北中米W杯はスペインの優勝で幕を閉じ、「W杯優勝」を掲げ挑んだ森保ジャパンは、ベスト32で敗退した。

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 元日本代表でサッカー解説者の城彰二氏は、世界の強豪国の戦いぶりをどのように見ていたのか。W杯を通じて感じた日本と強豪国の“圧倒的な差”とは、どんな部分にあるのか。

「日本が掲げたW杯優勝は、どう見ても現実的じゃなかった」と厳しく語った城氏の真意とは――。


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守備が整備され、組織力で圧倒したスペイン

――北中米W杯は、スペインの優勝でした。

城彰二さん(以下、城) 強かったですね。以前のスペインは無敵艦隊と言われて攻撃力に長けているチームでした。でも、今回は守備が整備されて、非常に機能していましたし、攻撃はパスワークから徐々にギアを上げて行くスタイルで、見ていておもしろかった。

 ヤマルはいるけど、他のチームのようにずば抜けたストライカーがいるわけではなく、どこからでも点を取れる。以前よりも攻守のバランスが良く、より強さを感じました。

 準決勝で圧倒的な個のフランスを封じたことで、その組織力が改めてクローズアップされましたが、その質の高さ、強度は他国や日本とは次元が違いました。

アルゼンチンは、最後まで諦めない粘り強さを見せた

――アルゼンチンは、よく耐えていましたが、退場者が出て万事休すでした。

城 その前からスペインにボールを握られて、いつ点を取られてもおかしくない状況でしたが、そこで一人いなくなって攻め手を失ってしまった。

 でも、決勝までカーボベルデやエジプト、イングランドとの苦しい試合を、アルゼンチンらしい最後まで諦めない粘り強さで勝ち抜いてきましたし、スペイン戦も最後までよくファイトしたと思います。

 メッシも前回大会は要所要所しか動かなかったけど、今大会はただ点を取るだけじゃなく、ボールを引き出して起点になったり、動きに変化が見られた。チームとして、前回大会で優勝した時よりもレベルが上がっていたと思います。

――メッシは、今大会が最後ということが囁かれています。

城 今回、8得点を取っているし、動きにキレがありましたからね。4年後もフル出場でなければいけそうじゃないですか(笑)。

 実際、アルジェリア戦は途中交代し、ヨルダン戦は途中出場したり、全試合に出たわけじゃない。どんな試合でもどんな状況でもメッシに頼るのではなく、ここぞっていう試合に出ていました。

 メッシはペレ、マラドーナと匹敵するレベルの選手で、彼ほどのスーパースターはなかなか出てこない。次大会の開催国のひとつは、メッシがバルサでキャリアを重ねたスぺインなので、プレーする姿を見てみたいですね。

印象に残ったチーム、残念なチームは…

――城さんが今大会で印象残ったチームは、どこになりますか。

城 スペインとフランスですね。スペインは優勝しましたし、フランスは圧倒的な個を前面に押し出しつつ、攻守のバランスが良いので個人的には優勝すると思っていました。

 その2チーム以外では、カーボベルデ、モロッコ、ノルウェーですね。カーボベルデは守備力が軸でしたが、アルゼンチン戦では質の高い攻撃を見せて、相手を追い込みました。参加国が増えると、こういうおもしろいチームが見られるチャンスがあります。

 モロッコも強度の高い守備で強かったし、ノルウェーは、ハーランドが体調不良でなければイングランドに勝てたかもしれない。決してうまいチームじゃないけど、ハーランドを軸にした戦い方を徹底して試合に臨んでいるので、ブレない強さみたいなのは感じました。

――逆に残念なチームはありましたか。

城 ブラジルでしょう。日本に勝った時は、さすがだなって思いましたが、ノルウェー戦は何もできなかった。2002年の日韓大会で優勝した黄金期から低迷している感じですし、選手もヴィニシウスはいるけど、スペシャルではなく、かつての強いブラジルのイメージではなくなってきている。世界もそれほどブラジルに怖さを感じなくなっているんじゃないかなと思いますね。

今大会で活躍した各国のエースストライカー

――今大会は、エースストライカーが活躍しました。

城 得点王のキリアン・エムバぺは、他の選手と次元が違いました。オフザボールの時からボールをもらうタイミングを計算し、彼にしかないスピードで動くので、普通のDFの選手じゃ対応できない。シュートもうまいし、その精度がさらに磨かれると、もっととんでもない選手になります。

