タクティカルFPSゲーム『VALORANT』の女性限定公式大会「VALORANT Champions Tour Game Changers」では、2022年10月12日より東アジア大会「Game Changers East Asia」が開催されます。

今回は、8月に行われた国内大会「Game Changers Japan」で優勝に輝いた、プロゲーミングチーム「FENNEL」のVALORANT女性部門にインタビュー。大会に向けて実施しているブートキャンプの内容や国内決勝の振り返り、女性選手としての活躍の展望、そして「Game Changers East Asia」への意気込みを聞きました。

なお、「FENNEL」VALORANT女性部門は、aika選手の活動休止に伴い、「ZETA DIVISION」所属のsuzu選手が「2022 Game Changers」出場期間終了まで移籍しています。また、今回の取材に参加できなかった韓国人プレイヤーのFestival選手からは、メッセージをいただきました。



Len選手の声かけを中心に集結したチームメンバー

――まず最初に、ゲーム内での役割などを含めて、皆さんの自己紹介をお願いします。

Curumi選手(以下、Curumi):「FENNEL」VALORANT女性部門、リーダーのCurumiです。ゲーム内では、主にイニシエーターを担当しています。

Len選手(以下、Len):Lenです。ゲーム内では、コントローラーをしています。

KOHAL選手(以下、KOHAL):KOHALです。IGL(インゲームリーダー)と、イニシエーターをしています。

suzu選手(以下、suzu):suzuです。チェンバーとデュエリストをやっています。現在、「ZETA DIVISION」から「FENNEL」に移籍しています。

Curumi選手

Len選手

KOHAL選手

suzu選手

――Festival選手について、リーダーのCurumiさんから代わりに紹介いただけますか?

Curumi:Festivalは、デュエリストを担当しています。チームのアイドルです。

――皆さんのこれまでの主な活動歴や、「FENNEL」に加入した経緯を教えてください。

Curumi:もともと『Alliance of Valiant Arms(AVA)』や『Apex Legends』など、いろいろなFPSをやっていました。『VALORANT』からチームでの活動を始めて、男性4人女性1人のアマチュアチームや、女性のみのアマチュアチームで活動していたことがあります。「FENNEL」には、Lenちゃんから声をかけてもらって入りました。

Len:他チームにも入っていたことはありますが、本格的に活動するようになったのは、このチームが初めてです。加入の経緯は、「FENNEL」に現在ストリーマーとして所属しているmittiiiさんの友人から、『VALORANT』女性部門のお話をいただいたのがきっかけで、Curumiちゃんやaikaちゃんを誘って徐々にメンバーを集めていきました。

KOHAL:前までは、配信だけしていました。そのころ、活動者が集まるコミュニティにいて、そこで『VALORANT』の女性大会を主催したことがあったんです。その大会でのプレイを観ていたLenちゃんが声をかけてくれて、「FENNEL」に入りました。

――suzuさんは、「ZETA DIVISION」に所属するまでの活動歴を教えていただけますか?

suzu:もとは『League of Legends(以下、LoL)』で女性プロチームに入っていたのですが、『VALORANT』に移行して、アマチュアチームやプロチームの「思考行結」に入って活動していました。「思考行結」では、男性に混じって「VALORANT Champions Tour」(以下、VCT)の国内大会にチャレンジしていました。

その後、女性大会の「Game Changers」が発表されたことをきっかけに、「ZETA DIVISION」のVALORANT女性部門へ加入しています。そして今回、aika選手の出場が難しくなったことから、移籍のお話をいただきました。

――ゲームジャンルが異なる『LoL』から『VALORANT』に移行されたのは、どういった理由があったのでしょうか?

suzu:最初に始めたゲームが『Counter-Strike Online(CSO)』というFPSで、『Counter-Strike: Global Offensive(CS:GO)』もプレイしていました。ただ、eスポーツの専門学校に入ったら、その学校には『LoL』のチームしかなかったので、『LoL』をがんばろうと(笑)。なので今は、もともとやっていたFPSに戻ってきた感じです。

