日本だけが遅れを取る「HPVワクチン」とは? 「ホリエモン × 三原じゅん子(厚生労働副大臣)」オンライン対談(前編)

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2020年(令和2年)9月、菅政権の誕生のトピックの一つに、元俳優の三原じゅん子参議院議員が厚生労働副大臣に任命されたことがありました。三原さんは、2008年(平成20年)に子宮頸がんを患い、子宮全摘出術をご経験なさっています。子宮頸がんの原因ウイルスであるヒトパピローマウイルス(HPV)に対するワクチンの重要性を身をもって理解されている方です。そこで今回は、三原じゅん子参議院議員と堀江貴文氏が「HPVワクチンの積極的勧奨について」や「HPVワクチンの重要性」などについて、オンライン対談を実施しました。女性の方はもちろんのこと、男性にとっても有効なHPVワクチンについて、多くの人に正しい情報を知ってもらえれば幸いです。

※この記事は2021年4月26日に実施された対談を収録しています。

実業家
堀江 貴文(ほりえ たかふみ)

1972年福岡県生まれ。実業家。ロケットエンジン開発やスマホアプリ「TERIYAKI」「755」「マンガ新聞」などのプロデュースも手掛ける。2016年、「予防医療普及協会」の発起人となり、現在は同協会の理事として活動。「予防医療オンラインサロン YOBO-LABO」にも深く関わる。同協会監修の著作に、『健康の結論』(KADOKAWA)、『ピロリ菌やばい』(ゴマブックス)、『むだ死にしない技術』(マガジンハウス)など。

厚生労働副大臣 参議院議員 自由民主党神奈川県参議院選挙区第四支部長
三原 じゅん子

東京都板橋区出身。俳優や歌手として芸能界で活躍。その後、平成22年7月第22回参議院議員通常選挙・全国比例区にて初当選。平成28年1月自由民主党神奈川県参議院選挙区第四支部長就任。平成28年7月第24回参議院議員通常選挙・神奈川選挙区にて2期目の当選。平成20年に子宮頸がんを患い、子宮摘出手術を受ける。この自身の闘病経験をきっかけに、医療や介護問題への関心を強めて、がん撲滅等の啓発活動を行うようになる。令和2年9月、厚生労働副大臣(主に労働、子育て、年金分野)に就任。

人の命に優劣はない

三原

堀江さん、よろしくお願いします。

堀江

こちらこそ、よろしくお願いします。現在、新型コロナウイルスの影響によって、とても大変そうですね。

三原

そうですね、国民の皆さんには多くのご迷惑をおかけしております。

堀江

いえいえ、三原さんが一番大変な立場にいらっしゃると思います。厚生労働省はやることが多くて大変でしょう。

三原

そうですね。副大臣は2人で役割を分担しており、大きくは医療系と労働系の2つに分けていますが、コロナ関連のことは共同で行っています。

堀江

個人的には、厚生労働副大臣は2人でも足りないくらいだと思います。

三原

そうですね……。副大臣が大変と言うよりも、職員全員が大変な状況です。特に、ここ1年は新型コロナウイルスの影響によって大変な状況が続いています。

堀江

予防医療普及協会でも、風しんの予防キャンペーンを厚生労働省と一緒におこなっていたのですが、コロナウイルスが流行し始めてからは、なかなかプロジェクトが進まない状況になってしまいました。それぐらい大変な状況なんだと察しています。ですが、風しんの予防も非常に大切ですよね。

三原

おっしゃる通りです。ただ、現在はコロナウイルスのワクチン接種に時間がとられている状況です。

堀江

はい、それが優先ですね。

三原

コロナ関連のことが非常に大切なことであることは事実ですが、その他の病気に関しても同様に、命にかかわる重大なことです。国民の皆様の命に優劣はありませんので、他の病気に関しても気を配る必要があります。

HPVワクチンの積極的勧奨は再開するのか?

堀江

HPVワクチンの積極的勧奨再開に向けて、実際のところ、政府内では良い方向に進んでいるのでしょうか?

三原

ここ数年、HPVに関するエビデンスが一気に集まりました。その事実は、非常に大きな進歩だと私は捉えています。

堀江

現在は、その状況を訂正しづらい雰囲気ではないでしょうか。やはり、国としての意見を変えることは、大変なことなのでしょうか?

三原

現在はエビデンスがたくさん揃っておりますので、そういうことではないと思います。一番大きく影響していることは、国民の皆様が当時のマスコミの報道によって、未だに「恐怖心」を植え付けられていることではないでしょうか。

堀江

なるほど、難しい状況ですね。

三原

そうですね。ただ、厚生労働省でもマスコミの方に対して勉強会を開くなど、様々な対策を行っています。

堀江

そうなんですね。

三原

しかし、立派なエビデンスが世界中から上がってきているにも関わらず、そのような内容の報道をしても興味を持たれないのが事実です。その結果、マスコミの報道も規模が小さくなってしまい、国民の皆様に関心が持たれない……。悪循環が起きている状況です。

堀江

国の立場として、「積極的勧奨の再開」という段階にまでは到達していないのでしょうか。

三原

はい、現状はそこまで到達しておりません。

堀江

再開まで到達するような「プロセス」は、見えているのでしょうか?

