平成世代は知らない「とんねるず」の凄さ バラエティの地位を向上させた彼らの姿勢とは?

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お笑い界の「ビッグ3」といわれるビートたけし・タモリ・明石家さんまを始め、芸能界には"大御所"と呼ばれるお笑い芸人は複数存在しているが、「とんねるず」ほど世代間でその人気や思い入れに差が出る大御所はいないだろう。

とんねるずに関してネット上のアンチユーザーがよく書き込むことは、「面白くない」「実力がない」という意見だ。お笑い芸人の根本ともいえるこれらの資質の欠如を指摘している意見だが、自らのことを語ることがない性格の木梨はさておき、石橋はこの点について認めているところがある。

過去に石橋は、ピンでSMAPの中居正広とともに司会を務めていた歌番組『うたばん』の中で、「自分たちが売れたのは、実力と運でいえば、9割は運だ」「おれらより実力があるコンビはたくさんいた」と語っており、ゲスト出演したラジオ番組や雑誌のインタビューでは、木梨と自身を比べて、「タレントとしての実力は憲武のほうが圧倒的に上」と断言している。世間が持ってしまいがちなイメージとは異なり、とんねるずは自らの実力については至って謙虚なのだ。

しかし彼らは、「面白い」に特化するのではなく、「他のどの芸人もマネできない」ことを冠のバラエティー番組の中で展開していき、その点でナンバーワンに上り詰めたのである。その"マネできないこと"というのは、「群れない」、そして「自分たちだけでやる」という点だ。

普通、人気バラエティー番組には、主役である芸人以外にも多くの芸人が出演しているもの。とんねるずの同世代でライバルのダウンタウンが出演してきたこれまでの冠番組でも、彼ら意外に今田耕司、東野幸治、板尾創路、ホンコン、ココリコ、月亭方正(山崎邦正)といった実力派芸人や"いじられ役"の芸人が脇を固めてきた。現在、バラエティー界の最前線といわれる『めちゃイケ』、『ロンドンハーツ』、『アメトーク』といった番組でも、芸人は複数出演するのが基本だ。

対して、とんねるずの場合、彼らの全盛期を作り上げた『みなさん』、『ねるとん紅鯨団』(以下、『ねるとん』)、『とんねるずの生でダラダラいかせて!!』(以下、『生ダラ』)といった代表番組において、お笑い芸人はほぼ彼ら2人だけという状況で番組を成立させてきたのである。そして、彼らの相手となったのは、『みなさん』ではチェッカーズや小泉今日子といったアイドル・歌手、『ねるとん』では素人出演者、『生ダラ』では定岡正二や錦野旦といった元スポーツ選手やバラエティー経験の少ない往年のベテランタレントなどであった。

とんねるずは、このような"お笑い外"の人たちを文字通り「いじり倒す」ことで彼らの面白さを引き出し、バラエティーの世界の中で活かしたのである。その結果、テレビの世界におけるバラエティー番組の立ち位置は大きく向上したといえるだろう。スポーツスターや人気絶頂のアイドルでもバラエティー番組に出演するという土壌、そして現在の環境は、彼らの番組の中で作り上げられ成立したのである。

そして、バラエティーの中で彼らの相手となったもうひとつの大きな対象が、"スタッフ"だ。とんねるずは、彼らが人気爆発するきっかけとなった『夕焼けニャンニャン』に出演していた1985年頃から現在に至るまで一貫して、裏方であるスタッフを「いじり」続けている。

『みなさん』を中心としたフジテレビの番組の中でその傾向は特に顕著で、秋元康をはじめ、「ダーイシ」・「港っち」・「ボブ」といった番組関係者やマネージャーの愛称は、ファンならずとも、とんねるず世代であれば知っている人は少なくない。最近でも、「いっぺい」や「マッコイ」など、番組スタッフを定期的にいじり、カメラの前に登場させている。スタッフたちはコントや大きな企画に登場することも度々。このような"スタッフいじり"の姿勢は、ナインティナインなどの後輩芸人たちに脈々と受け継がれている。

お笑い外のタレント、スタッフ、素人。このような人たちを有効活用することで、自分たちが中心の世界観を作り上げてきたとんねるず。その世界観は広く受け入れられ、『みなさん』は、1989年には最高視聴率29.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)というバラエティーとしては驚異的な数字を叩き出した。

「自分たちだけでやる」という他の芸人がマネできない姿勢を持ち、結果を数字に残す。そして、続くバラエティー番組の地位を向上させ、影響を与えてきた。これがバラエティー番組におけるとんねるずの"凄さ"であり、色褪せない功績だ。

【参照リンク】
・とんねるず 公式サイト