今回の衆院選で当選した「橋下ベイビー」のひとり、上西小百合氏。政治経験がなく、政治家としての資質も疑わしい点は多いが、維新の“風”を受けて比例当選を果たした

写真拡大

1月7日、日本維新の会は夏の参院選に全都道府県で候補者の擁立を目指していることを、幹事長である松井一郎大阪府知事が明らかにした。さらなる勢力拡大を狙う日本維新の会だが、そこには“本質的な危うさ”がつきまとっている。村上弘立命館大学教授が指摘する。

「橋下維新の政策は道州制や参院の廃止など、小さな政府と権力集中を目指し、愛国心や集団的自衛権を強調します。このポジションは政治学的には保守右派に分類され、自民党よりも右寄りといえます」

また、維新の会の掲げる『維新八策』にも問題があると村上氏は言う。

「橋下氏は『新たに作り出す』『日本を変える』というイメージを巧みに打ち出し、右派に見えないような戦略をとります。政治学的に、維新八策の統治機構改革にはデメリットが隠されていて、例えば参院の廃止。国民にすれば、4年に1度の衆院選以外は民意を表明するチャンスを奪われてしまう。憲法改正の発議要件を緩和すると、その後は人権が脅かされやすくなる。しかし、そうした危険を知らなければ、かなりの有権者が期待票を投じるでしょう」

マッチョさの一方で、維新の体質が脆弱な点も気がかりだ。テレビ朝日コメンテーター・川村晃司氏が語る。

「演説中に言葉に詰まるなど、明らかに政治家としての資質、体験が不足している橋下ベイビーが今回の選挙で大量に当選しました。意外と有権者には意識されていませんが、キャリアでいえば国政を3年4ヵ月預かった民主党の政治家のほうがずっと豊かなのです」

そして、政治評論家の浅川博忠氏はこう結論づける。

「今の維新は石原(慎太郎)、橋下(徹)両氏が選挙で勝つためにくっついた“にわか政党”にすぎないことを忘れてはいけません。今回の衆院選挙を経て、夏の参院選後にどのような陣容、政策を整えることができるのか? 維新を評価するのはそれを見届けてからです」

高い人気の裏に隠された維新の本当の姿は何なのか。それを見極めるためにも、厳しくウオッチし続ける必要がありそうだ。

(撮影/五十嵐和博)