――完成された選手を獲得できず、完成した選手が他のチームに、ヨーロッパに行ってしまう状況というのはさらに厳しくなると思うんですが、その中でフィンケ監督はこの2年間、ファイサル選手のような試みもありました。結果的には帰ることになってしまいましたが、改めてそのことを振り返っていただけないでしょうか
「私は出来る限りもうアドバイスはしないことにしたいです。私が様々なことをアドバイスすることによって、今、フィンケ監督が私のことを批判しているんじゃないか、と勘違いするような人が増えないためです。ただし今ファイサルの件は指摘してくださって良かったと思います。なぜなら1つお話したいこともありました。

日本のサッカー界では3人の外国人枠、それからアジア枠があります。それから育成枠で外国人を取ることもできるようになっています。それでこの育成枠の中では状況によっては5人目の外国人を使ってもいいとなっています。ただしこの選手は二十歳以下でなくてはなりません。そして彼らは全員C契約、年俸480万以下でなければいけないのです。

ということは、若い無名の選手がもしかしたら将来的に伸びるかもしれないという期待を込めて、この育成枠を使って選手を獲得するわけです。この育成枠というのは1人の選手を外国から獲ってきて、もう6ヶ月以内に彼らはチームの主力で大活躍してほしい、そういうような期待を持って選手を獲得してくるような枠ではありません。

ただしこのような枠、育成枠を毎年のように有効的に使っていくことによって、例えば毎年2人獲っていって、新しい選手を入れていって、そして5人6人獲った結果、1人か2人が主力として活躍できるというようになることを考えれば、非常に安くて優れた投資だったということができます。この事について議論するのはとても興味深いことです。

今私が確信を持って言えることは、日本のサッカー界での常識、それから多くのことについての考え方は、Jリーグが産まれてからの最初の12〜13年間とは違うものにならなくてはいけないということです。皆さんも最初のJリーグの12年間をご存知だと思います。日本は60〜70年代の経済的な成長もあって、とても豊かな国になりました。とてもとても幸福な国だったのです。

そしてとても強い財政力があったということもあって、バブルが崩壊した後でもJリーグには多くの、とても、とてもレベルの高いところでプレーしていた―ブラジルを筆頭に―様々な国から選手がきました。ドゥンガ、レオナルド、ウーベ・バイン、ブッフバルト。引退する直前の、とても優れた各国のブランドネーションの代表選手をたくさん引っ張ってきました。なぜならば、とてもたくさんのお金があったからそういうことができたのです。

そしてそれによってJリーグの人気を上げようとしました。そしてこのような有名選手がたくさん集まったこともあって、とても早くこのJリーグの人気が上っていきました。元フランス代表選手、元ドイツ代表選手、元ブラジル代表選手、元アルゼンチン代表選手、これらのような元代表選手達が引退の直前に、もう一度日本に来てプレーをすることによって、とてもいいお金を稼ぐことができたので、彼らも喜んで日本に来たのです。

ただし今は違い、4、5年前からは、中東の国々、あとロシアでとてつもないお金を稼ぐことができるようになったのです。なので、引退直前の代表選手たち、いわゆる当時の状況ならば、バインとかブッフバルトとか、ドゥンガ、レオナルドなどなどが当てはまるんですけど、このような選手たちは今日では日本ではなくて、そういう別の国々に行くようになったのです。とういうことは、多くの有名選手にしてみれば、日本に移籍するということは、まったく魅力的なことではないのです。それならば、カタールに移籍したり、ドバイに移籍したり、もしくはUAEに移籍したり、もしくはロシアに移籍したりするほうが、金銭的にずっと魅力的なものなのです。

今、こういう時代になってきています。だからこそJリーグが今後も成長していきたいのであれば、新しい考え方を身につけなければなりません。なぜならば、ブランドネーションからの完成された有名選手を獲ることができないからです。

このような状況でやらなくてはいけないのは、もう少し安い選手をとること、お手頃な選手をとること、もしくは自ら選手を育成することです。そして新しい考え方に切り替えてこのような新しい考え方に切り替えて、次のステップを踏むということは、非常に難しいことだと思います。自ら優れた選手達を育成していくということは、そう簡単ではないからです。

私は一度日本に来てから、コーチングスタッフに対してとても興味深いビデオを見せたことがありました。それはドイツ国営放送で流れた、『ギド・ブッフバルトの日本での生活』という番組があったのです。

