お墓の隣にある物件は安い?マンションの価格の決め方を不動産鑑定士が解説
プロと一般人では持っている情報量の差が圧倒的な不動産情報。国家資格である不動産鑑定士の資格を持つ泰道征憲さんと、同じく資格保有者でYouTuberとしても活躍する中瀬桃太郎さんが書いた、不動産リテラシーが分かる『悪魔の不動産鑑定』。身近な不動産問題がいかに「怪しく」、一方でいかに「魅力的」なのか…。今回は本書より、「お墓の隣に住んでみた」についてご紹介します。
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お墓の隣に住んでみた
マンションの価格はどのように決まるのでしょうか?
もちろん、需要と供給のバランスによって決まるのですが、不動産鑑定士が価格を決める場合、原価法、取引事例比較法、収益還元法の適用を検討して、あれをこうして、これをあれして……とても長い説明が始まってしまうので、ここでは、重要度の高い取引事例比較法の説明をします。
取引事例比較法を噛み砕いて説明すると、あっちのマンションはあの値段で売れているから、このマンションはこの値段だろうという手法です。実際には数多の事例を収集したうえで、細かく比較しながら価格を査定していきます。
具体的にどのような物差しで測られているのか、マンション事例を比較する際の良い要因(増価要因)と悪い要因(減価要因)を見ていきましょう。
物件の査定要素
分譲マンションの増減価要因をまとめると以下のとおりです(もちろん、これらが全てではないので、悪しからず)。
よく「過ぎたるは及ばざるが如し」なんていいますが、同じ要因でも増価要因にも減価要因にもなる場合があることに留意しなければいけません。例えば、前面道路でも狭すぎると使いにくいですし、広すぎると交通量が多くなり騒音等が引き起こされます。
以上のことを踏まえて、墓地が隣にあるマンションはどうでしょうか。
一般的には、気味が悪い、縁起が悪いといった心理的嫌悪感を抱く傾向にあるため、減価要因となります。賃貸ならまだしも一生に一度のマンションの購入となれば、不安要素はできるだけ避けたいと思うのが普通でしょう。
一方で、隣に墓地があるという要因のよい部分を挙げると、採光や眺望を確保しやすいことです。たまに、隣地に高層建物が建築され、眺望が損なわれた話を耳にしますが、墓地であればそういった可能性は低いでしょう。
『悪魔の不動産鑑定』(著:中瀬桃太郎、泰道征憲/クロスメディア・パブリッシング)
お値打ち商品かも?
「幽霊なんて信じない! けど気になってしまう……」そんな方にはオススメできませんが、気にならない方にとっては、高層建物が建たないというメリットがあり、多少安くなるというお値打ち商品なのかもしれません。
長所は短所、短所は長所ともいいますし、デメリットばかり挙げて減点方式で物件を選ぶとなかなか物件は決まりません。そんな時はすこし角度を変えて見てみると、案外よい面が見つかるかもしれません。
結論:お墓が隣にあるのは基本的に減価要因。ただし、採光や眺望を確保できるというメリットも。
要点(1)
同じ要因でも増価要因にも減価要因にもなる場合がある。
要点(2)
不動産鑑定士がマンションを査定する場合、周辺マンションの増減価要因を全て洗い出したうえで比較する。
『悪魔の不動産鑑定』より
※本稿は、『悪魔の不動産鑑定』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。