●共演者と励まし合い「お互い頑張って芸能界で生き抜こうね」

シーズン1が世界的にヒットしたNetflixシリーズ『今際の国のアリス』のシーズン2が、12月22日より全世界で配信される。前作に引き続き山崎賢人(※崎はたつさきが正式表記)とW主演を務めた土屋太鳳にインタビューし、シーズン2決定時の心境、本作での役作りや現場でのエピソード、女優業への思いなど話を聞いた。



2020年に配信されたシーズン1が70カ国以上でTOP10入りした『今際の国のアリス』。土屋はインスタグラムでその反響を実感したという。

「コロナ禍で公開された作品だったので、あまり人に会うことがなく直接反響を聞くことができませんでしたが、インスタグラムのコメントに初めて接する言語がたくさんあり、これが世界に配信されることなのだと実感しました」

そして、シーズン2が決定したときは「とてもうれしかった」と言い、シリーズものに出演する喜びも実感。

「シリーズものができるって人生の中でそんなに多いことではないと思います。同じ役を長く生きるというのは、自分の今の生き方を残していくことができるということ。とてもありがたいと思いましたし、監督やスタッフさんたちにまた会えるのもうれしいです」

キャスト陣との再会もうれしかったと振り返る。「シーズン1のときは焦燥感があって『お互い頑張って芸能界で生き抜こうね』という話を。セリフでも『生きて会おう』というセリフが多かったのですが、『もしシーズン2があったら、辞めずにみんなで生き残って会おうね』と話していて、この世界でまた会えてよかったです」



主演作を含めドラマや映画に引っ張りだこの土屋だが、当たり前に芸能界で生き残っていけるという思いはなく、常に危機感を持っているという。

そして、同業の仲間たちと励まし合いながら高め合っているそうで、「同じ仕事をしている方々とお話をすることが多く、どうやったらこの世界で楽しく生き残れるか、どうやったら自分のやりたい仕事にたどりつけるか、すごく話します」と告白。

「一つ一つの作品がオーディション」という意識で臨んでいるそうで、「『アリス』の撮影が終わったときも、『もう一生、主演なんてないかもしれない』ってマネージャーさんに言いました。一個一個が最後だと思っています」と明かした。

その思いは、オーディションに挑戦し続けていた過去の経験から芽生えたものだという。

「7年くらいオーディションを受け続けて落ちていた時期があって、落ちる人の気持ちや、辞めようかなと思う気持ちがすごくわかるので、役をいただいたときにありがたさをすごく感じます。だから一つ一つ大事にしようと。ギリギリのラインでよくつながっているなと思いますし、これからも頑張ろうと思っています」

●アクションは「前向きにやっていきたい」 山崎賢人との共演も語る

シーズン2では、元の世界に帰るために“今際の国”の謎を追いかけるアリス(山崎)とウサギ(土屋)が、謎を解き明かす鍵と思われる場所で仲間と敵、そして“げぇむ”を操る黒幕と出会い、前作を上回る難易度の“げぇむ”に挑んでいく。山崎、土屋、村上虹郎、三吉彩花、桜田通、朝比奈彩、仲里依紗らシーズン1からの続投キャストに加え、山下智久、恒松祐里、磯村勇斗らが新キャストも加わった。



シーズン2で土屋は、ウサギの心情の変化を特に意識して演じたという。

「今回はウサギが隠していた弱さや迷いが出てくる。そして、元の世界に戻りたくないという感情から、元の世界に戻りたいと変わっていく流れがあって、誰かに言われて戻すのではなく、誰かを説得しようとした言葉によって自分の思いを理解していくという心情の変化なので、その掘り下げ方を頭で理解してから現場で本能的にやるというのを意識しました」

アクションシーンも見どころの本作だが、シーズン1とは違った技術が求められた。

「シーズン1はクライミングの動きが多かったのですが、シーズン2は相手の攻撃を受ける動きが多く、受けの練習を中心的にトレーニングしました。お腹を蹴られたときの“うっ”という感じとか。今まで私がやってきたアクションは攻めが多かったのですが、今回、受けがうまくないと相手の強さが伝わらないと実感し、改めてアクション部の方々に尊敬の気持ちを抱きましたし、受けってめちゃくちゃ難しいんだなと感じました」

土屋の身体能力の高さが存分に生かされた作品となったが、今後もアクションに挑戦していきたいと意欲を見せる。

「前向きにやっていきたいですね。自分のできることを生かしていくことでより自分を知ることもできるし、動けない方でも動いているように見せることができる世界だからこそ、自分が動ける意味を見つけていきたいなと。感情を伝えられるようなアクション……動けることでいっぱいいっぱいではなくて、動けるよりも感情だよねっていうアクションができたらいいなと思っています」





