セキュリティが強化されているマンションでも油断は禁物です(写真:Mills / PIXTA)

旅行や帰省などで長期間、自宅を不在にする人も多い夏は、空き巣などの侵入窃盗が増加する。また留守中でなくても、侵入した犯人が住民を脅し、金品を奪う「強盗」被害も続出している。

警察庁によると、令和5年における住宅を狙った侵入窃盗の認知件数は1万7469件で、前年比11.3%増加した。

そのような中、安全な暮らしを支える「セキュリティ面」に魅力を感じ、マンションを選んだ方も多いはずだ。

防犯カメラや防犯センサー、防犯性の高い鍵などのほか、非接触キーや生体認証などを使ったオートロック、エレベーターセキュリティ(行先階制御)といった新しい設備を導入し、セキュリティ対策に力を入れているマンションは多い。

加えて警備員や管理人、コンシェルジュなどが常駐する場合は、「人の目」も防犯性に一役買っている。

高層階でも侵入被害のリスク

しかし残念ながら、100%安全なマンションは存在しない。

たとえば3階以下の低層階の住戸はバルコニーやテラスから侵入しやすく、犯人が「逃げやすい」ため、4階以上の高層階に比べて被害を受けやすい。警察庁のデータによれば、低層階の侵入窃盗被害は高層階の約2倍になるという。では高層階の場合はどうなのか。


*生活環境営業とは、「パチンコ、ホテル・旅館、深夜飲食店」などを指す

高層階では屋上や非常階段、電柱などからの侵入被害が目立つ。それも窓や玄関からの侵入が多いのが特徴で、強盗に関しては高層階も低層階と大差ない被害が報告されている。


*生活環境営業とは、「パチンコ、ホテル・旅館、深夜飲食店」などを指す

宅配業者を装ったり、窓ガラスを割ったりするなど悪質なケースもあるが、侵入経路の多くは住民が窓や玄関の施錠を怠った無締り(無施錠)によるもの。ゴミ捨てなどわずか5分程度の無施錠でも空き巣などの被害が発生しているのだ。

マンション全体の防犯性がいくら高くても、玄関や窓の施錠をおろそかにして被害に遭ってしまっては、元も子もない。さらにマンションの場合、大規模修繕工事などで足場が組まれることがある。足場が侵入経路となり、部屋に忍び込まれる事案も発生しているのでより注意が必要となる。

「留守」を感じさせない「5つの工夫」

侵入窃盗を計画する者たちは、綿密な計画のもと、つぶさに侵入先を観察している。だからこそ「留守」だと悟られないようにすること、「防犯」に気を配っていることをアピールすることが大きな意味を持ってくる。

防犯性に長けたマンションであっても、長期不在にする際には次のような配慮のもと、不在を感じさせない5つの工夫を行うことをおすすめしたい。

1.親しい「ご近所さん」、管理員・コンシェルジュへの声かけ

空き巣などの侵入者は、声をかけられることを警戒する。近隣住民からの声かけや目視により侵入を諦める場合も多いという。

留守時の不審者を意識してもらうためにも、近隣の住民や管理員などに声をかけておくことをおすすめしたい。そのためには日頃から適切にコミュニケーションを取り、ある程度の信頼関係を構築しておかなくてはならない。

2.窓や玄関への施錠は確実に!

ゴミ出しなど短時間でも、不在時は施錠する習慣をつけておこう。長期間不在にする際は、浴室・トイレなどの窓の施錠も要チェック。

3.SNSでスケジュールを公開する際は細心の注意を払う

今や当たり前のようになったSNSへの投稿も、場合によっては犯罪リスクにつながりかねない。「行先」「旅行日程」など不在時期を明確にするような投稿は控えるようにしたい。また自宅周辺や部屋の様子がわかるような写真をアップする際も注意が必要だ。

4.スマートスイッチ(沿革操作)を活用する

照明を定期的に点灯することによって、「在宅」をアピールできる。外出先からオン・オフを操作できるスマートスイッチを活用するのも一案だ。電球の交換やアダプター・SwitchBot (スイッチボット)などを使い、既存のスイッチをスマート化することもできる。


mw / PIXTA(ピクスタ)

5.郵便局には不在届を。新聞などは配達中止を依頼

郵便物や新聞などがいっぱいになった郵便受けは自ら「留守中」を示しているようなもの。長期間留守にする場合、あらかじめ「不在届」を出しておけば、帰宅後に受け取ることも可能。また局留めを利用する方法もある。

セキュリティ対策はアップデート済み?

