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貧困家庭に生まれ、いじめや不登校を経験しながらも奨学金で高校、大学に進学、上京して書くという仕事についたヒオカさん。「無いものにされる痛みに想像力を」をモットーにライターとして活動をしている。第74回は「物価高 子供の困窮」です。

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困窮家庭がより窮地に追い込まれる夏休み

子どもの夏休みが終わり(もしくは終わりにさしかかり)、ほっとしている家庭も多いのではないだろうか。元々夏休みは困窮家庭にとって、家にいる時間が長くなることで水道光熱費があがったり、給食がない分栄養バランスの取れた食事をとらせるのが大変だったり、他の家庭のように体験をさせてあげられなかったりと、さまざまな面で大変な時期だ。しかし、今年は物価高などの影響で、さらに窮地に追い込まれる家庭が少なくないようで、連日窮状を訴える報道が続いている。

NPO法人「キッズドア」が困窮家庭を対象に行った調査では、約6割が夏休みの短縮、または廃止を希望すると回答した。理由として、「子どもが家にいることで生活費がかかる」「子どもに夏休みの特別な体験をさせる経済的な余裕がない」「給食がなく、子どもが必要な栄養を摂れない」といったものがあがったという。

シングルマザーサポート団体全国協議会が行った「全国ひとり親家庭の物価高による影響調査」によれば、物価高のほうが新型コロナより家計への影響が大きいと回答した人が61%だった。

子どものおやつを減らしたと回答した人が36%、大人の食事の回数や量を減らした と回答した人が62%にのぼった。

さらに、暖房をいれない69%、入浴回数を減らす34%、トイレを流す回数を減らす19%など、切り詰めている様子も伺える。


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支援側も物価高騰により支援困難に

支援する側にも、物価高の影響は深刻なようだ。困窮世帯への食品の支援も行うフードバンクでは、物価高や米不足の影響により、需要は高まる一方で寄付が減っており、対象者に届ける食品の確保が難しくなっているという声があちこちから聞こえて来る。

フードバンク仙台が行った「フードバンクへの食品寄付の現状と食料支援事業への影響アンケート」によれば、6割以上の団体が寄付が減少したと回答したという。さらに、食料寄付量が「減少した」「大いに減少した」と回答した42団体に、食料提供活動への支障を質問したところ、「支障がある」が39.0%、「大いに支障がある」が43.9%となった。

「缶詰1個でもいいので寄付を」というNPOの声を取り上げた記事もある。(「缶詰1個でもいいので寄付を」 矢板のNPOフードバンク、物品不足が深刻 コメは緊急在庫のみに)

NHKの記事によると、「東京などで活動するあるフードバンクを利用している世帯は、2023年は2018年と比べて20倍」(首都圏ナビ 物価高騰 ひとり親世帯支援のフードバンク利用者急増で需給バランス崩壊も“十分な支援困難に”)だという。


『死ねない理由』(著:ヒオカ/中央公論新社)

民間頼りで公的支援があまりに足りない

日本は豊かな国、というのはもはや幻想で、食べるに事欠き、飢える人がいるというなんとも残酷で悲しい現実だ。夏休みという一つの山を乗り越えても、おさまる気配のない物価の高騰。スーパーに行くと、短いスパンで何かしら値上げされていて、「価格改定のお知らせ」のお知らせがひっきりなしに届く。それなのに一向に賃金は上がらず、ただただ生活がじわりじわりと苦しくなり、追い詰められていく。私たちは大きな試練に直面している。

ではフードバンクへの寄付を呼びかけよう、と言いたいところだが、え、あれ、なんかおかしくない? そもそも、国民が食べるものにすら困っているのに、その対応をするのが民間のフードバンクっておかしくないか? と思わずにはいられない。税金ってこういうときのために使われるものじゃないんだろうか。未曾有の物価高を前に、国はあまりにも無策ではなかろうか。もちろん何もしていないわけではないのだろうが、フードバンクの窮状を見るに、公的支援があまりに足りないと思わざるをえないのだ。

政治家にはお得意の「まずは自助」とか言ってる場合じゃないぞ! と言いたい。


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