中国では2008年に発生した「有毒物質メラミン混入」などの事件で国産粉ミルクへの信頼が失墜し、同年に14万トンだった輸入量が2011年には約65万トンになった。しかし、輸入粉ミルクにも「カラクリ」があり、一概に安心とは言えないという。中国新聞社などが報じた。

 輸入品粉ミルクの価格は2012年12月21日時点で、1キログラム当たり200.71元(約3300円)で、国産品の同153.79元よりもかなり割高だ。

 しかし、08年に14万トンだった粉ミルクの輸入は、09年には31万トン、10年は48万トン、11年は65万トンと激増し、現在は粉ミルク販売量の60%以上を輸入品が占めるという。

 中国人消費者が国産粉ミルクに不安を感じるようになった原因は、08年の「有毒物質メラミン混入事件」だけではない。環境汚染が深刻な中国国内で飼育された牛の乳には「何が入っているか分ったものではない」との認識が広まったためとされる。さらに、多くの場合には乳児に摂らせる商品であることから「わが子のため」と、高価な輸入品を求める消費者が急増したと考えられる。

 ところが、中国中央電視台(中国中央テレビ、CCTV)が2013年5月14日、「驚くべき事実」を報じた。中国で販売されていた「ニュージーランド産粉ミルク」をニュージーランド国内で調べたところ、現地住人はだれも、そのブランドを知らなかった。同粉ミルクに表示されていた住所にもとづき、オークランド市にある同ブランドの総代理店を訪ねたところ、乳業会社ではなく、自動車修理工場だった。

 その後の調べで、同粉ミルクの商標は中国国内の乳業会社のもので、ニュージーランドの乳業メーカーに製造を委託したものと分った。ブランドを保有している中国の乳業会社の関係者も「これは国産ブランド」と説明した。

 他にも同様のケースは多く、中国国内で消費者が「輸入粉ミルク」と考えている製品の8割程度は、実際には中国企業が関係している製品という。生産国はニュージーランドやオーストラリアだが、生産国で売られている粉ミルクよりも質の悪いものが多く、輸入時の品質検査に合格せずに処分されることもあるという。

 “輸入粉ミルク”は2008年以降、値上げを繰り返してきた。08−10年は年に2−4回、10年以降は年に1回程度の頻度で、そのたびに価格は10%−15%上昇した。値上げの“真の理由”は、「高い製品なら安心だ」という消費者心理を利用したもので製品の品質を反映したものとは言えず、言葉を変えて言えば、「高いから安心とはかぎらない」という。

 また、各種の栄養成分を添加したことを謳う製品も増えた。高級品とのイメージを強調でき、価格設定の面で有利になるからだ。しかし、「栄養成分の配合の比率が適正でないと、かえって健康を害す場合がある」と指摘する専門家もいる。(編集担当:如月隼人)