私の知り合いがその番組を作っていて、私が日本に行くということになったときに、その番組をもう一度見せてもらったのです。その中身は当時、現役の選手としてここでプレーしていた土田コーチとか福田コーチにも見せました。そしてウーベ・バインが、とてもとても興味深いことを言っているのです。福田コーチが映像、番組を見て、確かにその通りだと言ったのです。

ウーベ・バインはドイツのインタビューを受けた時にカメラに向かってこう言っていたのです。『ここでサッカーをするのはそう簡単なことではない。日本の選手は、とにかくみんな走ることはできる。常に動いている。ただし…』ウーベ・バインが言っているんですよ、『…私がボールを持って、ちょうど左サイドに穴が生まれたから、左サイドでプレーしようとすると、日本の選手はみんな右に走っていった』と。

そして彼はそのインタビューではっきりと述べていたのです。『日本のチームでは常にとても優れた三人の外国人の選手がいる。それ以外の日本人選手は、戦う、それから、走る、それだけだ。そして最も優れた三人の外国人選手を獲得したチームが、順位表で最終的に優勝争いをすることができる』ウーベ・バインは当時のインタビューではっきりとそう答えているんです。そして当時のJリーグの状況を考えれば、もしかしたらそこにも部分的な事実はあったのかもしれません。

ただしここ数年間のJの状況は変わりました。一昔前のように有名な選手をヨーロッパから獲ることはもうできないのです。だからこそ自ら選手を育成していかなくてはなりません。もしくはさっきのお話にもありましたように、今までなかったルートから選手を取らなくてはなりません。

1つの考え方としては、ヨーロッパの一流クラブと提携関係を結ぶことで、そしてそのクラブに所属している優れた選手、そしてこれから伸びるであろう選手を期間限定でレンタルすることです。例えばヨーロッパのチームに所属している選手でまだ試合に出ていない選手は、Jリーグにきて、ここで試合の実戦経験を積みそしてヨーロッパに帰っていく。

そして私が日本にきてから2年間でもこのような状況の変化を見ることができましたが、あと数年すれば日本のA代表チームのスタメンのメンバーは、全員がヨーロッパでプレーしているようになるでしょう。ワールドカップの後の親善試合でもスタメンのメンバーのうち7人がJリーグのクラブではなくてヨーロッパのクラブでプレーしていました。そして今後はさらに増えていくでしょう。

ですので、これは意図的に私は少し悲観的なことを言うことになるかもしれませが、将来的には日本代表の合宿は日本ではなくて、ヨーロッパで行われるようになるでしょう。アフリカの代表チームを見てください。彼らの合宿はすべてヨーロッパで行われています。コートジボワールとかガーナとかブルキナファソとかこれらの代表チームは、常に合宿と親善試合をヨーロッパでやっています。なぜならば、これらの代表チームの選手はみなヨーロッパでプレーしているからです。

そして現時点では、どうしても香川がこの蒸気機関車のトップを走っているわけですが、彼にひっぱられるような形で多くの日本の選手がヨーロッパへ移籍しようとしています。だからこそJリーグは今後も高いレベルをキープしていきたいのであれば、このような厳しい仕事をしていかなくてはなりません。

簡単でないことはよくわかっています。それでもさらにJリーグは質の高い選手を育成していかなければならないのです。それからJリーグのマネージメントの人間も、お金を稼ぐようなことができるやり方で契約を結んでいかなくてはなりません。でないと徐々に国際サッカー界での競争力を失っていくでしょう。無名な選手ならまだしも、A代表選手が移籍金ゼロで移籍するようなことがあってはなりません。

代表選手は優れた選手のはずです。優れた選手を出す時には、通常であれば違約金が入るものです。私は今ここで浦和レッズの批判をしたい訳ではありません。私は単純に日本で見ることができた現象を中立的な立場から指摘しているだけです。これは私にとっても大切なことです。皆さんもぜひそのことは考慮していただきたいと思います。私はこの場で浦和レッズを批判している訳ではありません。

それぞれのクラブができる限り優れた仕事をしようとしているのはよくわかっています。今、私が指摘したことというのは、ここだけではなくて、サッカー界全体に言えるなのです。今後もJリーグが、優れたレベルでさらに成長したいと考えるのであれば、解決しなくてはいけない問題なのです。

今、私たちがここでやっている仕事、そして特に、それまではまだプロの業界でまったく実績のなかった、直輝、元気、峻希、岡本拓也、それから宇賀神などなど、たくさんの選手たちを伸ばしていって、プロの世界に慣れさせるだけではなくて、そこで主力として活躍できるように成長させていくということは、今後も、続けていかなくてはいけない、そして成長するため、Jリーグ全体が成長するために不可欠な仕事です。

