感情を高ぶらせ涙を見せた森保一監督【写真:徳原隆元】

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【カメラマンの目】先制点からスコアは動かず、スピードに欠ける試合展開に

 2026年ワールドカップ北中米大会を目指した北中米ワールドカップ(W杯)アジア2次予選で、3月21日に日本代表は北朝鮮と対戦した。

 ホーム・国立競技場での試合は1-0というスコア以上に内容が奮わなかった。

 単純に実力差だけで言えば両国には大きな隔たりがあった。日本は最新FIFAランキングで現在18位。対する北朝鮮は同114位となっている。

 しかし、サッカーは勝敗が流動的で実力通りの差が結果に反映される確率が低いスポーツだ。それがサッカーの最大の魅力であるのだから、対戦した格上のチームは相手を侮れないし、格下のチームは一泡吹かせてやろうと戦う。

 それにしても昨年の6月シリーズから始まった、連勝街道をひた走っていた日本の姿はどこにもなかった。北朝鮮の荒っぽいサッカーに気圧された部分もあるのだろう。実際、レフリーがもっとカードを出しても良い場面があった。

 ただ、局面ではラフプレーと言える激しいチャージを見せた北朝鮮だが、組織的な前線からの守備を仕掛けてくるわけでもなく、ボールを持った日本の選手は、プレッシャーによって追い込まれるような場面はなかった。

 そのため日本は後方である程度は余裕を持ってボールをキープできた。そうなるとここは活発な動きを見せてゴールを目指さなければならないところだが、北朝鮮の組織力の低いアバウトなサッカーに足並みを揃えるようにスピードに欠け、しかも攻撃の起点とはなりづらいボール回しを日本は行ってしまう。パスで相手のラフプレーを交わすという意味もあったが、もっとボールをつなぐプレーをアグレッシブに行った方が良かった。

 開始早々にゴールを挙げ、追加点はいつでも挙げられるという思いも選手たちの脳裏の端にはあったのかもしれない。

 しかし、田中碧の前半2分のゴールから、その後の88分間で追加点が生まれることはなかった。ドリブラーの三笘薫、伊東純也という二枚看板が不在だったとはいえ、特に前半はただの蹴り合いといった内容に終始した。

 これでは迫力あるプレーは生まれない。ボールに意思があったとしたら、痛さで悲鳴を上げるくらいの強力なキックによるパスは皆無で、ダイナミックな連動による鋭い攻撃もほとんどなかった。

 試合前、望遠レンズを装着したカメラを森保一監督に向けた。国歌演奏で感情を高ぶらせ涙を見せる指揮官にシャッターを切る。しかし、どうやら森保監督はそうした溢れ出すチームへの熱き思いを選手たちには伝えられなかったようだ。そして、選手たちも監督の思いをピッチで表現することはできなかった。

 繰り返すがサッカーでは技術的に格下の相手とはいえ、一気に攻め落とすのは難しい。それは分かる。

 しかし、たとえ勝敗の行方がどうであれ、負けたとしても連勝していた時のまさに相手を仕留めるといった強烈な一撃をくらわすような気迫がみなぎるサッカーを日本には見せてほしい。

 FIFAランキングで大きな開きがある相手に“つまらない好勝負”を演じているようでは、W杯本大会でさらなる高みを目指すことはできない。(徳原隆元 / Takamoto Tokuhara)