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もくじ

ー 今年は激動のシーズンに
ー ローブはヒュンダイへ
ー オジェ、シトロエンに復帰
ー オジェのライバルたち
ー ミーク最後のビッグチャンス
ー 2019年シーズンカレンダー

今年は激動のシーズンに

ラリーファンが昔は良かったという場合、それはグループBのモンスターマシンたちが激しい戦いを繰り広げた1980年代のことを指しているのであり、この時代には数多くの伝説的ラリーカーと、それを操る勇気を持ったドライバーたちが登場している。

では、そんな時代ははもう2度と帰って来ないのだろうか? 昔を懐かしんでいるだけでは、いま目の前で起こっていることを見過ごすだけであり、現在のWRCは過去に囚われて見逃してしまうにはあまりにも惜しい。

現代のラリーカーがベースにしているのは、トヨタ・ヤリスやフォード・フィエスタ、ヒュンダイi20 クーペ、シトロエンC3といったありふれたハッチバックだが、実際には、こうした量産モデルとの繋がりは、ラリーカーがその上で豪快なドリフトを見せる小石ほどのものでしかなく、こうしたラリーカーは本物のサラブレッドともいうべき存在だ。

一方、本物のヒーローとでも呼ぶべきドライバーを探し出すのは難しいかも知れないが、彼らは異次元のドライビングテクニックを持ち、よく見れば、それぞれが際立つ個性を備えてもいる。

2019年シーズンは今週末、シーズン最高の舞台であり続けている伝統のモンテカルロで幕を開ける。

筋金入りのラリーファンにはいまさらの情報だろうが、もし、いまのラリーシーンに疎かったり、これまで興味がなかったとしても、今シーズンのWRCは要注目であり、このガイドはそうしたひとびと向けに書かれているのだからご安心を。

今シーズンのすべてのレースはBTスポーツでTV中継されるとともに、インターネットでも公式サイトのwrc.comがストリーミングサービスを提供し、全スペシャルステージがライブ中継される予定だ。

準備は良いだろうか? 「昔は良かった」などとは言わせない。

ローブはヒュンダイへ

たとえわずかの間だったとしても、本当に引退などしたんだろうか? F1界におけるミハエル・シューマッハー同様、セバスチャン・ローブも彼の愛するラリーから離れることなどできないのだ。

3年のブランクを経て復帰した昨シーズン、ローブは彼の偉大な(そしてある意味マンネリとも言える)2004年から2012年までの連続タイトルを獲得したシトロエンからスポット参戦を行い、ラリー・スペインで勝利をあげることで、44歳の彼の魔法がいまだ続いていることを証明した。


当然、今年のローブは史上最多となる79勝の更新を狙っているだろうが、それは長きにわたるライバルのオジェがドライブするシトロエンからではない。

ローブはヒュンダイから6つのレースへの参戦を予定しており、6戦だけではドライバーズタイトルを獲得することはできないが、彼にはもはやタイトルなど必要ないからこそ、6戦で十分なのだ。

今週末、ローブは歴戦の勇士としてプジョーに乗って挑戦したダカール・ラリーから、直接モンテカルロへと乗り込む。

オジェ、シトロエンに復帰

すでに6年連続で世界チャンピオンの称号を手にしているにもかかわらず、セバスチャン・オジェのWRCに対する熱意は些かも衰えてはいない。

史上2番目に偉大なラリードライバーとして、このフランス人は毎朝目を覚ますたびに、同じ名前をもつ永遠のライバル、ローブを越えてナンバーワンになるという思いを新たにしているに違いない。

2019年シーズンの話題と言えば、オジェが3つめとなる新たなチームでタイトル防衛に挑戦するということだろう。これまで3つの異なるチームでタイトル獲得に成功したのは、プジョーとランチア、トヨタでチャンピオンとなった伝説のフィンランド人ドライバー、ユハ・カンクネンただひとりしかいない。

オジェは、2013年に4年連続でタイトルを獲得することになるフォルクスワーゲン・チームへ移籍するまで、WRCデビューからの日々をともに歩んだシトロエンへの復帰を選んだのだ。