そして皆さんも、このチームを快くサポートしてあげてください。もうあと、ほんのわずかのところまできています。次のステップを踏むことができれば、彼らは長期的に渡ってとても大きな成功を収めることができるようになるでしょう」

――そこに優勝という結果がついてきたら…
「あまり大きなステップを期待しないでください。ステップというのは少しずつ踏んでいくべきです。次に考えなくてはいけないのは、ベスト3に入ること、その結果として優勝できれば、結果として素晴らしいこと。やはりそのプロセスがあって結果が出ます。“ステップbyステップ”で考えていかなくてはいけません。

そして状況によっては、とても大きなステップをした後に1ステップ、2ステップ戻らなければいけない時もあります。その時こそ、正しい方向性を持って、そして確信を持って仕事を進めなくてはいけません。自分たちがどういう哲学を持っているのか、どういう道を進んでいきたいのか、ここで根気を失ってしまって方向転換してしまうことがあってはなりません。

だからこそさっき私はドルトムントの話をしたんです。前回のブンデスリーガ優勝から8年目にやっと首位争いをしています。しかし、根気よく仕事をしたこともあって、今、バイエルンミュンンヘンとの勝ち点差は10ポイントになっています。しかしこのような結果を残すためには時間が必要だったのです。長い間低迷してきました。そしてまたこの土台を作り上げて、今、またいい結果を残すことができるようになってきています。とにかく我慢強く仕事をしていくことが大切です」

――この2年間で最高値が10だとすれば、どれだけのステップを踏めたか
「6から7じゃないですか。(選手も同じ風に?)だいたい6から7じゃないですか」

――契約を2年前に結ばれる時にチームを詳細に分析したということでしたが、一つのミッションとしての到達点を設定されていたと思うんですが、ここまではこの間に仕上げようというようなものは
「そういうプランを作り上げることができるような状況ではありませんでした。なぜならば、当時の首脳陣の方も私たちもそのような詳細をプランニングすることはできませんでした。サッカーというのは望んだ曲がすべて演奏されるようなものではありません。常に改革を進めていく際に考慮しなくてはいけないのは、それぞれの選手の契約状況です。

私を招聘することになった当時のクラブの状況、チーム状況を考えると、多くの選手たちがキャリアのハイライトを越えて下降線を辿っていたわけですね、パフォーマンスに関しての下降線を辿っていた訳ですけど、まだまだ数年間の契約を持っている選手たちでした。このような選手たちが数多く所属していたのです。

そしてここでのコンセプトと合わない選手たちに対しては、今はこういう状況だから違うクラブに行った方が活躍できるぞ、ということを説得しなければいけないこともありました。選手たちにとっては、それは常に気持ちいい話し合いではないということは事実です。しかも忘れてはならないのは、他のクラブがここで支払われていたほどの年俸を支払うことができなかったということです。

一つの例ですけど、たしかに新聞に書かれていることが常に正しいとは限りません。ただしついこの間の報道については、高原が清水エスパルスで年俸2500万でサインをしたという報道がありました。皆さんもご存知のように高原は浦和レッズではとてもいい金額を稼ぐことができていたというようなことです。

これはOKなことですし、私は批判しているわけではありません。ただし私が言いたいのは、多くの選手たちがここでとても優れた、とてもいいお金を稼いでいて、まだ数年契約が残っている状況だと、チームの改革を進めるのが非常に難しくなるということです。

多くの選手たちは他のクラブからのオファーすらかかりません、なぜならば、ここでとてもいいお金を稼いでいるからです。状況によっては、放出をするために、こちらがお金を払わなくてはいけない時もあります。例えばこれはこの業界ではよくあることですが、一人の選手が数ヶ月前までは浦和レッズの様々なことについて批判をしていて、これがよくない、自分は大きな不満を抱えていると言っていたにも関わらず、数ヶ月後のインタビューでは、私は浦和レッズを愛しているというようなことを言うような選手もいるのです。

これはこの業界の一部ですし、私たち監督もそういう現実であるということは承知しています。でもこれは当たり前です。この業界では当たり前の状況です。私は選手を批判している訳ではありません。ただし、これがはっきりとした今日のサッカー業界での状況です。他のクラブでいいお金を稼ぐことができれば、選手は移籍するのです。多くの、このような選手たちが数多く所属していて、まだ契約があるとなると、チームを改革するのは非常に難しいです。

