ジム代補助にプロテイン休憩、仕事中に筋トレもＯＫ…マッチョ殺到・「筋肉」で介護もかっこよく
「日本一マッチョが多い」福祉会社経営 丹羽悠介さん（３９）
体を鍛えた介護福祉士らが働く福祉会社「ビジョナリー」（名古屋市中区）を経営し、愛知県内を中心にグループホームなど約２５施設を展開する。
キャッチフレーズは「日本一マッチョが多い介護の会社」で、介護の仕事はかっこいいとアピールし、業界のネガティブなイメージを変えたいからと訴える。就職の応募は殺到しており、人手不足が深刻な業界に一石を投じている。
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岐阜県羽島市出身。学生時代にファッション誌やテレビで見た「カリスマ美容師」に憧れ、専門学校を卒業後、名古屋市の美容院に就職した。
しかし、いざ働き始めてみると、カリスマ美容師になる難しさを感じ、意欲が保てなくなって１年ほどで退職。その後、様々なバイトを転々とする生活を送ったが、知人に金をだまし取られるなどして人間不信になり、家に引きこもるようになった。
福祉の世界に出会ったのは２００７年。２２歳のときに訪問介護の仕事をしていた姉に誘われ、ボランティアで利用者の散髪をしたことがきっかけだった。利用者から「ありがとう」と言われてやりがいを感じ、人と接する喜びを思い出した。
０８年に思い切って、親が営んでいた一宮市の飲食店の空きスペースに事務所を構え、姉らと現在の会社を設立。その後はしばらく訪問介護を中心に行い、地域の利用者と向き合ってきた。
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再び転機が訪れたのは１７年。ダイエットのために始めた筋力トレーニングにのめり込み、ボディービルの大会に出場した時だった。
ジムや会場で、ストイックに筋肉と向き合う他の選手たちを見ているうちに、「こんなかっこいい人たちが、介護の仕事をしてくれれば、業界のイメージが変わるはずだ」とひらめいた。カリスマ美容師の登場で理美容業界のイメージが一変したことを思い出したからだ。
筋トレで鍛えた「マッチョ」によって福祉業界が「かっこいい仕事」になる可能性を感じただけではなかった。筋肉を鍛える過程で、筋肉の仕組みや関節の動きに精通していくマッチョは、力仕事の多い福祉業界に向いているとも感じた。
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きつく、厳しいといった業界の印象を変えるため、すぐに行動に移した。
１８年には、ボディービルの実業団「セブンシーズ」を設立。実業団に所属する社員のジム代やプロテイン代を補助するだけでなく、就業８時間のうち２時間を筋トレに充てられるようにするなど、社内制度を整えた。
この取り組みが、ジムやボディービル大会関係者の間で話題となり、多くのマッチョたちが就職を求めて応募が殺到。２０人ほどだった社員は約２００人にまで増加した。今でも月６０件の応募が寄せられるという。
丹羽さんにスカウトされ、２３年から同社で働く実業団所属の薄井拓也さん（２４）は「仕事中にタバコ休憩ならぬプロテイン休憩に行っても、周りから白い目で見られることがない。仕事も筋トレも、同僚と高め合いながら頑張ることができている」と語る。
「人と接する喜びを思い出させてくれた福祉の仕事に恩返しをしたい」。業界を盛り上げていく起爆剤的な存在になろうと、鍛え上げた胸の筋肉に思いを込めた。（乙部修平）
