●「今やっていることが未来につながるのか…」と問いかける日々

女優の土屋太鳳が、フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00〜 ※関東ローカル)のナレーション収録に臨んだ。担当したのは、15日に放送される『いつまで夢を追いますか〜路上役者 令和の路上物語〜』。街角で一人芝居を続ける「路上役者」と、彼を支える妻を追った作品だ。

将来への不安を感じながら日々を過ごしているという土屋。だが、この「路上役者」が奮闘する姿を見て、刺激や勇気を受け取ったと語る――。

『ザ・ノンフィクション』のナレーションを担当した土屋太鳳

○路上で一人芝居パフォーマンス

自らを「路上役者」と名乗り、道行く人に芝居を披露する亮佑さん(35)。20歳の時、原宿で芸能事務所にスカウトされ、俳優としての道を踏み出したが、鳴かず飛ばずで事務所を辞め、小さな劇団の舞台俳優として演劇を続けてきた。

そんな時、公演のチケットを売るためにパフォーマンスとして始めたのが、路上での一人芝居。通行人から初めて投げ銭をもらい、リアクションを間近で感じた喜びから、以来、アルバイトで生計を立てながら「路上役者」としての活動を週に6日、続けてきた。

そんな亮佑さんの一番の理解者が、アルバイト先で出会い、4年前に結婚した妻の華恵さん(33)。生活のためにはお金も必要だが、「亮佑さんには夢を捨ててほしくない」と、アルバイトをしながら夫婦の暮らしを支えている――。

神社で祈る亮佑さん・華恵さん夫妻 (C)フジテレビ

○「一度共演してみたいなと思えた方です」

亮佑さんの姿を見て、「一度共演してみたいなと思えた方です」という土屋。その魅力を聞くと、「お芝居というのは人の描いた心を演じるものですが、結局は自分の生き方を提示して、それに共感してもらうことだと思うんです。亮佑さんはちゃんと自分の生き方をセリフにして、見てくれる方に感情を伝えることで巻き込んでいる感じがすごく素敵だなと思いました」と印象を語る。

「路上役者」としての生き方に悩む場面も登場するが、「今やっていることが未来につながるのか…というテーマは、私も1日1回は自分に問いかけてしまうので、今回はそれをすごく突きつけられました」と共感。

そんな中で、亮佑さんからは、「今を大切にして、自分で少しずつ光を見つけながら突き進んでいく姿に、刺激を受けました」といい、「お芝居は追っても追っても答えが見えないのでよく不安になるのですが、亮佑さんのように気持ちを奮い立たせて、見てくださる方のことを思いながら、いいお芝居ができるように追い続けたいなと思います」と感化されたようだ。

まだ役者一本で食べていくことはできない亮佑さんだが、「最近、すごく感じるのですが、どんな人にも、時期が早いか遅いかの違いだけで、必ず“順番”が来ると思っているんです。だから、いつか亮佑さんが路上だけでなく、映像も含めてたくさんの人々の心に触れる機会ができることを楽しみにしたいと思います」と期待を述べた。

●路上芝居の原動力は「人の心の動きが好き」と推察

路上に立つ亮佑さん (C)フジテレビ

「路上芝居」について、同じ役者という立場から見ると、「みんな自分の人生に必死で、“久しぶりに空を見た”という人もいるような中で、路上でお芝居を見てもらうというのは、本当に難しいと思うので、私はとても勇気をもらいました」と受け止めたそう。このスタイルができるのは、「やはり人の心の動きが好きな方なんだろうと思いました。心が動いた瞬間などをキャッチする能力に長けている方なのではないでしょうか」と推察する。

芝居は一人で演じる亮佑さんだが、番組では彼を支える様々な人たちとの交流も描かれている。かたや土屋も、先日放送された『24時間テレビ47』(日本テレビ)で、ヒロインを務めた朝ドラ『まれ』(NHK、2015年)のロケ地だった能登を訪れ、現地の人々と親交を重ねている様子が映し出された。

「亮佑さんは来てくださった方々にメッセージを送っていましたが、愛情が伝わっているんだろうなと思って、すごく共感しました。出会った人を大切にするということは、どの職業でも大切なことだと思うので、素敵だなと思います」

また、亮佑さんを一番近くで支えながら、自分の夢に向かって生きる妻・華恵さんには、「亮佑さんの大ファンに見えました」と印象を抱き、「亮佑さんの生き方がお芝居になって、人に何かを伝えていくことの素敵さが、華恵さんの活力になって、ご自身のカフェ開業という目標になっているので、素敵だなと思いました」と捉えた。

○人間の本質の部分をちゃんと伝えてくれる番組

見知らぬ人を褒めまくる「褒めますおじさん」を追った『ほめる人とほめられる人〜褒めますおじさん 令和の路上物語〜』を前週8日に放送した『ザ・ノンフィクション』では、街角で繰り広げられる人間ドラマ「令和の路上物語」を2週連続で放送。

今回、「路上役者」のドキュメンタリーに語りを吹き込んだことで、「こういうふうに自分の夢に向かって進んでいる方がいることを知ると、自分事のように感じてきますし、これからは“いないかな?”と探しながら歩いてしまうかもしれないです(笑)」と、路上パフォーマーへの見方に変化が生まれる予感を抱いたようだ。

そんな『ザ・ノンフィクション』について、「今の時代、きれいな写真や絵を切り取ろうと思ったらいくらでもできますが、普通に生きている人たちが本能的に持っている、人間の本質の部分をちゃんと伝えてくれる番組と思います。だから、すごくうらやましいと思う瞬間もあるし、たまに“なんでだろう?”と悶々としながらナレーションをすることもあるのですが、本当にいい番組だなと思います」と魅力を語った。

そして、今回のサブタイトル「いつまで夢を追いますか」にかけて、自身が目指している夢を尋ねると、「いい生き方をしたいです」とのこと。「追うものは一つじゃなくてもいいと思っていて、いい生き方をすればいいお芝居ができるはずだと信じていますし、家族ともいい生活ができると思うんです。全部に心を込めて追っていきたいですね」と意欲を示している。

●土屋太鳳1995年生まれ、東京都出身。08年公開の映画『トウキョウソナタ』で女優デビュー、10年に大河ドラマ『龍馬伝』でドラマ初出演を果たした。翌年のドラマ『鈴木先生』での女子生徒役で注目を浴び、その後も連続テレビ小説『まれ』(15年)でヒロインを演じるなど、活躍を続けている。映画『orange -オレンジ-』(15年)で日本アカデミー賞新人俳優賞に輝き、『8年越しの花嫁 奇跡の実話』(17年)では同優秀主演女優賞に選ばれた。今後は、ドラマ『海に眠るダイヤモンド』(TBS)が10月にスタート、映画『八犬伝』が10月25日に公開予定。