当時私たちが分析した状況では、確かに、ここと、ここと、ここのポジションで選手を入れ替えて、様々な改革を行って、ここに所属する選手を他のクラブに移籍させることができれば、そして同時に状況によっては他のクラブから優れた若い選手をこのポジションのために獲得することができるのであれば、とても素早い改革を進めることができると思いました。なぜならば、予算があれば選手を放出することもできますし、同時にここのプレースタイルに合う選手を獲得することもできます。

ただし現実的としては予算がない、そして多くの選手たちが契約が残っている、放出することもできない、このような現状がありました。しかもチームを改革するために必要な予算、選手をとるために必要な予算がまったくない、ということになってしまうと、さらにチームを改革するのが遅くなってしまいます。チームの改革、それから選手を入れ替えるということは、とてもとてもたくさんの要素が絡み合って初めて成し遂げることができるのです。

ただしすべてのことについて公の場で説明することができないところもあります。私たちがもともと思っていたように改革の一部を進めることができなかった、もしくは私たちが願っていたテンポで、スピードで進めることができなかったのも事実です。ただし今、もう私がきてから2年が経ちました。

多くの選手たちの契約は満了した訳ですし、高原は韓国にいきましたし、都築の契約も切れるわけです。これらの契約が満了したことによって、選手を獲得する新しい予算が生まれつつあります。詳細については私は公の場では絶対に語りませんけど、忘れてはならないのはチームの人件費が、私がきた時と比較して、ものすごく安くなったということです。今は、です。しかし、これこそはマネージメントの仕事です。マネージメントの人間が、今の状況を把握して正しい決断を下していかなければなりません。

最後の最後ですけど、私からは皆さんに対して感謝したいと思います。私もできる限りここで受けた質問に応えようとしましたけど、できる限りのことはしたつもりです。ただし、一部の新聞の記者の方は、私に対してあまり好意を持たない形で記事を書いていたと思われます。

ただし私は日本に来て、このクラブであることを学びました。それはあまり記事に書いてあることは気にするなということです。あと、私がもう一つ気づいたのは、日本で仕事をするのはジャーナリストの皆さんにとってもそう簡単なことではないということです。多くの新聞社では、人事異動があって、例えばそれまでサッカー担当だった人間が、ボクシングの担当になったり、一つの例ですが、こういうのが非常に悔やまれることだと思います。

一緒に仕事をしていく上で、高い質をキープしていくということを考えれば、このような人事異動はまったく建設的なことではありません。一人のジャーナリストがサッカーを専門的な仕事として捉えて、数年間に渡って、もしくは十何年に渡って書くことができれば、質の高い記事が書けるようになると思います。これはサッカー選手の成長に関しても同じです。

継続性によって、継続性を持って仕事をすることによって、仕事の質を高めることができるものなのです。ただし何度も何度も人事異動があってしまうと、それまで優れた知識を持っていた記者がまた違うところにいってしまうことによって、その新聞のサッカーに関する記事のレベルが落ちてしまうところがあります。大切なのは継続性を持って仕事をしていくこと、そして一人の人間が優れた仕事をしているのであれば、人事異動だからといっても変えてはならないと私は思います。

例えばヨーロッパの最も優れたクラブを見てみてください。たいていどこのクラブでも、長期に渡って結果を残しているクラブでは、監督は少なくとも3年同じクラブで仕事をしています。マンチェスター・ユナイテッドを見てください。ファーガソンは20年以上仕事をしています。アーセナルのベンゲル監督を見てください。12〜13年仕事をしていると思います。バルセロナを見てください。今までの歴史の中でも、最も優れた結果を残すことができていた時期は必ず4年、もしくは5年同じ監督で仕事をしていました。

そしてもし監督でなければ、スポーツディレクターなり、ゼネラルマネージャーなり、もしくはクラブの会長が何年にも渡って長期的な仕事をしなければならないのです。このような継続性を持って、初めてすべての結果を残すことができます。でも、すべてのこの3つのポジションで、定期的に人事が入れ替わっていては、結果を残していくのは、クラブとしては非常に難しくなります。

これはやはりこの日本サッカー界に存在している、この組織とも関係していると思います。日産や三菱というそれぞれの企業が2年おき、もしくは3年おきに新しい人間を、本社のほうからクラブに送り込んでくると、クラブが継続性を持った仕事をすることをするのは、さらに難しくなってしまいます。なぜならそれぞれの社長が自らの組織改革をしようとするからです。