――Festival選手が加入した経緯についても教えてください。

Len:ランクがイモータル以上の女性プレイヤーでメンバーを探そうとすると、すごく数が少ないんです。それで、「韓国人プレイヤーで誰かいないかな?」と話をしていたときに、彼女の名前が挙がったので、私から連絡を取りました。



大会前には、FENNELベースで3週間にわたるブートキャンプを実施

――現在実施されている、ブートキャンプの環境について教えてください。

Curumi:ブートキャンプ期間は3週間で、FENNELベースと呼ばれる練習場所に通って活動しています。韓国にいるFestivalとは、オンラインで一緒に練習しています。

――ブートキャンプ中は、1日どのようなスケジュールで練習していますか?

Len:お昼に集合して、夜の0時ごろまでチームで活動します。それ以降の時間は、それぞれ個人練習などをして、だいたいみんな朝方に寝ていますね。スクリムは2マップを1セットとして、1日3セット組むことが多いです。

――スクリムでは、普段どんなチームと対戦することが多いですか?

KOHAL:自分たちより格上のチームとスクリムを組むことが多いです。よく対戦するのは、日本や韓国、中国、フィリピンなどの男性チーム。少し前には、「Game Changers East Asia」に出る女性チームとも対戦しました。

――その女性チームとのスクリムの手応えはどうでしたか?

KOHAL:半々ですね。中国の女性チームとは、2回スクリムをして1勝1敗でした。

――suzuさんは移籍が決まってから、現在のチームでの練習はいかがですか?

suzu:このメンバーで練習を始めて1カ月くらいですが、みっちりスケジュールを組んで練習しているので、チームにも慣れてきたし、すごく楽しんでやれています。チームによってコーチも違うので、いろんな考え方を感じられて、すごくためになっています。



計111ラウンド、大激戦となった国内決勝を振り返る

――見事優勝を果たした国内大会「Game Changers Japan」では、5マップ計111ラウンドにもわたる「REIGNITE Lily」との決勝が非常に印象的でした。試合を振り返っていかがですか?

Curumi:どっちの緊張の糸が先に切れるかみたいな、そんな試合でしたね。

KOHAL:試合中のボイスチャットは、すごくポジティブな雰囲気でした。調子がいいからポジティブだったというより、「調子が悪くてもやりきろう!」という感じで、ずっと大きな声が出ていましたね。



決勝の最終マップを「FENNEL」のチーム内VC付きで振り返る動画

――決勝の試合で、印象的だった出来事やエピソードはありますか?

Len:優勝が決まった最後のラウンドでスパイクを解除していたとき、Curumiがゲーム内で棒立ちになったまま泣いていたのを覚えています。

Curumi:そんなこともあったな(笑)。

KOHAL:実況の方も、ちょっと困惑してましたね。普通だったら、すぐに解除して「優勝だ!」じゃないですか。でも、Curumiがぽかんとしたまま動かないから(笑)。

最後のキルを取ったCurumi選手が立ち尽くし、代わりにLen選手が解除に入ったシーン

――Curumiさんはリーダーとして、チームに対して何か気にかけていたことはありましたか?

Curumi:大会当日は、誰かがミスをしたときに、メンタル的にちゃんと軌道修正できるかどうかを一番気にしていました。メンバーがもしミスを引きずってしまっても、自分はそうならないように、がんばって声かけしようと意識していたんですけど……。もう全然、そんな必要なかったです。みんなすごく元気で、心配無用でした(笑)。

――あれだけのボリュームの試合を戦い続けても、その雰囲気が続くのはすごいですね。

Curumi:たしかに、うちらの持ち味かもしれない。最後まで、雰囲気バツグンでした。

「REIGNITE Lily」と繰り広げた激戦は、およそ6時間にもわたる長丁場となった



女性選手として、競技シーンの道を切り拓いていく存在に

――「Game Changers」は今年から始まった新たな大会ですが、皆さんにとって今後、女性大会の展開や女性選手の活躍が、どうなっていくのが理想だと感じますか?

