【第88回選抜大会】21世紀枠 各地区候補 紹介!釜石(岩手)

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 12月11日、21世紀枠推薦校9校が発表された。ドットコムでは9校の推薦理由・選考状況を紹介!第2回は秋季岩手県大会準優勝を決めた釜石。学校紹介と推薦理由を紹介します。

学校紹介・推薦理由

釜石が選ばれた理由とは?

 岩手県沿岸部拠点の進学校。「文札一如」の教育理念のもと、礼節を重んじ文武両道に励む学校の姿勢は「沿岸の雄」と称され、優秀な人材を数多く輩出してきた。普通科と理数科の2学科が設置されており、他の理数科設置校3校(盛岡一高校、水沢高校、一関一高校)とともに岩手県の理数教育を牽引してきた存在である。

 また、平成24年には文部科学省よりSSH(スーパーサイエンスハイスクール)の指定を受け、被災地域の復興と持続的発展に寄与する人材育成をめざし、大学や岩手県科学ILC(国際リニアライダー)推進室などと連携し、独自のカリキュラムで特色ある教育活動を行っている。

 野球部員も学業やSSH事業に係る研究活動と部活動とを両立させるため、寸暇を惜しんで学業に励んでいる。練習においても平日2時間半に満たない限られた練習時間で成果を上げるべく、野球ノートを活用し、目標や課題を明確化させ、高い目的意識と集中力で練習に励んでいる。

 東日本大震災による傷跡は今なお深い。釜石高校がある釜石市は、岩手県沿岸部に位置し、東日本大震災では死者991名、行方不明者152名、住居の全壊半壊合わせて3656件に及ぶ甚大な被害を受けた。釜石高校でも家族を亡くした生徒、住居が全半壊した生徒など、被災した生徒数は全校生徒の三分の一を超える。

 野球部員の家庭での被害も大きく、被災生徒のほとんどが現在も仮設住宅での生活を余儀なくされている。野球部の練習場所は震災前後で変化はないものの、震災以前に他の部活動が使用していたサッカー場やラグビー場に仮設住宅が建設され、各部が活動場所を失い、現在は野球部も含め6つの運動部が1つのグラウンドを共有しながら活動している。

 震災以降、生徒たちは全国から様々な形の支援を受け、当たり前の日常にも誰かの支えがあることを実感している。当たり前の日常の裏にある多くの方々からの支えに感謝するとともに、自らも誰かの支えになろうという想いを抱き、自主的な校内の清掃や近隣地域および試合会場周辺での清掃活動を行う姿勢は他の生徒の模範となっている。

 野球部の活動では、毎日の練習を「練習」と表現せず、その活動の全てを「試合」と呼ぶことで、1球を大切にした緊張感のある練習に励んでいる。練習内容は監督が提示する必修練習である「ノルマ」と、数種類のチーム課題から選手たちで相談し選択する練習である「メニュー」により構成される。メニューを選手自ら選択することで活動に主体性が生まれ、より実践的な活動を実施している。

 練習の最後には今日一日自らに課した課題を克服し、練習をやり遂げたことを互いに称えるべく、全員で声高らかに校歌を歌いあげ、練習を締めくくることが日課になっている。

 限られた時間、環境の中で、学業と部活動を両立しながらその双方にひたむきに立ち向かう姿や、東日本大震災による困難条件を克服し、秋季岩手県大会準優勝を果たしたその雄姿は、沿岸部の他校野球部に勇気を与えるとともに、釜石市のみならず岩手県被災地域の希望の光となった。

地区選考状況

 東北地区臨時役員会の中で21世紀枠東北地区推薦校の選考会議を開催した。豊島 隆幸東北地区高野連会長をオブザーバーに会議を始め、各県推薦校のプレゼンテーションを行った。第一次選考として各県理事長に意見を求め、多数意見が出たが、東北大会出場、そして震災からの復興をいまだに頑張っている学校を3校選出。

 そして第二次選考で、被災地域の野球部である、地域としても復興の希望の光となっている釜石高校を全員一致で推薦することになった。

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