睡眠不足は内臓脂肪の増加やメンタルヘルスの悪化といった健康被害をもたらしたり、集中力を低下させたりするので避けるべきですが、深夜のスポーツ観戦やネットサーフィンでつい夜更かしをしてしまうことも。寝不足の朝を迎えた日にもきっちり仕事や学業をこなす方法を、アイルランドのトリニティカレッジ・ダブリンで組織行動学を教えているヴワディスワフ・リフキン氏が解説しました。

How a night of poor sleep can affect your next day at work - and four ways to function better

https://theconversation.com/how-a-night-of-poor-sleep-can-affect-your-next-day-at-work-and-four-ways-to-function-better-201896



リフキン氏が専門とする組織行動学の分野では、仕事の能率に影響を与える睡眠が重要視されています。例えば、リフキン氏らの研究チームが2021年に発表した研究では、いい睡眠をとった人の方は仕事でのパフォーマンスや集中力が高く、同僚をサポートする傾向も強いことが確かめられました。一方、睡眠不足の人は仕事を先延ばしにしてしまったり、他の人の手柄を自分のものにするといった非倫理的な行動をしたりしやすいことも判明しています。

このような問題が発生するのは、睡眠が認知スキルを低下させてしまうからです。特に、衝動や感情をコントロールし、仕事に集中し、面白くない作業をこなすために必要な認知スキルである「意志力」は、睡眠の質に大きく左右されます。



睡眠不足にならないようにするには、しっかりと睡眠を取ることが大前提ですが、誰でもたまには夜更かしをしてしまったり、なかなか寝付けない夜を経験したりするものです。そこで、寝不足になってしまった日にもできるだけパフォーマンスを落とさないようにする方法を、リフキン氏は次の4つにまとめました。

◆1:取り組むタスクを選ぶ

前述の通り、前の日の晩によく眠れなかった日は意志力が低下するため、できるだけシンプルであまり注意力や思考力が求められないタスクに取り組み、意志力を必要とするタスクを避けた方が無難です。どうしてもそのような仕事をしなければならない場合は、まだ余力がある朝のうちに意志力が求められるタスクを片付けるのがベターです。

◆2:マインドセットを見直す

マインドセットとは考え方や物の見方のこと。ある調査によると、「意志力についてどう考えるか」が意志力を発揮する能力に影響を与えるため、睡眠不足で低下した認知スキルを補うためには、自分の意志力についての見方を変えるのが効果的とのこと。



具体的には、「意志力の源になる精神的リソースは有限」と思い込んでいる人は、「意志力は簡単に回復できる無限のリソースから湧いてくる」と考えている人に比べて、意志力を発揮した後の消耗感が強いとされています。

そのため、リフキン氏は「意志力が無限だと考える人は、睡眠不足の日でも良好なパフォーマンスを発揮します。ですから、意志力を強く発揮すると精神的なエネルギーが枯渇してしまうと思っているなら、考え直してみるといいかもしれません」とアドバイスしました。

◆3:自分を変えられないなら状況を変える

例えばダイエットでは、キッチンにあるチョコレートを見る度に食べるのを我慢するより、そもそもスーパーでチョコレートを買うのを控えてチョコレートが目に入らないようにする方が確実です。2011年に発表された研究でも、「意志力を発揮するのが得意な人は、実は意志力を必要とする状況を避けるのがうまい人」だということが分かっています。

特に睡眠不足の日は、意志力を要する状況を回避する戦略をとることで、より生産的に仕事をこなすことができるようになると、リフキン氏は指摘しました。



◆4:面白映像を見る

リフキン氏によると、ポジティブな感情はネガティブな感情の有害な影響を相殺させるため、精神的なエネルギーの回復に役立つとのこと。実際に、リフキン氏は2022年に発表した研究で、「日中に面白い映像を視聴した人は、意志力を必要とする仕事による精神的な負担が緩和される」ということを突き止めました。

こうした知見から、リフキン氏は「寝不足の日に精神的エネルギーの低下を感じたら、楽しい映像を見て気分転換するのが有効かもしれません。ただし、夢中になって見過ぎるのは禁物です」と述べました。