山崎とは、TBS系ドラマ『黒の女教師』(2012)、NHK連続テレビ小説『まれ』(2015)、映画『orange-オレンジ-』(2015)に続き、『今際の国のアリス』シリーズは4度目の共演となった。

本作での山崎との共演の感想を尋ねると、シーズン1の現場では「お互い芸能界で生き残れるかどうか」という話を共演者とよくしていたというが、シーズン2は「穏やかな会話が多かった」と言い、「お互いいろんな作品を経て、新しい趣味ができていたりして、おすすめの映画やアプリの話をしたり。賢人くんとも日常の中で気になることをのんびり話していた記憶があります」と振り返る。

演技においては山崎から大いに刺激を受けたそうで、「賢人くんは、大事なところでグッと持っていく……ちょっと怖いなと思うくらいの集中力をたまに発揮される。爆発力があってすごく刺激を受けました。普段はすごく明るいので、楽しくてすごく充実した現場でした」と語った。

●発声に取り組みポジティブに「普段の生活においても助かった」

演じたウサギと自身の共通点は「家族を大切に思っているところ」。「意識的に大切にしたいと思っています。姉も弟もシャイなんですけど、私がべたべたして2人とご飯に行ったりしています」と笑う。

ウサギの尊敬しているところは「冷静さ」だと言い、「私はいつも必死で、冷静にはなれないから、すごくうらやましいなと思いながら演じていました。私も冷静なときがほしいです」と憧れを口に。

土屋は子供の頃から一生懸命なタイプだったそうで、「60代、70代になったときに、あの必死さは必要だったかもなと思えるようになったらいいなと思って、今は必死にやっています」と話した。



2008年に女優デビューしてから14年。変わらず必死に一つ一つの作品や役と向き合っているが、経験を重ねる中で力を抜くことも大切だと学んだという。

「あえて無にするということが割と大事。ご一緒したドラムの方が『ドラムは強く力で叩いてもいい音が出ない。叩く瞬間だけ力を入れればいい。お芝居も一緒だよ』とおっしゃっていて、なるほどなと。そういったお芝居の仕方を目指しています」

シーズン1からの2年での成長を尋ねると、「発声かなと思います」と回答。「ミュージカルをやってから顔つきも変わりました。軟口蓋を上げるとき、目を開かないと上がらないんです。そういう部分でポジティブになったかなと思います」と変化を明かす。

発声によって性格的にもポジティブになったそうで、「お芝居だけでなく、普段の生活においても助かりました。以前は緊張して落ち着いて話せませんでしたが、今は響きを使って無駄に疲れないようにすることができるようになり、呼吸をコントロールすることによって気持ちもプラスに変えていくことができるようになりました」と述べ、「発声をすると心が明るくなりますよ! って皆さんにおすすめしたいです」とにっこり。

今後については「これからもいただいた役と向き合って、より楽しく、より集中して役を生きられるようになっていけたら。そして、人を育てるということもしていきたいと思っているので、それがお芝居にもつながったらいいなと思います」と語る。

自分だけでなく仲間とともにレベルアップすることで、より作品がよくなると考えている土屋。「ライバルと言う人もいますが、同世代でいろんな作品を作って、この世代めちゃくちゃいい作品に出ているよねって言わしたもん勝ちじゃん! って思うので、みんなでいい作品を作れたらいいなと。せっかく同じ時代を生きているので、楽しむことを忘れずにやっていきたいです」

ライバルという意識は昔から持っていないという。「そもそもそういう考えはいらないなと思ってきたので。負けず嫌いって言いますが、負けてもいいことがある場合もあるので、勝つことが好きという感じでやっています。負けるのも嫌いじゃないけど勝つほうが楽しいよねって」と述べ、「結局は自分との戦いなので、成長していけるように日々頑張りたいと思います」と力強く語った。

■土屋太鳳

1995年2月3日生まれ、東京都出身。2008年公開の映画『トウキョウソナタ』で女優デビュー、2010年に大河ドラマ『龍馬伝』でドラマ初出演を果たした。翌年のドラマ『鈴木先生』での女子生徒役で注目を浴び、その後も連続テレビ小説『まれ』(2015)でヒロインを演じるなど、活躍を続けている。映画『orange -オレンジ-』(2015)にて日本アカデミー賞新人俳優賞に輝き、『8年越しの花嫁 奇跡の実話』(2017)では同優秀主演女優賞に選ばれた。今年は映画『大怪獣のあとしまつ』や主演ドラマ『やんごとなき一族』などに出演。今後は映画『マッチング』の公開が控える。

(C)麻生羽呂・小学館/ROBOT