「センスのいい資料」作りにすぐに応用できる、「配色のコツ」を紹介します(写真:CG-BOX/PIXTA)

どんな仕事でも、資料制作は欠かせない。たとえばパワーポイントで企画書を作成する際、プリセットされているデザインや配色を使えば何とかなるものだが、それだけでは「いまひとつ物足りない」「説得力に乏しい」「オシャレ感がない」と感じるのが、多くの人々の共通認識だろう。

一方で、周囲からつねに一目置かれる「センスのいい資料」を作る人がいる。うらやましい。自分も何とかして、自信を持って配布できる資料を作りたい。そんな悩みを「楽しみながら解決したい」と思う人々に向けて、新刊『毎日楽しい! 色の日めくり配色帖365』から、すぐに応用できる「配色のコツ」をご紹介する。

なぜ「3色配色」が基本となるのか?

色彩学における「配色」の定義とは、「2つ以上の異なる色を組み合わせ、新たな効果を生むこと」だ。このとき、本当に2色しか使わないと、それぞれの色のインパクトが強すぎてまとめるのが難しくなる。

そこで、2つの色の間をとりもつ「第3の色」を使うことで「まとめやすくする」のが、昨今「3色配色」が世の中で大きく注目されている理由だ。

たとえば下に示した配色は、青をベースカラーとして、明るいブルーグレーを合わせたものだが、そこに「普通のグレー」を加えるだけで、濃淡のコントラストが和らぎ、オシャレ度がアップする。


「普通のグレー」が、青と明るいブルーグレーをつないでいる

「今回の資料、どんなふうに作ろうか?」と思いを巡らせるとき、配色の視点で考えるべきことは実にシンプルだ。なぜなら、世の中のすべての配色は「まとまり重視の配色」か「際立ち重視の配色」のどちらかに大別できるからだ。実際に見てみよう。

・まとまり重視の配色(信頼感・安定感などを訴求したいときに効果的)


青系だけで構成した、まとまり感と安定感のある配色

・際立ち重視の配色(躍動感・可能性などを訴求したいときに効果的)


青×黄の反対色を使った、晴れやかでインパクトのある配色

トーンをそろえるとうまくいく

資料にグラフなどを掲載するため、多くの色を使う必要があるときには、使う色のトーン(明るさと鮮やかさ)を統一する。同一トーンの配色は5色・7色……と色を増やしても、驚くほどの統一感が生まれる。また、グラフの場合は色だけで細かな違いを表すのではなく、それぞれの項目の模様や柄を変えることでユニバーサル対応としたい。


近年ファッション分野でも脚光を浴びている「くすみカラー」の同一トーン配色

また、楽しさやワクワク感を訴求するための資料には、鮮やかな色を使うこともあるが、このときにもトーンをそろえておけば、品よくまとめることができる。


明るさと鮮やかさがきっちりそろっているからこそ、うるさくならない


大人の男性にぜひ使ってみてほしい色、バーガンディーとボルドーの配色例

「色の役割」を学ぶのが近道!


使う色のそれぞれに明確な役割のある資料は、説得力があるだけでなく、概してセンスがいい。逆に考えれば、配色センスを磨きたければ、色の役割について学ぶのが近道かつ確実な方法である。

最後に、「配色の役割」に関するさまざまな事例を紹介したい。いずれも今日からすぐに応用の利くものばかりを選んだので、ぜひ試してほしい。

・訴求ポイントを強調したいときに効果的な配色


穏やかで無難なベースカラーに対し、色相と明度のコントラストを利かせた配色

・甘いが甘すぎない、スタイリッシュなピンク系の配色


ベースカラーをごく淡いピンクにすることで、濃い赤紫を嫌味なくなじませた、エモーショナルな配色

・水色に「茶色っぽいグレー」を合わせると、温かでソフトな印象になる

先に「なぜ3色配色が基本となるのか?」で事例に挙げた「普通のグレー」ではなく、茶色っぽいグレーを使った配色は、温もりすら感じさせる有機的なイメージを持つ。Windowsの各種ソフトにおいても標準色として手軽に使える範囲の色なので、ぜひ活用してほしい。


書籍内ではCMYK・RGB・Webカラーによる値を示しているが、ここではWindowsの標準色として応用することを想定

(桜井 輝子 : 東京カラーズ株式会社代表取締役)