Jリーグ2012年シーズンが終了。12月3日には「Jリーグアウォーズ」でベストイレブンが発表された。彼らは皆、ハイレベルのパフォーマンスを披露し、チームの勝利に貢献。多くのファンを魅了した活躍には大いに敬意を評したい。その発表直前、解説者の名波浩氏に独自の視点で今季のベストイレブンを選出してもらった。こちらも注目してください。

GK
林 卓人(ベガルタ仙台)

 林卓人は昨季同様、今季も安定したプレイが光っていた。同様に、優勝した広島の西川周作をはじめ、東口順昭(新潟)や楢崎正剛(名古屋)らも素晴らしいプレイを見せていたが、なかでも林はビッグセーブが多かった。第29節の浦和戦で、マルシオ・リシャルデスのシュートを左手1本で弾いたシーンなどは、強烈な印象として残っている。ボランチにボール奪取力の優れた選手を配置してもともと守備力には定評のある仙台だが、今季は高い位置からの守備を意識。ただ、相手にブロックをはがされたときにはラインが高い分、決定的なピンチが訪れていた。その際に林の存在というものがより際立っていたと思う。

DF
上本大海(ベガルタ仙台)
闘莉王(名古屋グランパス)
森脇良太(サンフレッチェ広島)

 今季から仙台に加入した上本大海は、1年目からチームによくフィットしていた。特に良かったのは、ラインコントロール。昨季は夏場に失速した仙台だったが、その原因のひとつには、最終ラインが下がってしまい、中盤とのギャップを相手にうまく使われてしまったことがあった。今季は、上本のおかげでそれを回避。夏場以降も安定した戦いを続け、最後まで優勝争いを演じられたのも、彼の補強があったからこそと言っていいだろう。そういう意味では、大事な終盤で上本が負傷して戦列を離れてしまったのは、痛かった。

 闘莉王は、今季はセンターFWでも結果を残すなど、相変わらず彼ひとりで勝ち点10を稼ぐだけの力を持っているな、という働きを見せてくれた。チームとしては負傷者が続出したり、いろいろなシステムを試したりして、思うような成績は残せなかったが、彼自身は常に高い存在感を示して、攻守に活躍したと思う。

 森脇良太は今季4ゴールを記録。そのすべてが、チームに勢いを与える価値のあるゴールだったと思う。ゴールに限らず、右サイドのスペースを積極果敢に使いこなし、「攻撃は最大の防御なり」という言葉を実際に体現していた。そして、特筆すべきは彼の明るいキャラクター。チームが連敗しなかったのも、彼のように雰囲気をガラッと変えられる人間がいたからこそ。そういう選手の重要性を、各クラブが改めて気づかされたのではないだろうか。

MF
青山敏弘(サンフレッチェ広島)
阿部勇樹(浦和レッズ)
中村憲剛(川崎フロンターレ)
高萩洋次郎(サンフレッチェ広島)

 初タイトルを手にした広島の攻守のつなぎ役を果たしたのが、青山敏弘。彼が相手にとって危険なエリアに入ってボール受け、攻撃のスイッチとなるパスを前線に配球していた。そのスイッチを入れるパスが、非常にメッセージ性の強いパスだったため、前線でトライアングルを形成する3選手に適切に伝わって、さらにサイドの選手もうまく呼応できていた。その様は、まるでテレビゲームのようなスムーズさがあった。

 忘れてはならないのは、青山がそうした役割を果たせたのも、泣く泣くMF部門の次点とさせてもらった森崎和幸のサポートがあったから。森崎の献身的な動きを含めて、ふたりの連係は本当に素晴らしかったと思う。

 今季3位になった浦和の躍進は、海外帰りの阿部勇樹の存在なくして語れない。まず、守備ではボールアプローチが圧巻だった。そのうえで、味方にアプローチに行かせて自分はカバーリングに回ったり、自分が行ったら周囲の選手にサポートさせたり、人をうまく使えるようになっていた。攻撃面では、もともと持ち合わせていたパススピードに加え、タテパスの意識が非常に高くなっていた。前に仕掛けるのが好きな選手が多い浦和で、その阿部のパスは攻撃の勢いを一層駆り立てていた。リーダーシップも含めて、浦和が結果を残せたのは、阿部の功績がかなり大きいと思う。