ボーイング787、”就航以来トラブルの連続”だった「夢の飛行機」

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1月16日、アメリカ連邦航空局(FAA)がボーイング787型機(以下、787)の運航停止命令を発した。

787型機は、ANA、JAL、ユナイテッド航空(アメリカ)、エアインディア(インド)、エチオピア航空(エチオピア)、カタール航空(カタール)、ラン航空(チリ)、LOTポーランド航空(ポーランド)の8社が保有しているが、1月22日現在、すべてのエアラインが同型機の運航を停止している。

その直接の原因となったのは、16日に山口宇部空港から羽田空港に向かっていた787(ANA692便)の補助動力装置(Auxiliary Power Unit=APU)に使われているバッテリーから発煙し、高松空港に緊急着陸したトラブルだ。

これを規制当局のFAAが重大インシデント(事故には至らないが極めて深刻なトラブル)ととらえ、運航停止命令を発した。

機体前方の電気室にあったこのバッテリーは、「収納する金属製の容器が変形し、内部は激しく焼けただれて炭化。

溶液が漏れ木炭のようになり完全に壊れた」などとされ、その写真も公開された。

一連の報道を見ていると今回の発火は突然起こったかのように思えるが、前兆ともいえる不具合があったようだ。

787のバッテリーについて、「ボーイングの整備マニュアルでは2年に一度交換すればよいことになっている。

にも関わらず、すでに10回以上も交換していた」(ANA)。

整備の現場では、「どうしてこう何度も換えないといけないのか」(同)との不信感があったのだ。

また、このバッテリーはJALの787でも発火している。

1月8日にボストン・ローガン国際空港で出火、ぼやとなり約20分間燃え続けた。

こちらは機体後方に設置されたバッテリーだったが、同じ製品である。

これだけトラブルが続けば、何らかの不具合があると考えるのが当然だ。

787が起こした不具合は、バッテリーだけにとどまらない。

2012年10月にはANAの同型機が山口宇部空港で燃料漏れを起こし、今年1月8日にはJALの同型機がボストン・ローガン空港で同じく燃料漏れを起こした。

その他、ANA便でのブレーキの不具合やコクピット窓のひび割れ、またユナイテッド航空の同型機は先月、電気系統に何らかのトラブルが発生してニューオリンズ空港に緊急着陸している。

787は2011年10月にANAが世界初の商業フライトを実施した新しい旅客機だが、前述したようにバッテリーを何度も交換していた点なども含めて考えると、「就航以来、トラブルの連続だった」と表現しても過言ではないだろう。

確かに、新しい飛行機には不具合を起こしやすい面がある。

直近の例でいえば昨年、国内線に相次いで就航した低コスト航空会社(LCC)のディレイ(離着陸の遅れ)やフライトキャンセル(欠航)が話題になったが、代替え機が少ないというLCCならではの事情や天候不良に加え、エンジンのちょっとした不具合などいわゆる初期不良が発生したのもその一因だった。

エアアジア・ジャパン、ジェットスター・ジャパン、ピーチ・アビエーションの3社ともエアバスA320-200の新造機を使用しているが、このA320ファミリー(シリーズ)は累計8,800機以上が生産されているベストセラー機。

それでも、不具合を起こすことがあるのだ。

しかし、今回の787でのバッテリーの発火や離陸前の燃料漏れなどの一連のトラブルは、こうした従来機の不具合とは一線を画すレベルのものだった。

だからこそ、FAAは運航停止命令を発したのである。

続く後編では、787にトラブルが集中するその理由をひもといていく。

緒方信一郎航空・旅行ジャーナリスト、編集者。

学生時代に格安航空券1枚を持って友人とヨーロッパを旅行。

2年後、記者・編集者の道を歩み始める。

「エイビーロード」「エイビーロード・ウエスト」「自由旅行」(以上、リクルート)で編集者として活動し、後に航空会社機内誌の編集長も務める。

20年以上にわたり、航空・旅行をテーマに活動を続け、雑誌や新聞、テレビ、ラジオ、インターネットなど様々なメディアでコメント・解説も行う。

自らも日本・世界各地へ出かけるトラベラーであり、海外渡航回数は100をこえて以来、数えていない。