Curumi:まだ『VALORANT』公式の女性大会は「Game Changers」しかないので、もっと注目してもらうためにも、コミュニティ大会なども含めて、女性選手が活躍できる大会が増えていってほしいですね。すぐには難しいかもしれませんが、女性大会でもリーグが開催されるようになったらいいなと思います。

Len:女性のプレイヤーはいても、プロになろうと思う人が少なかったり、プロになりたくても顔を出すことに抵抗があったりして、今回の「Game Changers」には出なかった人が結構いると思います。もう少し市場が広がって、女性選手を受け入れる体制が整っていけば、もっと出場しやすくなるだろうと感じます。

KOHAL:女性選手は今後もっと増えてくると思っていて、そのためにより受け入れやすい環境をつくっておくのが自分たちの役目だと思っています。その役目を果たしていって、もっと気軽に女性選手が参入してくれるようになったらうれしいですね。

――その役目というのは、例えば女性選手として活躍の前例をつくるといったことでしょうか?

KOHAL:結果を残すこともそうですし、「女性でもここまでいけるんだ」と思わせることも仕事の1つだと思っています。今はまだ、女性だから弱いというイメージを持たれているかもしれませんが、そのイメージを壊していきたいです。

まだ誰も成し遂げていないことは、「自分でもできるかもしれない」って気持ちにならないと思うんですよ。だから、誰かが成し遂げるしかない。それをうちらがやるしかないと思っています。理想としては、自分のことをいつか倒したいとか、乗り越えたいとか、そう思ってもらえる存在になりたいです。

suzu:ドリームになりたいですね。女性でも本気を出せば強いし、選手として食べていけるんだというドリームを感じてほしい。そういう憧れの的になりたいです。



――これから先、女性大会がさらに盛り上がっていくことと、性別に関係ない舞台で戦えるようになっていくこと、どちらが理想的だと思いますか?

Curumi:性別に関係なく、ただ強い人たちが集まったチームとして、「VALORANT Champions」のようなトップの舞台で競い合えるのが、理想だと思います。

ただ、今は女性選手の母数が少なくて、トップまで上りつめることが難しい環境だと思うから、「Game Changers」を開催してもらえたことに、すごく感謝しています。「Game Changers」を目標とする女性選手が増えていけば、そこからVCTにチャレンジしたいと思う女性選手も増えていくだろうし、とても良い環境をつくってもらえたと思います。

KOHAL:気持ちとしては、男女関係ないと思っているんですけど、スポーツで男子と女子で分かれているように、男女では構造が違うじゃないですか。身体だけでなく、たぶん脳も違うと思うんですよ。

だから、女性なら女性ならではの、メタや戦略を見せられると盛り上がりそうですよね。男女それぞれの大会があれば、「男だから、女だから」といろいろな理由が出てくるのを防げるし、観る人も2倍楽しめるのかなと思います。



――このあたりは、考えもさまざまですね。suzuさんは、実際にVCTにも出場されていましたが、それぞれのチームで感じた違いなどはありますか?

suzu:男性と組むチームと、女性だけで組むチームとでは、感覚は全然違います。でも、男性には男性なりの、女性には女性なりの良さがあって、どちらのほうがやりやすいとか、良し悪しはないですね。

男性と組むチームだと、男性が主軸になって引っ張っていこうとする空気がありますが、女性チームでは、自分が引っ張っていこうという考えになって、そういう気持ちの面での違いもあるのでおもしろいなと思います。

1枠の出場権を勝ち取り、世界大会の舞台を目指す

――まもなく「Game Changers East Asia」がスタートします。中国と韓国の出場チームのなかで、意識しているチームはありますか?

