「勉強できる子、できない子」は机を見ればわかる!?(写真:Mai/PIXTA)

『がっちゃん英語 キミに読ませたくて創った文法書』(KADOKAWA)を上梓したYouTuber・がっちゃんと、ドラマ『ドラゴン桜』の脚本監修で知られ、『なぜか結果を出す人が勉強以前にやっていること』(東洋経済新報社)をチームドラゴン桜として上梓した西岡壱誠氏。語学の習得や受験という難関を乗り越えてきた2人のスペシャル対談が実現しました。

後編の今回は“結果を出す”ことの難しさや成功に至るための秘訣を語っていただきます。(前編はこちら

人に教えることが自分の学びになる

西岡壱誠(以下、西岡):がっちゃんさんがYouTubeを始めたのは、どんなきっかけだったんでしょうか?

がっちゃん:これはもう特別な事情も何もなくて、お金を稼ぐ手段の一つとして始めてみようかなと思っただけなんです。最初の頃は、東方神起などの韓国アイドルが好きな日本の人たち向けに、簡単な韓国語講座みたいな動画を作っていました。

西岡:それが現在のような英語の習得という内容にシフトしていったのは何か理由が?

がっちゃん:当初は韓国語のミニ会話を教えるだけの内容だったんですが、あるとき、視聴者から「ハッピーバースデーって韓国語でなんて言うんですか?」という質問が届きました。それに答える形で、韓国語、日本語、さらに英語のちょっとした違いやうんちくのようなものを話したら、視聴者の反応が予想外によかったんです。

自分の持っている韓国語、日本語、英語の知識は需要があるのかもしれないと思い、そこから現在のようなスタイルに変わっていきました。ちなみに韓国でも日本と同じように、ハッピーバースデーと声を掛けるし、ハッピーバースデーの歌も歌います。

がっちゃん:動画で英語を扱うようになって、私の知識をわかりやすく使えることを重視してきました。それと同時に、私の中にわいてきたのは「私の動画で視聴者が勉強しているのだから、私もそれに負けないくらい勉強しよう」という気持ち。ただ単にわかりやすく伝えるだけではなく、どこがわからないのか、英語のどんなところに苦手意識を持っているのか、そういうポイントを分析するようになっていきました。

西岡:なるほど。世間の人から見るとがっちゃんさんは「英語が得意なYouTuber」ということになると思うんです。でも、今までの話を聞くと「英語が得意ではなかったけど、だんだんと得意になっていったYouTuber」というほうが近いのかもしれない。


がっちゃん:それはあると思います。対談の前編でもお話ししましたが、10代の頃の私は韓国語も日本語も英語も苦手。2カ国語、3カ国語の話者のことをバイリンガル、トリリンガルと呼びますが、言わば私はゼロカ国語の話者、ゼロリンガルでした。

でも、私自身が英語を苦手にしていたからこそ、みんなが英語学習でどんなことに悩んでいるのか、気づける部分も多いのだと思います。

西岡受験において“結果を出す”というのは、もちろん志望大学に合格すること。そのためには人から学ぶモチベーションが大事、みたいな話になりがちです。だけど、今のがっちゃんさんのお話を聞いていると、逆説的ですが「人に教えるモチベーション」によって自分も相手もお互いに学んで結果を出していく、人に教えることこそが自分の学びになる、という感じがしますね。

苦手意識をバネにして結果を出す

がっちゃん:英語が苦手だった私が英語を教えているのは、なんだか不思議だなと思ったりもします。

生まれながらにしてエリートと呼ばれるような有能な人たちによって社会が変わっていく、というのはある種の事実ですよね。だけど私のような、元々は何か苦手があって、でも頑張って身につけていって、という人たちが世の中を一変させることもある。そういうポジティブな気持ちは私自身も忘れたくないし、英語に苦手意識を持っている人たちにも忘れてほしくないです。

西岡:まさに、僕もそんなことを思いながら『ドラゴン桜』という作品に携わってきました。僕自身もそうですけど、偏差値35から東大に逆転合格みたいなことって、苦手意識やコンプレックス、あるいは悔しさ、そういうものをバネにしたときに成し遂げられることなのかもしれない。そんな実感が確かにあります。

がっちゃん:英語の習得と東大合格という違いはありますが、苦手意識をバネにすることで結果を出すことができた、というのは私たちに共通しているところかもしれませんね。

西岡:僕はたまに生徒から「なかなか成績が上がらなくて」という相談を受けることがあります。成績が上がらない、つまり結果を出せていないわけです。こういうときに、僕は彼らに勉強している机の周りを写真に撮って送ってもらいます。で、その写真を見ると、なんで結果が出ないのか、たいていの場合はわかります。

がっちゃん:すごい! 特殊能力みたいですね。

西岡:特殊能力でも何でもなく、いくつかチェックするポイントがあるんです。まずは、机の周りがモノで溢れていないこと。授業のプリントとかがバーっと散らばっているような机では集中して勉強できないんです。机の周りはすっきりと整理してあるほうがいい。

そのうえで、本が何冊か近くに置いてあること。書籍という物体は近くにあるだけでいい影響を与えてくれる、と僕は思っています。

さらに、勉強を阻害する要因になるものが近くにないこと。わかりやすいところだと、スマホやゲーム機の類いですね。これは知られている話ですが、ポケットにスマホが入ったままの状態と入っていない状態、どちらが勉強に集中できるかというと、当然ポケットにスマホが入っていない状態です。スマホをポケットに入れたまま手に取らなかったとしても、ポケットに入っているだけで集中できなくなってしまうんです。

つまり、勉強しやすい要因を取り入れ、勉強を阻害する要因を取り除き、机の上を整理する。「なかなか成績が上がらない」と悩んでいる生徒はこの3つを意識できていない、というパターンはよくあります。

がっちゃん:結果を出すにはまず環境作りから、ということですね。

西岡:環境を整えたからといって結果が出るとは限らない、というのも難しいところですが。

結果が出ないときは誰にでもある

がっちゃん:環境作りとか習慣とか、日々の生活で私が意識しているのは「自分がごく普通の人間である」ということです。私は特別な存在じゃない。だから、人と同じように怠けるし、人と同じようにできたりできなかったりする。

とはいえ、動画やら原稿やらの締め切りはやってきますから、まずは3文字だけでいいから書き始める、というのはたまにやっています。3文字書いてそこで終わりにするのは逆に難しくて、3文字書いたら10文字くらいは書きたくなるし、10文字書いてみたらさらに3行くらい書きたくなってるかもしれない。


西岡:やらなきゃいけないことから目を背けてしまうのは誰でもありますもんね。僕の場合、書類仕事など自分が苦手な作業をやる時間を、意識的に作るようにしています。

がっちゃん:そうやって西岡さんに同意していただけるとホッとします(笑)。でもこういう気持ちって、私たちだけじゃないと思うんです。巨匠と呼ばれるアニメ監督のドキュメンタリーを見たときに、その監督が作業をしながら「あー、めんどくさい。実にめんどくさい」って一人言をつぶやくんですよ。こんなに偉大な人でも、こんなに好きなことでも、やっぱりめんどくさいものなんだ、とちょっと安心感のようなものを感じました。

結果が出ないとき、モチベーションが下がってしまうとき、そういうことは誰にでもある。そういうときこそ、この巨匠の「めんどくさい」というつぶやきを思い出して「苦しいときは誰にだってあるよな」と自分の気持ちをリセットするようにしています。

(がっちゃん : 英語学習系YouTuber)
(西岡 壱誠 : 現役東大生・ドラゴン桜2編集担当)