獣医の必死の看病で元気を取り戻した犬(画像は『Bunny 2020年7月4日付Instagram「FINAL CONTINUED from 3 posts back.」』のスクリーンショット)

写真拡大

重度の破傷風で飼い主に見放された犬をどうしても諦めることができなかった獣医は、夜もほとんど寝ずに看病を続けた。そして3週間後、身体が硬直し頭を上げることすらできなかった犬に奇跡が起こった。諦めずにケアを続けた獣医と、果敢に病気と闘った犬の希望溢れるニュースを『The Dodo』などが伝えている。

【この記事の動画を見る】

米フロリダ州マナティー郡ブレーデントンの獣医アリー・トンプソンさん(Ali Thompson)のクリニックに4月15日、生後13週のメスのピットブルがやってきた。口を閉じ、瞼をひきつらせ、身体が麻痺してまるで板のように硬直したその犬を一目見て、アリーさんは破傷風に感染していると直感した。

破傷風は散歩中の怪我や手術、火傷などの傷口から破傷風菌が入り込むことによって感染し、四肢の強直やけいれんが起こる。犬の感染は稀だが、感染した場合の生存率は30〜50%と言われ、重症化すると呼吸困難に陥り死に至る。搬送されてきたピットブルはかなりの重症で、アリーさんが電話で飼い主にその旨を伝えると「高額な治療費を払うことができない。安楽死させてくれ」と返事があった。

アリーさんは「お願いだから、助けてあげて!」と心の中で叫びながらも、飼い主の決断が覆らないであろうことは分かっていた。そして恐怖と混乱で悲しい目をしたその犬を“バニー(Bunny)”と名付け、「自分が獣医になったのは、動物の命を救うため。私がこの犬の面倒を見る」と覚悟を決めた。アリーさんは飼い主に「治療を続けること、助からないかもしれないこと、助かった場合でも所有権は放棄してもらうこと」などの承諾をもらい、バニーの治療を開始した。

しかしバニーの治療は過酷を極めた。アリーさんはバニーが音や光に敏感に反応して筋硬直が悪化するのを防ぐため、アイマスクをつけて自宅の暗い静かな場所に移した。最初の夜はほどんど眠らず、身体の痙攣が止まらないバニーをモニターし、栄養剤をシリンジで与え、喉の渇きを防ぐため点滴をした。

アリーさんによると、バニーのように症状が深刻な場合は医師と看護師数人がチームを組み24時間体制で治療を行うのが普通で、アメリカでは治療費が約100〜150万円にもなるという。バニーの痙攣は10日間も続き、アリーさんは時間があればバニーの硬直した身体を伸ばしてマッサージをした。また下痢と便秘を繰り返すバニーの身体をキレイに拭いてやるなど、できる限りのことをした。

日中は仕事し、夜はバニーのケアに追われたアリーさんは当時のことをこう振り返る。

「バニーは獣医である私でも見ているのがつらいケースでした。何度も涙を流してはぬぐい、治療を初めて5日目には『助けるという決断は間違っていたのだろうか』と思ったほどです。精神的、肉体的にも疲れ切った私を支えてくれたのは夫マットであり、決して諦めなかったバニーでした。」

「治療を初めて7〜10日後、バニーにわずかながら回復の兆しが見られることに気付きました。私はバニーの頑張りに自分を奮い立たせ、それを励みに希望を見出しました。そうしているうちにバニーは、私がそばに行くと寝ながらですが尻尾を振るようになったのです。」

「こうして治療から18日目、私は硬直したバニーを両手で抱えて立たせてみました。でも立つことはできず、バニーはそのまま後ろに倒れ込んでしまいました。その2日後のこと、私が昼食のために自宅に戻ると、バニーは尻尾を振って興奮し、自ら身体を起こして立ちあがったのです。『この子はなんて強いの!』と私まで興奮しました。」

バニーに奇跡が起こったのは、治療を開始してから3週間経った5月6日のことだった。仕事から戻ったアリーさんが車から降りると、外の芝生にマットさんと一緒に横たわっていたバニーが立ち上がり、アリーさんに向かって歩いてきたのだった。アリーさんは誇りに満ちた顔で一歩一歩ゆっくりと前に進んでくるバニーを見て涙を流し、ギュッと抱きしめてキスをした。

バニーはその後も順調に回復を続け、アリーさんはバニーをペットとして引き取ることにした。

「最初は引き取るつもりはなかったのですが、バニーはもう家族同然です。いつも私の後をついてくるんですよ。私にとっては特別な存在なのです。それにとてもハッピーで、多くの人々に喜びを与えてくれるのです」とアリーさんは明かす。Instagramにはバニーの回復までの様子を投稿しており、今年7月に『The Dodo』『Animal Channel』などが伝えて拡散した。

最近のInstagramではバニーが元気にフロリダの海を走り回る様子などが投稿されており、そこには「破傷風サバイバーである勇敢な闘士」として、アリーさんがこんなメッセージを残している。

「病気の犬にどんなに愛情を注いでケアしてもダメな時もあります。でもバニーは生き抜き、私たちに『どんなにつらくても決して諦めてはいけない』ということを教えてくれたのです。だから多くの人に、闘い抜いたバニーについて知ってもらいたいと思います。そしてバニーのように強く勇敢に生きて欲しいのです。」

フォロワーからは「バニーが生き抜いたのは、あなたの愛情があったからこそ。これこそ無償の愛。諦めないでいてくれてありがとう」「バニーはあなたの愛に応えてくれたのよ。涙が出て止まらなかった」といった温かいメッセージが多数寄せられている。

画像は『Bunny 2020年7月4日付Instagram「FINAL CONTINUED from 3 posts back.」「2 aLL my friendZ!」、2020年6月9日付Instagram「wUt do mEaN it’s only tUesDay」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 A.C.)