歌舞伎俳優・市川染五郎さん「“はたち”じゃなくなるのが楽しみ」。気分転換で向き合うと楽しい、意外な家事
まもなく21歳を迎える八代目・市川染五郎さん。歌舞伎界のプリンスとして注目を集める一方で、現代劇ドラマにも挑戦するなど、表現の幅を着実に広げています。この春に控える舞台「ハムレット」への思いとともに、素顔の暮らしぶりについても語ってくれました。

市川染五郎さんインタビュー。「はたちじゃなくなるのが、楽しみ」
舞台上で見せる凛とした佇まいと、落ち着いた語り口が印象的な市川染五郎さん。その姿とは裏腹に、昨年、20歳を迎えたばかりという事実に、あらためて驚かされます。
「昨年の3月で、20歳になりました。ただ誕生日といっても、ほとんど舞台があるので特別なことはしないのですが、昨年は大好きなジャズを聴きに行って、家族で乾杯しました。20歳は大きな節目だとよく言われますけど、僕自身は『なにも変わらないだろうな』と思っていたんです。実際、大きな変化はなく、違いといえば、お酒を飲めるようになったことくらい。ただ、20歳と21歳ではちょっと違う気がしていて。『はたち』は唯一無二だけど、21歳になるとその特別感がなくなる気がするんですよね。その違いを自分がどう感じるのか、今から楽しみです」(市川染五郎さん、以下同)
暮らしのなかで見直したいことは?

作品と向き合う日々の一方で、日常ではどんなことを意識しているのでしょう。この春、暮らしのなかで見直したいことを聞くと、「本棚の整理」という答えが返ってきました。
「歌舞伎の資料や台本が多くて、作品に出るたびにどんどん増えていくんです。もう本棚に入りきらなくなっているので、棚を増やして、必要なときにすぐ出せるようにしたいですね。過去の役を、時間が経ってからまた演じることもあるので、そのときに迷わず取り出せる状態にしておきたくて」
もうひとつ、力を入れたいのが趣味のフィギュアのディスプレー。
「フィギュアを集めるのが好きで、ガラスのディスプレー棚に並べているんですけど、そこもあふれてきてしまって。飾っているというより押し込めている状態になっているので、きちんと飾れるようにしたいですね。“いちばん大事なフィギュア”は選べませんが、『バットマン』に出てくるジョーカーが好きなので、ジョーカーのフィギュアが多くなっていますね」
気分転換に料理をすることも
オフの時間には、気分転換にキッチンに立つこともあるそう。
「それほどひんぱんに料理するわけではありませんが、いざつくるとなったら、手の込んだものをつくるのも好きです。トリッパのトマト煮込みをつくろうと、大きなハチノスを買ってきて下処理から始めたことも。でも圧力鍋で煮込んでいるうちに、すごく小さくなって、結局ひとり分くらいしかできなくて(笑)。でも、1日時間があるときに、そうやってじっくり料理をするのは楽しいですね」
シェイクスピア劇への出演は「ついにそのときが来たな、と」

料理でも、作品でも、時間をかけて形にしていくプロセスが好きだと語る染五郎さんが、この春挑むのはシェイクスピアの四大悲劇のひとつ、『ハムレット』です。祖父・松本白鸚さん、父・松本幸四郎さんも演じてきた役だけに、作品への思いも自然と深まっているといいます。
「ハムレットは祖父からの縁ですが、シェイクスピア劇そのものは“ひいひいおじいさん”の代から演じているので、いつかは自分も通る道だろうと思っていました。だから今回お話をいただいたときも、ついにそのときが来たな、と」
演出を手がけるのは、デヴィッド・ルヴォーさん。海外の演出家とタッグを組むのは初めてです。
「ルヴォーさんの作品は拝見していますが、ほかにはない世界観を持った方。今回のハムレットも、今までにないものになるんじゃないかと思っています。ポスターのビジュアルを見ても、従来のハムレットのイメージとは違いますよね。皆さんにも『いつもと違うハムレットになるんだな』と期待していただけるんじゃないかと思います」
「歌舞伎役者だから」と考えすぎないように
古典でありながら、今に至るまで長く愛されてきたという点では、シェイクスピアと歌舞伎には通じるものがありますが、演じる際にそれを強く意識することはないそう。
「歌舞伎でも、それ以外の作品でも、ひとつの作品をつくるという意味では同じ。『自分は歌舞伎役者だから』と考えすぎるのは、一緒につくる方々にも失礼な気がして。今は共演者の皆さんといい作品をつくって、お客様に届けることだけを考えたいです。初めてご一緒させていただく方ばかりなので、お互いがどんなものを持ち合って、どんな化学反応が生まれるのかも楽しみですね」
ESSE読者に向けての“観劇のヒント”は?
最後に、「歌舞伎に興味はあるものの、なにから観ればいいのかわからない」。そんな人に向けて、観劇のヒントをたずねてみました。
「最近ではマンガやゲームが原作の歌舞伎も増えています。よく『歌舞伎役者がやれば、なにをやっても歌舞伎になる』と言われますが、そうした新作にも歌舞伎の要素はきっちり入っているので、そこから“歌舞伎らしさ”を感じていただければ。歌舞伎にもいろんなジャンルがあるので、そこを入り口にしていろんな作品を観ていただき、ご自分の好きな歌舞伎を見つけてもらえたらうれしいですね」
