妻の不倫急増の背景に、「リーマン・ショックとダルビッシュ有」あり

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■「カレ」の話題で盛り上がるママ会

以前、娘が通っていた保育園のママ友(32歳)に久しぶりに会うと、こう教えてくれた。

「最近のA保育園のママ友の会話はもっぱら“カレ”に関することなんだよ!」

なんでも仲良しのママグループのうち数人が不倫をしていて、集まるとその話題で持ちきりだという。0歳児クラスで一緒だった時は、子育ての悩みが話題の中心だったのに……。転園してから4年。子供たちは4歳になり、ママたちもみんな子育てにも余裕が出てきたということか。

最近、既婚女性の不倫が増えているのを感じる。

同じ30代の友人たちに聞くと、「私の周りにもママで不倫している人いるよ」と口を揃える。女性の不倫自体は、昔からあっただろう。しかし、それはあくまでも秘め事として扱われ、本人にも周囲にもタブー視する空気があった。

少なくとも保育園という公的な場所で出会ったママ友と、ランチを食べながら盛り上がる話題ではなかったはずだ。不倫を扱ったドラマ『昼顔〜午後3時の恋人たち〜』が人気を呼んだのは記憶に新しいが、いまではすっかり不倫が定着したと感じるのは気のせいか?

前出のママ友によれば、契約社員のSママ(33歳)は育児に非協力的な夫の愚痴を聞いてくれていた会社の同僚と不倫関係になり、いまでは本気で離婚を考えているのだとか。

営業職のYママ(35歳)は取引先の担当者と恋愛関係になり、自由に使える昼の時間に軽いデートを楽しんだり、夜も月に2回程、「接待」や「勉強会」と夫に説明して逢瀬を重ねている。

■「妻が不倫している」という夫の相談が急増

実際に既婚女性の不倫が増えているのか、専門家に聞いてみた。24年間にわたり離婚カウンセリングを行い、これまでに2万8000件以上の夫婦問題を扱ってきた岡野あつこさん(http://azco.co.jp/)は開口一番、「明らかに増えています」と断言した。

「5、6年くらい前から、『妻が不倫して、離婚したいと言われた』という夫側からの相談が急激に増えています。以前は夫からの相談は全体の1割くらいでしたが、いまでは4割に上ります」

ママ友の「妻不倫」増加は本当だったのだ。5、6年前にいったい何があったというのだろう。

この頃を振り返ると、2008年9月にリーマン・ショックがあった。岡野さんは「家計が悪化して夫婦間のストレスが高まったり、女性が働きに出たりして、出会いの機会が増えたことがきっかけではないか」と分析する。

さらに、フェイスブックなどのSNSが急速に普及して、その気になれば、すぐに異性に連絡が取れるようになった。そのため、外で働いていない専業主婦の間でも不倫は増えているという。

そういえば専業主婦の友人M(31歳)は、同窓会で元カレに再会し、やけぼっくいに火がついてしまった。最終的には元カレに「もう会わないほうがいい」とフラれてしまった彼女だが、子供が学校に行っている時間などは彼のことばかり考えてしまって、ずいぶん切ない思いをしたようだ。時間があるぶん、専業主婦の方が不倫の恋にはまってしまうケースが多いように感じる。

■妻は不倫しても何も損しない

「私が相談を受けたケースでは、浮気をして離婚をしたいと妻が言い出した場合、ほとんど夫のところには戻ってきません」と岡野さん。しかし、働いている女性ならまだしも、専業主婦の場合、経済的な理由で離婚を思いとどまったりしないものだろうか?

「相手に経済力があれば問題はないし、妻の不倫が原因の離婚でも、子供の養育費はしっかり請求できます。いまは年金も婚姻期間中に築いた財産もきっちり等分してもらえるなど、妻の権利は守られています。慰謝料を請求されたとしてもたかが知れているので、愛が冷めてしまった夫と我慢して一緒にいようとは考えないのです」

離婚時に夫の厚生年金記録を妻にも分割できる制度が施行されたのは、リーマン・ショックの前年の2007年のこと。妻の老後の経済不安がなくなり“熟年離婚”が増えると中高年男性が戦々恐々としていた制度だが、その影響はもう少し若い世代にも及んでいるようだ。

さらに、不倫がタブーではなくなったことが女性たちの背中を押している。岡野さんは語る。

「先日、メジャーリーグのダルビッシュ有投手との熱愛宣言をした山本聖子さん(元レスリング日本代表)は不倫していたのではないかと噂されています(離婚直後に熱愛宣言)。そのことで彼女は多少の批判を受けましたが、幸せに輝いています。この事例だけでなく有名人の不倫ニュースは花盛りで、不倫ドラマに共感する人が多い今、昔のように後ろ指さされることもありません。むしろ、女性として魅力がある証拠と思われるくらいで、あまりマイナスにはならないのです」

気になるのは子供のことだが、実際の例では妻の不倫が原因で離婚しても、育児放棄をしていない限り、親権は母親に認められることが多いという。財産も子供も失うことなく、社会的制裁も受けないとなれば、いま、女性にとって不倫をすることのハードルは限りなく低くなっているのだ。

友人たちを見ていると、いまのママたちは本当にキレイだと思う。

美魔女までいかなくても、無防備に“おばちゃん”になる人は少数派だ。考えてみれば、彼女たちは若い頃にファッション誌を読んで、おしゃれや美容に関する知識を身に付け、モテ力を磨いてきた。変わらぬ美しさを保つ彼女たちが、誘惑の多い現代において恋愛だけ引退するというのは難しい話なのかもしれない。

かく言う筆者は不倫経験はないのだが、素敵だなと思う男性に出会うと、たまに脳内不倫をしてしまう。そんな時、歯止めになるのが、40を目前にすっかり崩れたボディ……。

無防備におばちゃんになった私には、もう旦那さんくらいしかもらい手はいないと思うから、不倫を考えないだけなのだ。憎っくき贅肉が不倫の抑止力になっている。

つまり、逆に言えば、結婚してもスリム体型を維持しおばちゃん化を抗っている女性たちは、無意識的にいつでも不倫を楽しめるよう万全の準備をしているといえるのかもしれない。

(プレジデント探検隊女子部員=文)