オシムには小国の気質がふんだんにあった。同じボスニア&ヘルツェゴビナ出身のハリルホジッチはどうなのか。オシムほどのアイディアマンではなさそうだ。そのあたりの冴えを見せた試しは少ない。

 2018年ロシアW杯アジア最終予選もあと2試合。日本に欲しいのは、小国の気質だ。大国の気質ではない。そこでオーストラリア、サウジアラビアの後塵を拝し、最悪、プレイオフに回れば、なおさら不可欠になる。

 力に大きな差がない両チームが対峙したとき、勝ちやすいのは挑戦者だ。受けて立つ側ではない。そして、どちらに立つかは監督の演出に委ねられている。

 日本は、アメリカ的か、ロシア的かと言えば、ロシア的だと思う。番狂わせに適した気質とは言い難い。これまでどれほど番狂わせを起こしたことがあるか。格上に対してまさかの勝利を収めたことがあるか。格上を倒す方法論を知っている監督か否か。日本代表監督を選考する上で、ここが一番のチェックポイントになる。

 ポルトガル、メキシコ、チリ。コンフェデレーションズ杯を賑わした3チームも、大国気質、小国気質、どちらなのかと言えば、後者に見える。そして、一見そうは見えないドイツも、この大会では意図的にそっち側につこうとしていた。ユーロ2016に出場した23人の中から、今回選んだのはわずか8人。15人を入れ替え、チャレンジャーに扮して臨んだ。メンバーを落とすことで得られる効果に期待したわけだ。

 アジアのどんな相手にも、ベストメンバーで戦ってしまう日本代表監督では、強者相手に番狂わせを演じることは難しい。

 晴れて本大会出場を決めたら、その時は別の監督で。そう言いたくなる理由である。