KOHAL:スクリムで対戦した中国の「Oxyg3niOus」というチームに、めちゃくちゃ強い選手がいます。大会でのプレイヤー名はわからないですが、チェンバーを使う選手です。

Len:昨日その選手のランクを見たら、アジアサーバーでレディアント110位代にいました。

――その選手は要注意ですね。そのほかに、各チームの特徴などはありますか?

KOHAL:韓国のチームの試合も観ましたが、あまり印象的なところはなかったですね。フィジカル面は、韓国より中国のほうが強いです。韓国のチームは、あまり強みがわからないというか……。

Curumi:特に韓国は、「Game Changers」の開催時期が遅かったし、大会直前に組まれた即席に近いチームが多かった印象です。

KOHAL:うちには、韓国人メンバーのFestivalがいるので。そんな韓国チームには絶対に負けられないですね。

Len:うちのFestivalが一番やからな。



――全体的に、相手チームの事前情報は少ないということでしょうか。

Curumi:そうですね。事前情報は、ほとんどないです。

suzu:なので、自分たちの戦い方をぶつけにいくだけですね。

――世界大会への出場権1枠をかけた戦いになりますが、自信のほどはいかがですか?

Curumi:いけます。自信あります。



――それでは最後に、「Game Changers East Asia」に向けた意気込みと、ファンへのメッセージをお願いします。

Curumi:勝ちます。勝つので、応援してほしいです。女性大会をもっと盛り上げていきたいので、ぜひ大会配信を見てもらえるとうれしいです。よろしくお願いします。

Len:できる限りの努力をして、勝って世界大会まで行きたいと思います。いつも応援してくださって、ありがとうございます。勝って報告するので、楽しみに待っていてください。

KOHAL:がんばります。日本代表チームとして、胸を張って戦いたいと思います。

suzu:一度なくなったと思っていた舞台を、特別に味わわせていただける、このありがたい機会を存分に楽しんでこようと思います。勝ちにいきます。

――「FENNEL」の皆さん、ありがとうございました!

Festival選手から意気込みとメッセージ

Festival:「Game Changers Japan」で優勝したように、「Game Changers East Asia」でも優勝できるようにがんばります!

現在、大会の準備と日本語の勉強を一緒にしているので、より努力してファンの方ともたくさん話したいです。いつも応援してくださって、ありがとうございます! これからもより良いプレイをお見せできるようがんばるので、見守っていただければ幸いです。

初戦は10月13日、韓国「Spear Gaming」と対戦

「Game Changers East Asia」は、10月12日より開幕。日本、中国、韓国から各2チーム、全6チームがオンラインで戦います。

6チームは2グループに振り分けられ、グループ内でシングルラウンドロビン(1回総当たり戦)のグループステージにて対戦。両グループの上位2チームが、シングルエリミネーションのノックアウトステージへ進出します。

そして、優勝した1チームが東アジア代表チームとして、11月にドイツ・ベルリンで開催される世界大会「Game Changers Championship」への出場権を獲得します。

なお、「FENNEL」VALORANT女性部門は、カラコン通販ショップ「HOTEL LOVERS」を運営する株式会社ホテラバがメインスポンサーとなり、ネーミングライツ契約を締結したことを発表しました。これにより「Game Changers East Asia」から、チーム名を「FENNEL HOTELAVA」として出場します。

「FENNEL HOTELAVA」はBグループに振り分けられ、初戦は10月13日木曜日の20時ごろから、韓国チーム「Spear Gaming」との試合が予定されています。大会配信は、「VALORANT JAPAN」のYouTubeとTwitchにて行われます。ぜひ日本代表2チームの活躍を応援しましょう!

■「Game Changers East Asia」出場チーム

日本(2チーム):FENNEL HOTELAVA、Reignite Lily

中国(2チーム):Oxyg3niOus、ShanXi Gaming Girls

韓国(2チーム):Spear Gaming、MBTI

■トーナメントのスケジュール

10月12〜14日:グループステージ

10月15日:ノックアウトステージ

10月16日:ファイナル

「Game Changers East Asia」出場6チーム

グループ分けとステージフォーマット

対戦スケジュール