21世紀枠候補校の紹介は今回がラスト。九州地区の八重山。離島のハンディを乗り越えた同校の戦いぶり、学校の活動を振り返ります。

学校紹介八重山高等学校野球部

 八重山高校は沖縄本島から南西に400km離れた八重山諸島の中にある石垣島唯一の普通高校である。7年前までは那覇―石垣間を貨客船が往来していたが、近年では移動手段は航空機のみである。そのため、各県大会参加には航空機が使用され、保護者の費用負担の額が多く、今年1年間(春・夏・秋・新人・一年生大会)に参加するためだけに、一人あたり約30万円の派遣費用を要した。

 雨による順延や台風時は試合3日前の移動により宿泊費がかかり、それを補うために部員は、年末年始の10日間ほどは部活動を停止し、本校OBの計らいにより、市内のガソリンスタンド、ホームセンター等でアルバイトに取り組み、保護者の負担を減らそうと努力している。

 また校舎改築のため、平成25年7月〜平成27年3月まで1年半にわたってグラウンド中央に仮設校舎が建てられたため、打撃練習や実戦練習ができず、また市内の野球場も野球が盛んな地域であるため週末は一般使用で借用ができず、校内での基礎練習がメインとなった。校舎改築後もサッカー部やテニス部などの他の部活動と共用で使用しているため、充分な打撃練習や実戦練習ができない状況である。

 郡内唯一の普通校であり、部活動時間にも制限があり、平日は19時30分(11月〜2月は19時)完全下校、「文武両道」を実践し、また生徒会活動においては生徒会長を4年連続野球部から輩出し、学校行事でも野球部が中心となって活動し、他の生徒の模範となっている。部活動以外にも台風時の地域清掃、老人会主催イベントのボランティア活動にも積極的に参加して地域からの信頼も厚い。

 部員のほとんどが八重山地区の中学校出身者であり、地元地域の生徒のみで毎年チームを構成して平成22〜27年の間に選手権沖縄大会で8強2回、4強2回と力をつけてきて、県内でも常に上位を伺う存在となってはいるが、甲子園出場はまだ果たせていない。八重山高校野球部は地域に密着しており、練習の際には地域の方々から激励の声をかけられる、まさに「おらが町の野球部」そのものである。離島のハンディを乗り越え、チームのモットーである「学校の規則を守り、地域に愛されながら勝てる野球」に近づいていると確信し、沖縄県の推薦校に決まった。

地区選考状況

 21世紀枠の推薦条件等を確認した後、九州地区8県のすべての推薦校について各県の理事長がプレゼンテーションを行った。その後各校の推薦理由や推薦項目を精査し、小倉、臼杵、八重山の3校に絞った。その3校を再び精査し、小倉は困難条件の克服等に於いて他の2校に比べて多少の見劣りがあるとの結論に達し、臼杵と八重山の2校に絞られた。

 さらに細かく精査するも甲乙つけがたく、もう一度言い直したことも含めて3分程度の最終プレゼンテーションを行った。その内容も甲乙つけがたいものであったが、グラウンドをはじめとした困難さや、甲子園に一度も出場した事のない点などを考慮して八重山に決定した。

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