三原

前向きに頑張っています……。というところでしょうか。

堀江

なるほど(笑)。 何が大きなハードルとなっているのでしょうか?

三原

国民の理解を得ることが、一番のハードルだと私は思っています。逆に言うと、そのハードルをクリアできれば、大きく前進すると思います。

堀江

どのように「理解を得た」を測るのでしょうか。世論調査のようなものですか?

三原

そういうことではありません。大臣や官邸が再開する方向に舵を取れば、状況は大きく変わるでしょう。

堀江

三原さんは「推進派」だと思いますが、政府内にも「反対派」が根強く残っている状況なのでしょうか?

三原

現在は、そうではないと私は感じています。このようなことは感情論ではなく、科学的な正しい知見が必要です。

HPVワクチンの重要性

堀江

現状を整理すると、まず最初のステップとして、現在止まっている積極的な勧奨を再開することが大切ですね。もう一つは、男性のHPVワクチン接種も重要ではないしょうか。

三原

おっしゃる通りです。

堀江

私は自費でHPVワクチンを打ちましたが、経済的な負担が大きいことは課題だと思います。

三原

そうですね、経済的な負担は大きいです。病気や命に関わることに、経済的な格差が関係することは、不平等だと私は思います。男性も定期接種ができるような環境が望ましいです。

堀江

もし男性も接種することになると、予算の問題が出てくるでしょう。私は、予防医療関連や宇宙事業関連で、最近は役人の方と会う機会が多く、その際によく聞くのが「財務省が何と言うかな……」というセリフです。

三原

そうですね……。

堀江

そのことから、私は財務省への「説得内容」をまとめることが重要だと認識しています。例えば、男性の中咽頭がんがもたらす経済的な損失は、非常に大きいです。現代において、多くのがんの治療は薬の種類も増え随分と改善してきており、治癒率も高くなってきています。一方で治療費も高い。要するに、高額医療費を使わなくても済むように、それ以前に病気を予防することが大切です。

三原

その通りだと、私も考えています。

堀江

オーストラリアでは、「2040年までにHPVを撲滅できる」と言っているほどです。コロナウイルスのように飛沫感染するものでなく、性行為等でしか感染しないものだと思うので、ある意味「感染力」は強くないはずです。将来的には、撲滅することも可能だと言えるでしょう。

三原

そうですね。財務省も本当に厳しい部分はありますが、費用対効果があることを正しく証明できれば、動いてくれる可能性も十分にあります。また、毎年約1万人の女性が罹患し、約3000人の方が亡くなられています。これは相当な人数ではないでしょうか。

堀江

はい、その通りだと思います。

三原

亡くなる方だけではなく、子宮の摘出数を見ると、その人数は更に膨れ上がります。そのような状況において「がんを防げるワクチン」だと考えると、HPVワクチンに対する重要性の理解が増すのではないでしょうか。

堀江

そうですね、特にがんサバイバーの三原さんからすると、本当に大切なことだと思います。私は経験した立場ではないので軽々しい事は言えませんが、がんが治ったからいいものの、治るまでの恐怖や経済的な損失等を含めて考えると、やはりワクチンの重要性が高まるのではないでしょうか。

三原

はい、おっしゃる通りです。

堀江

ワクチン反対派の人たちの言い分は、「定期的な健康診断で予防できる」ということです。しかし、「子宮頸がんになってしまった」という人の話をよく聞くと、実は子宮頸がんの前がん病変である「異形成」であることが多いです。異形性にも軽度から高度までレベルがあり、その段階によって対応が異なります。そして、その後に子宮頸がんになることは、おそらく医師の方がしっかり説明していると思いますが、患者さんには正しい知識が伝わりにくいのだと思います。

三原

そうですね。高度異形成になって「円錐切除をします」と言われると、それは「がんなんだ」と捉えてしまっても仕方ありません。「円錐切除でとるのは子宮のほんの一部ですよ」と言われたとしても、その後に流産する可能性が高くなるなど、様々な問題が生まれます。

堀江

そうですね。

三原

私自身も「子供が産めなくなる」ということで、精神的に辛い思いをしました。そういう意味でも、私のような辛い思いをする女性たちを生み出すような環境にはしたくないと思っています。

堀江

私の友人も、精神的な苦痛を訴えていました。

三原

人間誰しも、性交渉をすれば感染する可能性があります。良い例えなのか分かりませんが、風邪をひくのと同じように、国民の皆さんに関わることなのです。

堀江

そうですね。今回のような話を聞いた後、私はすぐにワクチンを打ちました。

三原

より多くの人が、ワクチンを接種できる環境にすることが大切ですね。

編集後記

現状の日本において、まずは子宮頸がんの原因ウイルスであるヒトパピローマウイルス(HPV)に対する正確な情報を、より多くの人々が理解する必要があります。女性だけではなく男性にも関わること、ワクチンの接種で予防ができることなど、HPVについて「知ること」がとても大切です。

新型コロナウイルスの話題に偏りがちな現在であっても、コロナ関連以外の疾患にも関心や興味を持つことが重要です。そして、より正しい情報を掴むことが、自分自身の身を守ることにつながり、大切な人の命を守ることにもつながるのです。

(後編へ続く)

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