HiHi Jetsの作間龍斗が、綿矢りさの同名小説を映画化した『ひらいて』に出演する。

『ひらいて』は、今作でメガホンをとる首藤凜監督が「この映画を撮るために監督になった」というほど感銘を受けた作品。山田杏奈演じる木村愛が恋い焦がれる、賑やかな教室の中で1人透明な膜で覆われたような不思議な男子・西村たとえを静謐かつ堅実に表現する。


「僕が映画ですか」と驚きながらも、見事にたとえを演じきった作間に、今作にかける思いや今後の展望を聞いた。


──ドラマでは主演の経験もありますが、映画は今回初出演です。オファー時の心境はいかがでしたか。


映画のお仕事は初めてだったので、まず自分の中に「映画をやる」ということを取り込むのに時間がかかりましたね。普段は5人で活動していますが、今回は1人。「僕が映画ですか」っていう驚きもあったんですが、いただいた台本をその日のうちに読んでいく内に、ジワジワと「これ(セリフ)を自分が言うんだな」って実感が湧いてきて、うれしい気持ちでいっぱいになりましたね。


──ドラマと映画では演じる感覚も違いますか。


『ひらいて』を撮影したのは、トリプル主演した『DIVE!!』よりも前なんです。ドラマの経験すらほぼないような状況でした。長期間撮影するドラマでは撮影していく内に慣れていくこともできるんですが、短期間で撮り切る映画はあっという間なので、現場に慣れたなという頃にはもう終わっている。本当に一瞬だったなという感覚でしたね。


──役作りでは、どんな準備をされましたか。


半年くらい準備期間があったので、台本を読んで、小説も読みました。小説に描かれているたとえの外見の特徴や設定を頭に入れましたね。撮影前に、首藤監督とお話する機会が何度かあって、その場でたとえをどんな感じで作りたいかということを伝えてくださったので、それに応えられるように自分の中でイメージをしながら準備していきました。


──作品の内容については、どのような感想を持ちましたか?


「うわお」って。「これはすごい作品だな」と思いましたね。当時は高校3年生だったので、リアルに感じられる部分もありつつ、「僕がこの作品に関わっていいんだ」とも思いました。「ジャニーズだよね...?」って(笑)。全体的にドロドロした印象も受けましたし、内容が深い作品に関わらせてもらうことへの責任感も感じました。


──作間さんご自身はどんな高校生だったんですか?


たとえと近いです。必要以上にしゃべらない。でも彼よりは明るい人間なので(笑)、休み時間にたわいのない話をしたりはしました。でも授業中の感じとかは似ていたので、役作りはそこまで意識せず、素のまま演じることができました。


──完成した作品はどうご覧になりましたか?


“違和感”でしたね。自分がスクリーンにいるということが不思議で不思議で仕方なかった。ちょっとゾワゾワしていました。この撮影以降、何作か作品に関わらせていただいたので、「ここはもうちょっとこうしたかった」という気持ちは生まれたんですが、関係者の方々からは「良かったんじゃない」という声をいただいて、「これはこれで良かったのかな」と思えました。


──女性キャストが多く、監督も女性という現場でしたが、居心地の悪さを感じるようなことはありませんでしたか?    

中学生の時は、男子と一緒にいるより女子といた方が楽なタイプだったんですよ。男の親友が1人いたんですが、その子と2人で、クラスの端っこで集まっている女子たちの女子会に混ざっていたんです。その当時が懐かしいような現場でした。


──今作の愛がたとえに惹かれるように、作間さんが強く惹かれているものがあれば教えて下さい。


家電製品ですかね。最近、テレビを買いたいなという気持ちが強くて、色々なメーカーさんのHPを漁って「これとこれはなにが違うんだろう」とか「どれくらい節電できるんだろう」って、詳細のページを開いて細かく数値を見たり、寸法を測ったりするのが好きなんです。カメラも好きで、レンズにもバリエーションがあるので集め始めると止まらないな、となっていますね。暇があったら電気屋さんに行っています。買わなくても「今どんなの入ってるのかな」って。最新技術に興味があるんです。


──最近でオススメの家電はなにかありますか?


