なぜ偏差値30台がケンブリッジ大学院へ?
■挫折の果ての、超実践的な本の活用法
勉強はやらない、本なんて読まない――。全く“すぐやらない人”だった著者の塚本亮氏は、小・中学校の偏差値が30台。高校では大喧嘩をして新聞沙汰になった。
事件後、仲間だと思っていた同級生は「俺は無関係」という態度を見せた。その豹変ぶりに著者は打ちひしがれた。
「結局、謹慎処分を食らい、許可されたのは親同伴で行く本屋ぐらいでした。ビジネス書のコーナーへ自然と足が向いたのは、会社経営をしていた厳しい父へのライバル心からです」
書棚から手に取ったのは『7つの習慣』。だが、全く頭に入らない。つっかえながらどうにか読み進めると、自身の不甲斐なさが炙り出された。人生をやり直そうという思いがじわりと込み上げた。そこからの軌道修正は尋常ならざるものだ。猛勉強の末、同志社大学からケンブリッジ大学大学院へ。まさに怒涛の展開だ。
「ケンブリッジでは圧倒的な読書量を課されます。英語を母国語とする同級生でさえ、一字一句追っていたら付いていけない。こっちは言語のハンディがあるので頭がパンク寸前です。そこで、読書法をブレークスルーするしかなかったのです」
そこで編み出したのが「スキャニング」という読書術。まず目次に目を通し、求める答えがありそうな箇所を特定し重点的に読むテクニックだ。
塚本流の読書が独特なのは「本を読みきらなきゃという意識を捨てる」点だ。読みづらい本は時間の無駄、無理に読まなくていいと言い切る。
著者は自身の苦い体験から「本が好きで本屋に行ったり本を買うんだけれども、読むのが苦手で、つい“積ん読”になる人たちにもぜひ読んでもらいたい」と、執筆の動機を語る。
本文中「本を活用してほしい」との表現が随所に登場する。「すぐやる人は本を汚し、やれない人は本がキレイ」とけしかけ、気になることがあれば読むのを止め、どんどん本に書き込むべしと勧める。
また著者は、本をジーンズに喩える。「ジーンズって使うほど味が出て体に馴染むでしょ。本も使うほど味わい深くなります」。思いついたことを書き込んで「自分の本」に成長させてほしいと訴える。
「ただし『この本良かったね』で終わるのはナシ。読書でインプットした情報は、具体的なアクションとしてアウトプットしないと意味がない」
挫折と苦難の経験から生み出した読書術は、偶然にも陽明学の「知行合一」の教えに辿り着く。ビジネスマンだけでなく、子どもたちにも勧めたい一冊だ。
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偏差値30台から同志社大学経済学部に現役合格。ケンブリッジ大学大学院で心理学を学んだ後、グローバルリーダーの育成に携わる。
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(フリーランスライター 篠原 克周 撮影=石橋素幸)