駅の建物は立派な「高岡駅」だが…

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 富山県高岡市は、国宝指定の建造物を有する瑞龍寺や勝興寺、日本三大仏の高岡大仏など、豊富な観光資源を抱える都市である。ところが、その代表駅である高岡駅の周辺が、空き店舗だらけで衰退しているという話がネット上で話題になっていた。富山県第二の都市で、いったい何が起こっているのだろうか。【取材・文=宮原多可志】

【写真】新幹線が停まるのに…商店街が閑散としている「高岡駅」周辺の様子と大仏の姿

新高岡駅の開業が与えた影響

 高岡駅は1898(明治31)年に開業という歴史をもち、長らく北陸本線の代表的な駅として賑わっていた。夜行列車も発着し、高岡市出身の漫画家である藤子・F・不二雄の相棒・藤子不二雄Aの『まんが道』には、高岡駅から漫画家を目指す主人公2人が上京するシーンがたびたび描かれている。

駅の建物は立派な「高岡駅」だが…

 高度経済成長期を経て、地方には車社会が到来。平成以降は高岡市も他都市と同様に郊外が発展していき、中心市街地の賑わいは失われていったが、その決定打になったのは、皮肉にも2015(平成27)年の北陸新幹線の開通だったと思われる。高岡市内には北陸新幹線の駅は設けられたものの、高岡駅ではなく、郊外に新高岡駅が新設されたのである。

 新高岡駅で下車してみると、要塞のような巨大な駅舎に驚かされた。そして、郊外の広い土地を活かして開発が行われ、駅前には巨大な「イオンモール高岡」が整備された。駅を出ると目の前に「東横イン」もあるし、居酒屋やカフェもすぐ近くに並ぶ。ビジネスパーソンは、新高岡駅前に泊まればイオンで買い物ができるし、食事も済ませられるのだ。

 そのうえ、イオンモールがとにかく便利すぎる。「ユニクロ」や「H&M」も「スターバックス」もあるし、アニメショップの「アニメイト」まである。ゲームセンターも、富山県の物産館もある。地元民から観光客まで、幅広い層が欲するあらゆるものがそろう完璧なイオンモールといっていい。こんな便利なものができてしまっては、高岡駅前が衰退してしまうのは当然だろう。

新高岡駅から高岡駅へのアクセスが不便

 さて、新高岡駅から高岡駅は1駅だが、城端線というローカル線に乗ってアクセスする必要がある。新幹線の改札口を経て一度屋外に出ると、新幹線の高架とクロスするように城端線のホームが設けられている。ところが、この日は城端線がゲリラ豪雨のためにダイヤが乱れており、いつまで経っても列車が来ない。

 しかも、新高岡駅では城端線が途中の駅で折り返し運転をしているというアナウンスのみで、何分遅れてくるのかという具体的な情報がなかった。ホームでは、新幹線から乗り換えて高岡駅へ向かおうとする乗客が15人ほどいたが、駅員が誰もいない。しばらくすると、列車が来ないことにしびれを切らしたのか、ホームから出る人が続出した。

 みどりの窓口に行き、何分後に列車が来るのか聞いたところ、駅員もどれほどの時間遅れているのか、把握していないようだった。自然災害ゆえやむを得ないものの、新高岡駅から高岡駅へのアクセスはあまり考慮されていないように感じた。結局、いつまで経っても列車が来ないのでタクシーで移動したのだが、高岡駅前まで1300円もかかってしまった。なお、列車なら150円である。

新幹線開通後、百貨店が閉店

 北陸新幹線の開業により、高岡駅には特急が停車しなくなり、北陸本線も第三セクターの「あいの風とやま鉄道」に移管された。駅は新幹線開通に合わせて、ガラス張りの駅舎に改修された。筆者は北陸新幹線の開業前にも、開業後にも取材で高岡駅を訪れたことがあり、今回は約4年ぶりの訪問なのだが、想像以上の寂れぶりに衝撃を受けた。

 駅前にはアーケードの商店街が形成されているが、ことごとくシャッターが下りているのである。地元の高校の生徒が行き交っているが、それ以外は観光客も地元民もまばらで、人がほぼ歩いていないのだ。日曜日の夕方近くという曜日と時間帯を考慮しても、あまりに閑散としている。

 商店街を進んだ先に、かつては百貨店の「大和」があった。ところが、新幹線の開通から約4年後、2019(令和元)年に閉店してしまった。巨大な建物は現在、「富山大和高岡サテライトショップ」のほか様々なテナントが入って再活用されているが、建物の老朽化も著しく、何より館内は薄暗くて活気がない。

 そして、大和と共存共栄の関係にあったであろう「御旅屋通り」というアーケード商店街にいたっては、先ほどの駅前の商店街以上の寂れぶりで、撮影中に1人もすれ違わなかった。シャッターは下り、営業しているのかしていないのか、わからない店が多い。何より、大和の建物同様に老朽化した商店が多く見られる。

観光資源は豊富だが……

 高岡には、国宝建築が集中している。前出の通り、国宝に指定されている建物を有する瑞龍寺や勝興寺があるし、日本三大仏(これも3つ目を何にするのかで諸説あるが)の高岡大仏もある。高岡大仏は大和だった建物の近くにあり、市街地にある大仏として珍しい存在だ。

 瑞龍寺の近くには、国の史跡に指定されている加賀藩2代藩主・前田利長の墓所があり、大名個人の墓としては国内でも最大級の規模とされている。また、かつての城跡を整備した高岡古城公園や、伝統的建造物群保存地区に選定されている土蔵造りの街並みなど、歴史好きにはたまらない名所がそろっている。しかし、それらの多くは、駅から離れた場所にあるものが多い。

 観光客は、新高岡駅か富山駅で下車し、レンタカーを借りて向かうパターンが多いと思われる。これでは、高岡駅前はスルーされてしまっても仕方がない。高岡駅周辺には特急が停車していた頃に開業したビジネスホテルが多くあるのだが、この状況では閉店するホテルが出てくるのも時間の問題かもしれないと思った。

新幹線のルートから外れる悲劇

 新幹線の開通は地方にとって大きなチャンスをもたらす。しかし、富山駅や金沢駅のように、それまでの中心駅に新幹線が来るのであれば問題ないのだが、問題は高岡の事例のように、何もない郊外に駅ができてしまうパターンである。これは、逆に新幹線が中心市街地の活気を吸い上げるパターンになりかねない。

 それまでは特急が停車する駅だったのに、新幹線が開通するとそれらが廃止され、ローカル駅の一つになってしまった事例は多数ある。平成以降の事例では、北陸新幹線のルートから外れた小諸駅や鯖江駅、九州新幹線の阿久根駅、東北新幹線の三沢駅など、全国に同じような事例がいくつも見られる。

 新幹線はどこを通ってもいいというわけではない。巨大プロジェクトだけに、ルートの選定はその後の都市計画に大きな影響を与える。北陸新幹線の延伸区間にあたる京都府内の駅は、従来の京都駅ではなく、桂川駅周辺に設置されることになった。東海道新幹線と北陸新幹線、それぞれの別の場所に駅ができるという珍事であるが、果たしてどうなるのだろうか。

ライター・宮原多可志

デイリー新潮編集部