宇都宮地裁は4月8日、'05年に栃木県今市市(現・日光市)で起きた小一女児・吉田有希ちゃん(当時7歳)殺害事件の裁判員裁判で、勝又拓哉被告(33)に無期懲役判決を宣告した。だが、弁護団の一木明弁護士は公判後の会見で「まったく納得できない不当な判決だ」と主張。「冤罪」を訴えていた勝又被告も控訴する意向という。

 実際、勝又被告は捜査段階で一度自白はしているものの、公判前から証拠の乏しさが指摘されていた。
 「公判では、検事の取り調べに勝又被告が詳細に犯行を自白する映像がモニターで再生され、裁判員たちは判決後の会見で『決定的証拠はなかったが、取り調べ映像により判断できた』と口を揃えた。つまり、自白頼みの有罪判決だったのです。ネット上では冤罪を疑う声も散見されるが、それも必然」

 こう語るのは、全16回の公判を傍聴したルポライターの片岡健氏。公判では、捜査のお粗末ぶりも露呈されたという。
 「栃木県警は勝又被告の検挙までに8年半を要したが、捜査が混迷した元凶は素人同然のミスでした。当初は被害者の遺体から検出された“身元不明の男”のDNAが犯人のものだとみて捜査を展開していたのですが、'09年にそれは捜査幹部が遺体を誤って素手で触り、付着させたDNAだったと判明。さらに公判では、科捜研の鑑定担当者も誤って鑑定資料に自分のDNAを混入させていたことが明らかになったのです」(同)
 証人出廷した県警の特捜班長は、このことを弁護人から指摘され、「お恥ずかしいです…」と体を小さくしていたという。

 さらに、恥をかいたのは警察だけではなかった。
 「取り調べ映像が再生された検事は2人いて、殺害を自白させた検事は普通の言葉遣いだったが、もう1人の検事は『話せよ!』『卑怯だろ!』『お前、そんなのでいいのか!』と勝又被告にキツイ言葉を次々浴びせ、自白強要と言われても仕方ない取り調べだった。本人も自覚があるのか、弁護人の尋問で取り調べの言動を追及された際には『申し訳ございません…』と恥ずかしそうに頭を下げ、反省していました」(同)

 控訴審では、再び自白が争点になる見通しだが…。
 「勝又被告の自白では、ビデオで自撮りしながら被害者にキスをしたり、陰茎を尻に擦りつけた上、手でしごかせ射精するなど、執拗なワイセツ行為をしたことになっている。にもかかわらず、被害者の遺体から勝又被告のDNAが一切検出されていないなど、自白内容にも疑問がないわけではありません」(同)

 まだまだ完全決着とはいかないようだ。