家でそんなことが起こるとは思ってもみませんでした。リノベーションをしたばかりのころは、「ここら辺でこんなに素敵な家はお前の家だけだ」と地元の友人から羨まれたものです。

しかし、「業者側はほかにそんな事例はない、高橋さんの生活スタイルが原因でこのようなことが起きてしまったのだ」の一点張り。自社の責任を否定し続けます。

その後、壁の内側の湿気を逃がす通気の施工に問題があったことがわかり、業者側の責任であることが認められましたが、業者側は設計を依頼した設計事務所側の責任であり、自社の責任ではないと繰り返します。なかなか話が進展しないまま、そのあいだはホテル暮らし。さらに2年が経過したところで、高橋さんはようやくリフォーム費用を取り戻すことができたのでした。

しかし、実家はすでに立て替えたほうがよいというような状態です。結局、広いマイホームを諦め、地方都市の中古マンションの一室を購入することになったのでした。実家は、もとの空き家に戻ってしまいました。

空き家は増えるが…

総務省統計局「平成30年住宅・土地統計調査」(速報値)によると、13.55%が空き家になっているというデータがあり、2040年ごろには約3分の1が空き家になるというシミュレーションもあります。

退職を機に空き家を購入し、リノベーションして暮らしたいと考える方もいるでしょう。新築時にも同様のことがいえるのですが、悪質な業者により、高橋さんの事例のようなことが起きてしまうケースがあります。建築会社によってはこういった結露や家の通気についての知識や技術が乏しい会社もあり、そういった会社を選んでしまうとこのような悲しい事態となってしまうリスクが高まります。

専門的な知識が必要で正確な判断をすることは難しいところでもあります。事前にできることとしては、こういった欠陥によるトラブルがあることを知り、もしトラブルに巻き込まれた場合にどう対応しているかなど、気になることはしっかり確認してから業者を選ぶことが重要です。

小川 洋平

FP相談ねっと

CFP