比較的新しいマンションでは、セキュリティ対策に力を入れているケースがほとんどだ。しかし建築から年数を経た築古マンションの中には、防犯対策が現状に追いついていない物件も見受けられる。

改めてセキュリティを強化する意味でも「しっかりと防犯対策済み」である点をアピールしておくことをおすすめしたい。

たとえばかつて主流だった防犯性の低いタイプの鍵(ディスクシリンダーキー、ピン・シリンダーキー)などが使われている場合は、補助錠を取り付けるといい。ツーロックにすることで鍵を開けるのに時間がかかり、侵入を諦めるケースも少なくないからだ。

気をつけたいのが、玄関ドアに補助錠を追加で取り付ける際のルールは、マンションごとに異なる点。まずは管理規約を確認するのが先決となる。この他、侵入に時間がかかるような対策と言えば、防犯フィルムを活用する方法も挙げられる。

基本中の基本である「死角」を減らすことも有効な方法となる。侵入経路となりやすいバルコニーに大きな荷物を置いたままにするのはNGだ。死角をなくすために人感センサー照明器具を利用するのもいいだろう。既存器具にセンサーつきの電球などを使用すれば簡単に対応できる場合も多く、不審者を威嚇する効果も得られるだろう。

このようにマンションに備わっている対策に加え、自分たちで防犯性アップをする方法は複数ある。けれどもマンションには共有部分も多く、すべて居住者の自由にできるわけではないことを心しておきたい。

たとえば玄関ドアの場合、外側は共有部分と見なされる。防犯性を向上させるための補助錠、デジタルキー・スマートキーの取り付けはマンションの管理規約、細則による制限があるケースも少なくない。再度確認しておく必要が出てくる。

また警備会社のホームセキュリティ(住まいの見守りサービス)を利用する際、任意で自宅の鍵を預けるサービスもある。この場合、補助錠などを設けたことで、万が一の時に警備会社が室内に入れない可能性があるため注意が必要だ。

さらに長期不在中、窓につけた防犯センサーが作動してしまい、誰も解除できなかったという事例も報告されている。

停電のリスクにも注意を

そして忘れがちなのが「停電」による影響だ。セキュリティシステムは、電源が供給されて作動するのが基本だ。

停電した場合、自動的に解錠されるタイプのものから閉まるものまでメーカーによって仕様が異なる。そのため管理会社やメーカーに確認し、停電時にどのような対処が必要なのかを知っておくのも重要だ。

また来訪者対応やロック解錠などの役割を担うインターホンは、自動火災報知機と連動している機器が増えつつある。この場合は予備のバッテリーが働き、60分程度は動き続けるとされている。

実は今、太陽の活動が活発化しており、表面で大規模な爆発が発生している。11年周期で起こる「太陽フレア」と呼ばれる現象だ。5月頃、日本各地で見られた美しいオーロラも、太陽フレアの影響によるもの。

神秘的な現象を巻き起こす太陽フレアだが、地球の磁場にも大きな影響を与え、大規模停電や通信障害を引き起こす可能性が指摘されている。

太陽活動の活発化が予測される2025年は特に停電に気をつけると同時に、防犯システムの動作をあらかじめ頭に入れておかなくてはならない。

不審者、侵入者への対策をはじめ、高い防犯性を誇るマンション。どんなにシステムが進化しても、1人ひとりの防犯意識が向上しなければ本来の「セキュリティ」は成り立たない。

空き巣に狙われにくいマンションを目指し、「自分ごと」として積極的かつ効果的な防犯対策に取り組んでほしい。

(長嶋 修 : 不動産コンサルタント(さくら事務所 会長))