フォードからの十分なサポートがなかったにもかかわらず、フィエスタでさらにふたつのタイトルを獲得したMスポーツで幸せな2年間を過ごしたあと、オジェは内なる声に従ってシトロエン行きを決めた。

実際、フォードの消極的な姿勢がオジェの決断を促した面もあり、プライベートチームからの参戦でタイトルを獲得したことで、自身のフォルクスワーゲン時代の功績をも上回ることに成功したオジェは、トリッキーな挙動が特徴のC3でふたたびタイトルを手にすることで、ラリー界における名声をさらに確固たるものにしようとしている。

実際、これまでのところ、ローブがタイトルを獲得したのは常にシトロエンとだった……。

オジェのライバルたち

オジェがシトロエンへと移籍したことで、彼のライバルたちにはこの現代のラリーキングをその座から追い落す絶好のチャンスが巡って来たのであり、才能豊かな3人のドライバーが虎視眈々と今シーズンのドライバーズタイトルを狙っている。

エストニア出身の31歳、オット・タナックは2018年シーズンに3連勝を飾っていきなりタイトル争いに絡む大活躍を見せた勢いそのままに、今シーズンの活躍がもっとも期待されるドライバーであり、昨年は終盤に失速したものの、2シーズン目を迎えるトヨタから参戦するタナックは序盤戦から要注目だ。


チームメートのヤリ=マティ・ラトバラはタナックにストップをかけようとするだろうが、彼もミーク同様、その速さに見合った安定感を身に着ける必要がある。

一方、ヒュンダイでは眼鏡をかけたベルギー人ドライバー、ティエリー・ヌヴィルがローブのサポートを受け、ルックスも見事なi20クーペの潜在能力をうまく活かすことができるかも知れない。近年稀に見る激戦が予想される今シーズン、ローブの存在がカギになる可能性がある。

ミーク最後のビッグチャンス

去年、シトロエンをドライブ中にポルトガルで起こした彼の代名詞とも言えるクラッシュによって、クリス・ミークはその後のシーズンを棒に振っている。

39歳のミークにとって、それは浮き沈みの激しい彼のキャリアの終わりを告げることになるかと思われが、昨シーズンのコンストラクターズタイトルを獲得したトヨタからのオファーで、この北アイルランド出身のドライバーには、その天性のスピードを活かす最後のチャンスが与えられることになった。


チーム代表であり、4度のドライバーズタイトルを獲得しているトミ・マキネンは、奇妙なクラッシュを繰り返していたコリン・マクレーを彷彿とさせるミークに全幅の信頼を置いているようだ。

過去5勝を誇るミークだが、彼の年齢で本当に変わることなどできるのだろうか? それでも、長年苦楽を共にしてきたコ・ドライバーのポール・ネーグルとのコンビを解消するなど、今シーズンへのやる気を見せている。

トリッキーなC3はドライバーに限界を超えたドライビングを求めたが、ヤリスではそんな蛮勇を振るう必要などないからこそ、今シーズンのミークに求められるのは、クラッシュではなくその「乱暴なドライバー」という悪評を拭い去ることだ。

2019年シーズンカレンダー

新たに開催地に加わったチリが2019年のWRCカレンダーに彩りを与えてくれるだろう。


グレートブリテン・ラリーは引き続きウェールズを拠点に、2018年同様、スランディドノの街を中心に開催されるが、ウェールズの森林地帯へと続くコースは厳しいものになるに違いない。

1月24〜27日:モンテカルロ
2月14〜17日:スウェーデン
3月7〜10日:メキシコ
3月28〜31日:フランス
4月25〜28日:アルゼンチン
5月9〜12日:チリ
5月30〜6月2日:ポルトガル
6月13〜16日:イタリア
8月1〜4日:フィンランド
8月22〜25日:ドイツ
9月12〜15日:トルコ
10月3〜6日:グレートブリテン(GB)
10月24〜27日:スペイン・カタルーニャ
11月14〜17日:オーストラリア