日経平均株価は一気に年初来高値をとってきた。もう一段の上昇があるかもしれない(撮影:尾形文繁)

「上値抵抗帯」が「下値支持帯」に変わった

米国の同時多発テロ(2001年9月11日)から16年が経過した先週、米国市場ではNYダウ平均が5日連続で史上最高値を更新しました。米国の主要500社で構成されるS&P500や、ハイテク株主体のナスダックの指数も、ともに史上最高値を更新中です。

一方、地政学リスクにおびえていた東京市場は、数日前までは想像もしなかった米国の長期金利の大幅な上昇や急速な円安に対して、慌てて好反応を示しています。19日の日経平均株価は2万円台を回復程度と思いきや、終値ベースで年初来高値(2万0230円)を一気に更新して来ました。前回お伝えしたように、今年に入ってからの東証1部の売買代金を日経平均株価の200円刻みの価格帯で分けると、最も多く積み上がっているのが1万9900円〜2万0100円の水準(15日現在で81兆円)です。

つまり、その水準からは戻ったら売りたいと思う投資家が多く、いわゆる「上値抵抗帯」になりやすかったわけですが、上述のように米国の長期金利の上昇や円安に加え、国内では衆議院解散の観測といった刺激材料が追い風となり、週明け早々に「上値抵抗帯」をあっさりと突破しました。そうなると今度はどうなるかというと、逆に下げたら買いたいと思う投資家が増え、1万9900円〜2万0100円の水準が「下値支持帯」に変わることが予想されます。

今週19〜20日のFOMC(連邦公開市場委員会)では、米連邦準備制度理事会(FRB)のバランスシート縮小を10月に開始することを決定する見込みです。一方、年内(12月12〜13日のFOMCか?)の利上げに関しては、最近の低インフレなどを理由に、市場の織り込み度合いは決して大きくありません。

ただ、米国の主要指数が史上最高値を更新するなど、数週間前に比べると米政局リスクや地政学リスクはやや緩和されている状態にあります。14日に発表された米国の8月消費者物価指数(CPI)も、前月比で+0.4%と7カ月ぶりの大きさとなりました。

足元の米国の長期金利の上昇が年内の利上げを織り込みに入っている動きであれば、FOMC後のジャネット・イエレンFRB議長の会見がややタカ派的な内容にならないとも限りません。もし発言が円安の追い風になるような内容の場合は、米国株の反応にもよりますが、日経平均株価の上値追いのきっかけになるとみられます。

9月末まで上昇後、10月は波乱に?

FOMC直後に発表される米国の9月フィラデルフィア連銀製造業景況感指数、8月CB景気先行総合指数(21日)などの結果も重要で、FOMCでの内容を裏付ける結果になるかどうかも注目ポイントです。いずれにしても、FOMCを波乱なく通過できれば、9月末の中間配当取りの買いが入りやすいことや、来週は年金資金などTOPIX(東証株価指数)をベンチマークとする大口投資家による「配当再投資の買い」なども見込まれ、短期的には好需給が続きそうです。

さて、「配当再投資の買い」は、いつもこの時期に話題になります。これは、年金資金などを運用・管理する信託銀行などが、運用ポートフォリオに占める株式資産の配当落ちによる目減りを補うため、機械的に買いを入れることです。配当金を実際に受け取るのは2〜3カ月あとなので、目減り分相当額を先物買いで埋めることになります。3月の最終週も、同じような買いが入ります。

過去9月最終週の信託銀行による先物の手口(TOPIX先物のみ)をみますと、2010年は1649億円買い越し、2011年は1992億円買い越し、2012年 1795億円買い越し、2013年1674億円買い越し、2014年1768億円買い越し、2015年3181億円買い越し、昨年の2016年は3000億円買い越しでした。

同じく今年も権利付き最終日(26日)や翌営業日などに買いが見込まれるため、海外株式の上昇、円安といった日本株にとって追い風の吹く環境が続けば、相場を勢い付かせる要因になることが予想されます。今年の配当落ち分はTOPIX (東証株価指数)で13.5ポイント程度と見込まれており、15日現在のTOPIX(1638.94P)の0.82%に相当します。TOPIXに連動する資産が世の中に 38兆円程度あるとした場合、3100億円(38兆円×0.82%)程度が目減りする計算になるため、その分が買い需要になるということになります。

一方、9月の権利・配当取り目的の買いが一巡したあとは、その反動で下げやすいともいわれます。確かに、過去20年間、10月相場は上昇か下落かは別にして、12カ月のうちで2番目に大きく動いてきた経緯があるので警戒も必要でしょう。しかし、北朝鮮が国連安保理事会の制裁措置に仕返しを繰り返せば、さすがに相場に狂いは生じそうですが、そうしたこともなく10月10日(朝鮮労働党創建記念日)を通過できれば、「意外高」の期待も高いといえます。

さて、私が所属している非営利の団体・日本テクニカルアナリスト協会(NTAA)では「テクニカル分析について学びたい」という読者の方々のために、ボリンジャーバンドの開発者であるジョン・ボリンジャー氏を東京と大阪にお招きし、セミナーを開催いたします(11月18日(土)東京予定、25日(土)大阪予定)。

もちろん、日本語の通訳もつきます。ボリンジャー氏が自ら開発した「武器」を使って日本株を分析すると、どのように映るのでしょうか?今後は上昇でしょうか、それとも下落でしょうか。実は、筆者もボリンジャー氏を囲むパネルディスカッションのパネラーとして参加し、意見させていただきます。ご興味のある方はぜひこちらからお申し込みください。