それによって多くの人事異動も行われてしまいます。私はここ2年間仕事をしてきましたが、この多くの人事異動によって、私がこの3つのポジションに関して言えば、最も長くクラブにいる人間になってしまいました。私がきてからは2人のチームダイレクター、GMを経験していますし、広報部長も3人変わり、それ以外のポジションでも多くの異動がありました。チームを取り巻く環境でさえ、これだけの異動がたくさんあったのです。なので私は、礼儀正しくこのことは指摘したいです。

長期的な成功を収めるのには、難しい条件がたくさん揃っていました。でも、誰も今私が指摘したことに関して、心が傷つけられた、もしくは批判されたと思わないでください。私は単純に、今ここで起きたこと、もしくはこの業界で起きていることを客観的な立場から指摘しているだけです。

私はここでとても多くの方と知り合うことができました。そしてそれぞれの人間が、それぞれの仕事をできる限り良くやろうと努力していました。そしてこれは私が日本に来て経験することができたことですが、多くの日本人というのは、それぞれの仕事でできる限りいい仕事をしようと努力をしています。そして大きなモチベーションを持って毎日の仕事に取り組もうとしています。それはヨーロッパとはまったく違う点です。

こういう仕事に対しての姿勢は、ヨーロッパより日本の方が優れているところです。ただし、ヨーロッパで、一人の人間がとても優れていた仕事をしていたらば、この人間がこの職を離れるということはあり得ません。優れた専門家として評価されて、いつまでたってもこの仕事を続けることができるようになります。人事異動で新しい仕事が与えられるということはあり得ません。ヨーロッパと日本の仕事の進め方の違いでしょう。継続的な成長ということを考えれば、そのことを指摘しなければいけません。

サッカーで大切なのは継続性を持って仕事をすることです。そしてチームを成長させていくためにも、毎年のように2〜3人の選手をとらなくてはいけません。そして新しい選手が加入することによって、そこに所属している選手たちにとって新しい刺激を与えることができます。そしてそれぞれの選手たちがさらに自分たちの実力をアップしようと努力していきます。

このような定期的な選手に対しての刺激を継続的に行っていかなければなりません。でないと、継続的なチームの成長はあり得ないからです。忘れてはならないのはチームを取り巻く環境です。チームを取り巻くところには、すぐれた専門家がたくさんいなくてはなりません。で、彼らが優れた仕事をすることが大切です。ただし私は喜んでヨーロッパに帰ります。それでも私はここにきたことは一切後悔していません。毎日がとても刺激になる日々でした。とても興味深い国でした」

――今、日本人の仕事に対する姿勢のお話をしていただきましたが、日本人選手たちはヨーロッパの選手たちと精神的な面で違うと感じられる面がありましたか
「たくさんの違いがありますす。ただしそのことに関してお話する時には、またアポを調整しましょう。とても興味深いテーマで、そのことについてお話するにはとても時間がかかってしまいます。ただし、はっきり言えるのは、選手が育った環境も違いますし、幼稚園から高校へいくまでの教育も違います。日本の選手はヨーロッパとはまったく違う環境で育ちます。ですので、いろんなところで精神面に関しても大きな違いが存在しています。

もちろんサッカーに関してはポジティブなこともありますし、ネガティブなこともあります。ただし、日本の子供の教育ということを考えれば、野球の方がサッカーより適しているでしょう。野球の方がこの国での教育を比較的楽に反映することができるからです。野球のほうが何をすべきか決まっています。どこを走るか決まっていますし、それぞれの状況が限られているので、多くの情報を集めて判断することができます。

しかしサッカーは違います。サッカーは常にコンプレックスです。そして、それぞれの状況で常に新しい判断を下していかなければなりません。多くの選手たちがピッチの上で、自ら瞬間的に判断を下していかなくてはなりません。そして、大きな驚きを与えるようなこともしなくてはいけないのです。でないと勝てません。

でも、ここ最近の若い世代の選手たちは、違う考えと価値観を持って大きくなってきていると思います。私は1度、香川と直接話し合いをして、なんとかして彼を浦和レッズに引っ張ろうとしました。その時に興味深かったのは、彼の姿勢です。彼の考え方、それから彼のメンタルはサッカーをするのに適しているものでした。とても興味深いテーマなのですが、とてつもなく時間がかかる、議論をするために時間がかかるので、またアポを調整しましょう」

(了)取材・文:川岸和久

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