 あと、モロッコのソフィアン・ラヒミも体をうまく使いながらキープできるし、自分でもいけるタイプで良い選手でした。

 今大会、活躍したアーリング・ハーランド、ジェード・べリンガム、ハリー・ケイン、ウスマン・デンべレらは、昔のようなザ・ストライカーというよりも起点になり、オフザボールの動きがうまく、守備も貢献するなど、オールラウンドに何でもできるタイプ。こういうFWが今の世界のトレンドになっていますね。

日本代表には細かい力がすべて足りない

――W杯で他国の試合を見た今、日本代表の力をどう捉えていますか。

城 これまでの代表よりはレベルが高かったし、完成度が高かった。大会前は楽しみだったけど、見事に打ち砕かれた感じでした。ベスト4の試合を見ていると、日本はパススピード、コントロールの技術、1対1で抜く力、守る力、こうした細かい力がすべて足りない。

 世界は個の技術やフィジカルのレベルが高い上にハイプレッシャーのなかでもミスせずにプレーできる。日本は世界との個の差を認識しつつ、グループで打開しようとしてきたけど、今回のW杯でその限界が来たなという感じです。

――ブラジル戦では、グループで戦う日本の限界が見えた感がありました。

城 後半、ブラジルが戦術を変えて、サイドからクロスをドンドン入れてセカンドボールを拾って押し込んできました。

 その劣勢下で町野(修斗)が出て来た時、「えっ?」と思ったけど、ただクリアして守っての状況では、三笘(薫)のようにひとりで突破できる選手じゃない限り、誰が出ても変わらなかったと思います。

 カーボベルデは、アルゼンチン相手に守って、凌いでいたけど、そこで繋いだら危ないんじゃないかというところでも繋いで、自分たちの時間を作り、得点に繋げた。日本はそれが出来なかった。それは個の力、質がまだ足りないからで、そこを上げていかないと世界の強豪国とは戦えないでしょう。

世界で戦うために、経験と智略に富んだ外国人監督が理想

――森保一監督の8年間は、どう評価しますか。

城 カタールW杯でドイツ、スペインを破って自信を得ただろうし、そこからの積み重ねがあったから今大会の期待感も膨らんだ。でも、ベスト32で負けて、新しい景色は見られなかった。

 のらりくらりやっていくなかでブラジルやイングランドに勝つなど刺激がポンポンと入って過ごしてきただけで、W杯を勝ちに行けるだけの力はついていなかったということでしょう。

 スペインやフランスを見ると日本が掲げたW杯優勝は、どう見ても現実的じゃなかったですし、その目標にふさわしいチームではなかったと思います。

――森保監督は、アジアカップまでの任期、それ以降の代表監督は大岩剛ら日本人の名前が挙がっています。

城 森保さんは、人がいいし、チームマネジメントという部分では長けていた。でも、ブラジル戦で露見したように戦術家ではない。その局面でなにかを変えられる監督じゃないと今後、世界で戦い、勝っていくのは難しいでしょう。

 本来であれば経験と智略に富んだ外国人監督が理想です。代表選手の多くは海外組なので外国人監督へのアレルギーはない。それでも日本人監督でいくなら戦術家の外国人コーチを入れるべきでしょう。

 勝負がかかった時、どんな手を打つべきか。どう修正していくべきか。経験からその決断を下せるコーチが必要だと思います。

「これからのサッカーの主流派」に日本は勝てるのか?

――今回のW杯で、これからの世界のサッカーのトレンドが見えましたか。

城 スペインのように、ボールを握りながら相手の攻撃を封じるスタイルがひとつの主流になっていくんじゃないかなと思います。

  ボールを握る、主導権を握るのはもちろん個人の質や高い戦術眼、強度が必要だけど、それができれば攻められないし、失点しない。

 ここ数年はフィジカルとパワー、スピードが主だったけど、それもありつつ、10番がいてボールを保持して、という以前の流れにまた戻って行く感じがします。

――その主流派であるスペインに日本は勝てるのでしょうか。

城 今は勝てないでしょう。スペインの強さを見せつけられて、日本はぜんぜんだなって逆に衝撃を受けました。

 スペインの選手は、前田(大然)のスピードに技術があるのが標準レベルです。しかもスペインは38試合無敗で、チームとしても進化してきた。

 日本も成長したけど、世界はさらにもっと先に進んでいる。スペインのレベルを見せつけられた今、たまに強豪国に勝てたからいいとか、そんなレベルで満足していたら、とてもじゃないけど優勝は無理だと思います。

取材・文=佐藤俊

(城 彰二,佐藤 俊)