(写真:JIRI/PIXTA)

今や人々の生活に欠かせない存在となっているスマートフォン。とりわけ1996年〜2012年に生まれた「Z世代」はTikTok等の比較的新しいアプリを使用していると言われ、その使い方についても注目が集まっている。Z世代はスマホで何に時間を費やしているのだろうか。

本記事では、スマートフォンから収集するビッグデータを使って、Z世代のスマホ利用実態を明らかにする。データは株式会社ドコモ・インサイトマーケティングが所有する「di-PiNK®」(※1)のアプリ利用履歴(個別に同意をいただいた方)を基にしている。

Z世代のアプリ別利用時間が長いのは?

Z世代はどのようなアプリを利用しているのか。1日あたりの利用時間が長いアプリをランキング形式で示した。


YouTubeが最も長く1日1.29時間利用されているが、その他のアプリについては、1時間を下回る結果となった。詳細は後述するが、Z世代のスマホの平均利用時間が1日当たり6時間であることを考慮すると、そのうちの20%以上がYouTubeに費やされているのだ。

では、YouTubeはどの時間帯に多く使われるのだろうか。

YouTubeに加え、利用ランキング2位のX(旧Twitter)も含めた2つのアプリについて、平休日・時間帯別で示した。どの時間帯においてもYouTubeは多く利用されており、土日祝では8-24時台までつねに5%を超えている。


また、平休日問わず19-23時台の時間帯ではつねに8%を超える割合でYouTubeが利用されており、学校や仕事が終わる時間から寝るまでの間にYouTubeを視聴していることがうかがえる。

Xは平日の12時台に最も使用されているのが特徴だ。Xはテキスト形式のSNSであり、音なし・短時間で気になる内容だけ見ることができる。この特性から、動画形式であるYouTubeとは異なり、平日のお昼休みといった短いスキマ時間に最も利用されていると考えられる。

対照的に、帰宅してから就寝するまでの長いまとまった時間にYouTubeを利用しているのだろう。

19歳は起きている時間の40%近くをスマホに費やす

次の図は、1日あたりの平均スマホ利用時間を年齢別に示したものだ。最も利用時間が長いのは19歳で、6時間33分にも達している。睡眠時間を7時間と仮定すれば、起きている17時間のうち40%近くもスマホに費やしていることになる。Z世代全体の平均で見ても1日のスマホ利用時間の平均は6時間であり、この世代がいかに長い時間スマホを使用しているかがうかがえる。


しかし、Z世代と言っても19歳と27歳の平均利用時間を比べると1時間7分の差がある。このように特定の年代の中で差がある場合、ひとくくりにした考察のみを述べることは不十分だと言えるだろう。そこで利用時間が長い6つのアプリの利用時間を年齢ごとに確認する。

年齢別アプリ利用時間


特に違いがあるのはTikTokだ。15歳においては32分使われているが、25歳では8分に減少し、年齢を重ねるごとに値は小さくなる。Instagramも年齢を重ねるごとに減少する傾向があるものの、TikTokほど急激な減少はない。

Xは20歳をピークに利用時間が増加し、その後は減少する珍しい例である。それぞれのアプリの特性に着目すると、TikTokは動画、Instagramは画像、XはテキストをメインとしたSNSである。

Z世代の中で最年少である15歳においては、TikTok・Instagram・Xの順で利用されている一方で、27歳においてはX・Instagram・TikTokとまったく逆の順番となっている。アプリのリリース時期に依存する可能性がありつつも、Z世代の中でより若年であるほど視覚的なコンテンツに魅力を感じ、動画を用いたコミュニケーションを好むのかもしれない。

TikTokやXの利用時間が年齢ごとに大きく異なるのに対し、LINEは広い年代に利用されているのが特徴だ。最も利用時間の長い15歳の32分と最も利用時間が短い69歳の10分を比較すると22分と差があるが、20歳から50歳はすべて19分から24分に収まっており大きな差はない。

これはLINEが娯楽だけではなく幅広い年代におけるコミュニケーション手段として浸透しているためだと考えられる。

世代で一緒くたにせず細かな分析が必要

世代内で利用するアプリに違いがあることもZ世代の特徴だ。TikTokZ世代の中でもより若い層に利用されているのに対し、20代にはXのほうが利用されている。より若年であるほど、動画を介したコミュニケーションが好まれていると考えられる。つまり、ブラウザで調べる代わりにSNS、たとえばTikTokなどで検索するようになっているかもしれない。

Z世代”という言葉がフォーカスされるあまり、Z世代の中の多様性が軽視されていないだろうか。本稿では年齢にフォーカスし、Z世代の中でも19歳と27歳ではスマホの使い方に大きな違いがあることを見てきた。性別や居住地域など、他にも様々な要素で同様の世代内の違いがあるだろう。Z世代を対象としたマーケティング施策を検討する際は、世代で一緒くたにするのでなく、より解像度高く彼ら、彼女らを理解することが必要だ。

【スマートフォンアプリログデータ】
株式会社ドコモ・インサイトマーケティングが所有するdi-PiNK(※1)のアプリ利用履歴(個別に同意をいただいた方)
※1 di-PiNKは株式会社ドコモ・インサイトマーケティングの登録商標

(山津 貴之 : インテージ メディアアナリスト)