オリックスバファローズでこのほど、契約保留選手名簿に記載してあるアルフレッド・フィガロが米ミルウォーキー・ブルワーズマイナー契約を結ぶというトラブルが起きた。

 あわや二重契約かと思われたが、ブルワーズ側が球団ホームページ上で「(フィガロは)正しくは、FAではなかった。彼の保有権を犯すつもりはない」と、謝罪を発表。同時に「バファローズが、フィガロを来季も保有する意志があればわれわれは引く」と、契約を白紙に戻すという方針を明らかにした。
 バファローズの横田昭作球団副本部長も、「向こうも非を認めているし、ブルワーズに対し、どうこうということもない。解決と受け取ってもらっていい」と、述べた。

 フィガロは現在、ドミニカ共和国のウィンターリーグに参加しており、身分を「フリーエージェント」と誤記されたことから今回の騒動に至った。

 日本人初のメジャーリーガーとして知られる村上雅則から、日米間での契約を巡るトラブルは少なくない。
 南海ホークス(現在の福岡ソフトバンクホークス)でプレーしていた村上はプロ2年目の1964年、サンフランシスコ・ジャイアンツ傘下の1Aフレズノに野球留学。そこでの活躍が認められジャイアンツとメジャー契約をしたのだが、これはホークス側に不備があったため。ホークスは、まさか村上がメジャーのスカウトの目に留まるとは、思ってもみなかった。

 中日ドラゴンズのファンの中には、ケビン・ミラーを巡るトラブルを覚えている方も少なくないだろう。
 ドラゴンズは2003年にフロリダ・マーリンズ(マイアミ・マーリンズ)のミラーと、契約した。だが、マーリンズがドラゴンズにミラーを譲渡するため、ウェーバー公示にかけたところ、突如ボストン・レッドソックスがミラーの獲得を表明した。
 結局、ミラーはレッドソックスに入団したのだが、レッドソックスの行為は、「日本の球団に譲渡する目的でウェーバーにかけた選手は獲得をしない」という日米の紳士協定を無視したものであった。

 紳士協定の違反を言えば、最近はメジャー球団によるわが国のアマチュア選手のスカウティングが思い出される。日米間には「互いのアマチュア選手にはノータッチ」という紳士協定があるが、今年もロサンゼルス・ドジャーステキサス・レンジャーズ、レッドソックスのスカウトが私立花巻東高等学校の投手、大谷翔平に接触していた。

 お隣の韓国では、今年2月、ボルティモア・オリオールズが、17歳の高校生キム・ソンミン投手とマイナー契約を結んだことが問題になった。
 韓国では、プロ球団がアマチュア選手と交渉できるのは、高校、大学ともに最高学年の選手のみに限られており、キムは対象外。韓国野球委員会はキムを無期限資格停止とし、オリオールズのスカウトに試合会場から立ち入り禁止の処分を科した。

 今回のフィガロの件は、結局は手違いが原因だったが、バファローズの中村潤国際グループ長によると、日米間での選手の移籍のルールを定めた「日米間選手契約に関する協定」で義務付けられている身分照会も、ブルワーズからバファローズに無かったそうだ。

 あってはならないことだが、今後もこのような契約を巡るトラブルが無いとは言い切れない。そこで提案だ。紳士協定など曖昧なものではなく、選手との契約を巡る国際的なルールを制定してみてはどうだろうか

 もちろん、各国にそれぞれの事情がある。習慣や制度も異なる。だが、異なる国同士が関わるからこそ、1つの、国際ルールが必要ではないのか。