二郎系の"神豚"を再現「とろとろ煮豚」家で作る技
二郎系の「神豚」を目指したとろとろの煮豚を作ります
料理の腕を上げるために、まず作れるようになっておきたいのが、飽きのこない定番料理です。料理初心者でも無理なくおいしく作れる方法を、作家で料理家でもある樋口直哉さんが紹介する『樋口直哉の「シン・定番ごはん」』。今回は「とろとろ煮豚」です。
煮るスタイルのチャーシューは日本独自
二郎系と呼ばれるラーメン店のチャーシューは「豚」という名前で、とくにおいしいものを「神豚」と呼ぶそうです。今回はそんな神豚を目指して、とろとろのチャーシューを作ります。
チャーシューは中国料理の代表的な一品ですが、日本ではそれをアレンジし、独自の煮るスタイルのチャーシューが進化しました。ラーメンのトッピングにするには身が締まった焼き豚よりもやわらかいほうがなじみやすいですし、スープもとれるので一石二鳥だったのでしょう。
町中華風のチャーシューについてはこの連載でも『意外と手軽!「町中華のチャーハン」家で作るコツ』で触れています。前回は肩ロースを使いましたが、今回使用するのは豚バラ肉。豚バラ肉は脂肪とコラーゲンが豊富で長時間加熱するととろけるような食感が出ます。
とろとろ煮豚の材料
豚バラ肉 500g
水 1L+200ml
しょうゆ 100ml
みりん 70g
酒 大さじ2
にんにく 1片
うま味調味料(味の素) 一振り0.1g(あれば)
豚バラ肉は脂肪と赤身が層になっていますが、写真の豚バラ肉の下側に注目してください。他とは色味が違う赤みの肉が見えるはずです。この部位は肋骨のあいだに入っている筋肉で長時間煮込んでもやわらかくなりません。そのままでもかまいませんが、手で簡単に外れるので細かく切ってさっと炒めて食べるといいでしょう。
豚バラ肉は脂肪と赤身のバランスがいい肉を選んでください
水1Lに10cm幅くらいに切った豚バラ肉を入れ、中火にかけます。
18cmの片手鍋を使っています
沸騰してきたら弱火に落とし、2時間煮ていきます。火加減はできるだけ弱火にしてください。
鍋が大きい場合は水の量を増やしてください。豚バラ肉が完全に被るくらいが目安です
表面の乾燥を防ぐためにキッチンペーパーを落とします。鍋のフタはしません。気化熱を利用して、鍋の表面を冷やしながら、穏やかにゆでるためです。
キッチンペーパーがない場合は時々、肉を裏返しましょう
2時間ゆでる、と聞くと面倒に思うかもしれません。しかし、ゆでるという調理法は水があるかぎりは焦げたりしないので、放置しているだけです。この時間に他の作業もできるでしょう。
豚バラ肉はコラーゲンが豊富な部位です。コラーゲンは加熱すると硬くなりますが、さらに加熱を続けるとゼラチン化し、やわらかくなります。長く煮込む料理には厚手の鍋がいいでしょう。厚手の鍋は熱の伝わり方が緩慢なので、火力を小さくしても鍋全体が均等に加熱されるので、仕上がりが安定します。
漬け込むタレを準備しておきます。しょうゆ、みりん、酒、にんにくのみじんぎりをあわせて好みでうま味調味料(味の素)を一振りし、ひと煮立ちさせ、アルコール分を飛ばします。
にんにくは好みで省いてもいいでしょう
途中で水200mlを足しながら2時間経った肉の状態がこちらです。すっかりやわらかい状態になっています。熱いうちに厚めにスライスし、酢醤油、または辛子醤油で食べても美味です。
途中、浮いてくるアクもキッチンペーパーで取り除けます
熱いうちにジッパー付きの袋に移し、タレを注ぎます。このまま常温で1時間以上置き、味を染み込ませます。2時間以上置く場合は粗熱がとれた頃合いで冷蔵庫に入れてください。この工程で味が染み込みます。
ジッパー付きの袋に入れ、水につけて空気を追い出すと効率的です
付け合わせの野菜を準備します。キャベツの葉3枚(100g)ともやし200gです。
カット野菜を使ってもいいでしょう
キャベツは適当な大きさに切り、熱湯で1分間ゆでます。
ゆで加減は好みです
ゆでる湯には塩を加えないのが原則。塩を加えると野菜の細胞壁が溶けやすくなり、水気が出てきてしまいます。味のついていない野菜と味の濃いチャーシューを一緒に食べるからおいしいのです。
もやしを箸でつかんでしんなりしない程度が目安です
味の入った豚バラ肉をスライスし、器に盛り付けましょう。
厚さは好みです
冷蔵庫に入れておいた場合はレンジで軽く温めると脂が溶け、食べやすくなります。器に盛り付け、ゆで野菜を添えましょう。チャーシューは作っておけば焼き飯に入れたり、そのまま炊き込みご飯にしたり、といろいろと応用が効きます。
最近はおいしい袋麺も市販されているので、ゆで野菜と一緒にトッピングにしてもいいでしょう。ゆでてからタレにつける手法は煮すぎる心配もなく、タレが煮詰まらないので香りも残り、味が安定する利点があります。豚の角煮よりも作るのが簡単なので、使える手法だと思います。
できあがり
(写真はすべて筆者撮影)
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(樋口 直哉 : 作家・料理家)