「送別会の幹事、お願いできる?」に「それって業務ですか?」と返す若手…上司も逃げ腰で〈年収500万円〉35歳中堅社員に丸投げ、「報われない飲み会」に疲労困憊
かつては若手社員が率先して引き受けていた社内イベントの幹事業務ですが、近年は「タイパ」を重視する若手が難色を示すケースが増えています。一方で、ハラスメントを恐れる管理職は若手に強く指導できず、そのしわ寄せは中堅社員へと向かいます。通常業務に追われながら、店探しや集金などの「見えない労働」に奔走する中堅社員の苦悩と、令和における職場の飲み会事情を紹介します。
若手「それって業務ですか?」ハラスメントを恐れる上司
「今年の送別会の幹事、新人の子たちに任せてみようか。君から声かけておいてよ」
課長からの指示に対応するのは、都内のメーカーで営業として働くAさん(35歳)です。入社13年目で年収は約500万円。社内ではちょうど上司と若手の間に立つポジションということもあり、日頃から双方の調整役に回ることが多い立場にあります。
いわれた通り、入社2年目の後輩に「今年の送別会の幹事、お願いできるかな?」と声をかけました。すると、後輩からは思いがけない言葉が返ってきました。
「その幹事の仕事って、業務時間内にやっていいんですか? もし業務外ならプライベートの時間を削りたくないので、他の人に振ってほしいです」
悪びれる様子もなく淡々と答える後輩に、Aさんは言葉を失いました。自分が若手のころは、店の予約から当日の仕切りまで、先輩からの頼みを断る選択肢はありませんでした。しかし今の時代、無理に押しつければパワハラになりかねません。
困り果てたAさんが課長に報告すると、課長は困惑した表情を浮かべました。
「まあ、今の子たちに無理させて問題になっても困るしな。悪いけどA君、今回も君のほうでうまくやっといてくれ」
結局、ハラスメントを恐れる上司の逃げ腰な態度のせいで、幹事の仕事を丸投げされたAさん。
定時で帰る若手、店探しに奔走する中堅社員
Aさんは、ただでさえ忙しい通常業務の合間を縫って、幹事の仕事もさばいています。参加者のアレルギーの有無を確認し、予算に合う居酒屋を複数のグルメサイトから比較検討。出欠確認の案内を送り、返信のない人には個別に声をかけて回ります。
18時。後輩たちは「お疲れ様でした」と定時で帰宅していきます。その後ろ姿を見送りながら、Aさんは残って送別用の色紙を手配し、花束の予約の電話をかけていました。
「後輩の指導や自分のノルマだけでも手一杯なのに、なんで俺がこんなことまでやっているんだろう……。しかもこれだけ準備を頑張っても、ボーナスの査定には1円も反映されない。完全なタダ働きだ……」
そして送別会当日も、Aさんはゆっくり食事をする暇などありませんでした。ドリンクの注文を取りまとめ、空いたグラスがあればすかさず店員を呼びます。一方で若手たちは、すっかりお客さん気分で料理を楽しみ、同期と談笑する始末。
事前に集めた会費は、役職者が少し多めに出すものの、中堅社員のAさんは5,000円、若手は3,000円という昔ながらの傾斜配分でした。しかし昨今の初任給引き上げブームにより、新卒の給料は底上げされ、手取りにすると入社13年目のAさんと数万円しか変わりません。
「手取りはたいして変わらないのに、なんで俺のほうが2,000円も多く払って、こんな目にあわないといけないんだ……」
気前よく全額を出してくれるわけでもない上司と、お客様扱いの若手。その間で一人働き続けるAさんは、疲労感に襲われていました。
誰もやりたがらない面倒な調整ごとを押しつけられ、時間も気力もすり減らすだけの飲み会。中堅社員が割を食う構造に、Aさんはやり切れなさを感じています。
若手社員にとっての「会社の飲み会」の認識
Aさんの事例のように、職場の飲み会に対する世代間の意識のズレは、現代の企業が抱える課題となっています。若手社員の会社イベントに関する関心度についてのデータを見ると、若手社員の複雑な心理が浮かび上がってきます。
株式会社ジェイックが発表した「若手正社員に『職場の親睦を深める機会』について調査」によると、「仕事の相談や連携に加え、雑談もできる良好な関係がいい」と回答した若手は78.8%にのぼりました。さらに、親睦を深める機会として「お酒を飲みながら交流する『夜の飲み会』」に魅力を感じる層も48.2%(※費用は会社負担の場合)と最も多く、決して若手は交流自体を完全に否定しているわけではありません。また、株式会社マイナビの調査でも、20代の約6割が会社の飲み会に「参加している」と回答しており、実は30代の参加率と同水準であることがわかっています。
しかし、彼らが敬遠しているのは「自腹を切る出費」や「業務時間外の無給の拘束」です。費用が会社負担であれば参加したい若手と、ハラスメント規制が厳しくなったことで若手への接し方に過剰なまでに慎重になっている管理職。
結果として、文句をいわずに動いてくれる中間層に負担が集中するという現象が起きています。職場の親睦を深めるためのイベントが、かえって一部の社員に不満を蓄積させている現状は、これからの社内コミュニケーションのあり方を見直す時期にあることを示しているといえるでしょう。
[参考資料]
株式会社マイナビ「若手社員の“飲み会離れ”は本当か?「人間関係」による離職を防げ! 〜節度あるインフォーマルなコミュニケーションの可能性について〜」
株式会社ジェイック「若手正社員に「職場の親睦を深める機会」について調査」