お弁当サイズの炊飯器があるんです。今、ちょうど舞台をやっているので、持ち運びが出来て、その場で炊けるっていうのがすごく便利ですね。生活に彩りを与えるというか、温かいご飯をすごく美味しくいただけるんです。


──今作出演に対する、HiHi Jetsメンバーの反応はいかがでしたか?


出演が決まった時、その場にみんないたんですよ。「えっ」「まじで」って喜んでくれました。撮影期間中は地方で泊りがけの撮影だったので、グループのリハーサルに僕1人抜けている状態になっていたことが多かったんです。でもそういう時はリハーサル終わりで電話をかけてくれたり、気遣ってくれていたりしたので、「やっぱりグループっていいな」と改めて思いました。撮影が終わって公開が近づいてくると、宣伝にも協力してくれているんです。発言する機会があれば「作間が映画をやるんだよね」ってフリをくれたりして、ありがたいです。


──今後、出てみたい作品はありますか?今回のテイストとはまた違う“王道恋愛映画”など。


作品上ならいくらキュンキュンしても問題がないだろう、ということで(笑)、最高にキュンキュンするものをやりたいですね。脇役でいいんです。キラキラしてる主人公とヒロインがいて、その親友くらいの感じ。重要なシーンにはいない(笑)。Sexy Zoneの中島健人くんが主演をやっていた『黒崎くんの言いなりになんてならない』に出ていた、King & Princeの岸優太くんがそういう役だったんですが、すっごく岸くんが輝いていて「良い役だなぁ」と思っていたので、あのポジションをやりたいなって、憧れますね。


──作品資料から、首藤監督の作品への愛情と並々ならぬこだわりが伝わってきます。どんな監督でしたか?


17歳の時からこの作品を撮るために映画監督を目指していました、ということなので、相当な熱意があるんだろうなと思っていたんですけど、意外と任せてくれるところが多かったんです。例えば「自分はこれをやりたいからこういう芝居に変えて」というような頑固さはまったくない。本当にその場で生まれたものを大切にしていて、現場で話し合いながら「じゃあこっちの方がいいか」って臨機応変に対応されるような方でした。


──共演の山田杏奈さんはどんな方でしたか?

「強い人だな」と思いましたね。メンバーの井上瑞稀が共演していたので、最初に会った時は「あの女優さんだ!」って感じでした。井上の話を聞いたり、自分も共演することが決まってネットで調べたりしていたので(笑)、「本物だ」って。本人が「仕事に関しては負けず嫌い」っておっしゃっているんですが、たしかに熱い方だなと。でも裏側では優しくてほわーっとしていましたね。言葉でなにかを教わったわけではないですが、カメラ前での立ち振る舞いで、俳優業の一線で活躍されている方の姿を見させていただいて、たくさん刺激を受けました。


──今作を通して、芝居に対する向き合い方に変化はありましたか?


「芝居面白いな」と思ったのは、この作品がきっかけでした。その後、いくつかの作品に関わらさせていただく中で、本当に俳優さんによって、考え方や演じる方法が違うんだなとすごく感じるようになりました。それから、やっぱりジャニーズの先輩方を改めて見ると「アイドルをやりながら俳優をやっているの“ヤバイ”」って思います。木村拓哉さんや二宮和也さんなど、賞を獲るほどにアイドルとは乖離したジャンルを極めているって、アスリートでいうと2種目で金メダルを獲るような、めちゃくちゃ難しいことをやっていたんだなって。


自分はたまに、“新人俳優っぽい顔”しているねって言われるんです。ジャニーズっぽくない顔っちゃ顔なので(笑)、自分が本当に その気になるならやりやすい条件なのかなとは思っているので、やるからには、自分の中で「芝居とはなんなのか」をしっかり解釈して、極めていきたいです。



取材・文:山田健史


『ひらいて』

10月22日(金) 全国ロードショー 

配給:ショウゲート 

ⓒ綿矢りさ・新潮社/「ひらいて」製作委員会