セレブ支持で再評価 ヴィンテージデニムはなぜ「新しいラグジュアリー」になったのか

記事のポイント
ロゴ付きジーンズが主流だった時代から、個性やストーリーを重視するヴィンテージデニム人気へとシフトしている。
セレブ着用やSNSでの拡散を通じて、ヴィンテージデニム販売業者が影響力を持ち、カスタム需要も拡大している。
Z世代はサステナビリティや希少性を重視し、厳選されたヴィンテージ品に価値を見出す新しい消費スタイルを形成している。
ロゴ付きジーンズが主流だった時代から、個性やストーリーを重視するヴィンテージデニム人気へとシフトしている。
セレブ着用やSNSでの拡散を通じて、ヴィンテージデニム販売業者が影響力を持ち、カスタム需要も拡大している。
Z世代はサステナビリティや希少性を重視し、厳選されたヴィンテージ品に価値を見出す新しい消費スタイルを形成している。
2000年代初頭において、ラグジュアリーデニムはバックポケットに縫い込まれたロゴによって定義されていた。セブン・フォー・オール・マンカインド(Seven for all Mankind)、トゥルー・レリジョン(True Religion)といったブランドが代表的だろう。ピンとくる人もいれば、まさにその時代を生きてきた人もいるだろう。
「イット」ガールたち、インフルエンサーたち、そしてスタイリストたちは皆、単一のブランドのジーンズではなく、ヴィンテージデニムを扱う業者のジーンズを身に着けていることが多い。そうした小売業者のなかには、自らカルト的な人気を築いているところもある。
「ここ数年で、より多くの人がリーバイス(Levi’s)をリワークして再販するようになった。…これは素晴らしいビジネスだ。まさに急上昇中で、ウィリー・ウォンカの黄金のチケットのようなものだと誓って言える。私がこれを始めたときは、こんな感じではなかった」と語るのは、デニム・バイ・オーリー(Denim By Orlee)の創業者であるオーリー・ワイスバーグ氏だ。
トランクから始まった人気ブランド
ワイスバーグ氏はヴィンテージジーンズ、おもにリーバイスだがそれだけではないジーンズを、デニム・バイ・オーリー(Denim by Orlee)という名のeコマースサイトを通じて販売している。同サイトは2018年に立ち上げられたが、それ以前の3年間、ワイスバーグは自動車のトランクからジーンズを販売しており、女性たちはカフェのトイレで試着をしていたと彼女は語った。彼女のデニムは1本200ドル〜300ドル(約2万8800円〜4万3200円)で販売されており、ショートパンツは140ドル〜188ドル(約2万1600円〜2万7070円)の価格帯である。
ワイスバーグ氏にはインスタグラムで3万2000人のフォロワーがおり、彼女が調達したヴィンテージデニムを着用する影響力のある女性たちの姿を定期的に見ることができる。たとえば、ヘイリー・ビーバー、カイリー・ジェンナー、コートニー・カーダシアン、そしてマチルダ・ジャーフなどである。彼女はPRやマーケティングに一切費用をかけたことはなく、ビーバーが彼女のデニムを着用したのはスタイリストのエミリー・ラフィットのおかげだと考えているが、どうやってそれが起きたのか自分でも確信はないと語っている。
ダッシュ・ソーシャル(Dash Social)のリスニングツールによれば、リーバイスの言及数は2024年5月から2025年2月にかけて安定していたが、2025年2月から4月にかけて3倍に増加し、インスタグラム、X(旧Twitter)、YouTube全体で5万件以上に達した。これは、ヴィンテージのリーバイスに特化したものではなく、2024年3月に発表されたビヨンセ(Beyoncé)のアルバム『カウボーイ・カーター(Cowboy Carter)』に収録された楽曲「Levii’s Jeans」などの文化的要因も考慮されるべきである。
それでも、ワイスバーグ氏にとってはビジネスがその実力を物語っている。ワイスバーグ氏は、追加の仕立てや装飾を施すことなく、ヴィンテージデニムをありのままに販売している。「私はずっと、これが生まれたときのままの姿、という考え方が好きだった」と彼女は言う。「顧客は購入後にデニムに対して好きなことをする権利があるが、私は彼女たちに、それをそのままの姿で手にする機会を与えたい。そこにある背景――ストーリーが好きなのだ」と語った。
ほかの人気のあるヴィンテージ販売業者たちは異なるアプローチを取っており、これはビーバーのような恵まれた体型ではない人にとっては朗報かもしれない。
「ぴったり」の提供で支持を得るウィズ・ラブ・レニー
ウィズ・ラブ・レニー(With love, lenny.)は、インスタグラムで25万3000人のフォロワーを持ち、ロサンゼルスのスタジオシティに店舗を構えている。創業者であるリンジー・デヴィッドソン・ペイリー氏は、顧客が自分にぴったりのヴィンテージデニムを選べるよう、1対1の予約制で対応している。彼女はその後、顧客の体型に正確にフィットするよう、カスタム仕立てを施している。デヴィッドソン・ペイリー氏は、このサービス全体を月に1度他都市へ持ち運び、出張対応もしている。最近では5日間にわたるニューヨークでのポップアップを終えたばかりだ。ジーンズは425ドル(約6万1200円)、ショートパンツは365ドル(約5万2600円)である。たとえば刺繍を追加するなどのカスタマイズによって価格は上がる。
レニーはコロナ禍におけるレイオフをきっかけに生まれたブランドだ。現在、創業から4年を経て、デヴィッドソン・ペイリー氏はヴィンテージデニムのフィットに関する定番的な専門家として地位を築いている。彼女はヴィンテージデニムの循環性や持続可能性、すなわち「自分で何かを生み出すのではなく、誰かのものだったものを再構築して新しいものにする」ことに価値を見出していると語る。
当初、ヴィンテージデニムを販売し始めた頃は、フィットする1本を見つけられなかった顧客が「あとで直すつもり」と頻繁に言っていたという。そこで、ヴィンテージジーンズとカスタム仕立てという2つのサービスを融合させるアイデアが生まれた。
TikTokで150万フォロワーを持つインフルエンサーのティンクスが「お尻がこれまでで一番、そしてたぶんこれからも一番よく見える」と語る動画は、ビジネスにとって大きな追い風となったとデヴィッドソン・ペイリー氏は語る。フォロワー数では劣るが、インスタグラムで5万2000人のフォロワーを持つブリタニー・K・サンソーネも、多くのフォロワーをレニーへと導いている。彼女のプロフィールには「ヴィンテージリーバイス中毒」と記されている。
クワイエット・ラグジュアリーの影響
なぜ今、ヴィンテージデニムがこれほど人気なのかと尋ねられたとき、デヴィッドソン・ペイリー氏はクワイエット・ラグジュアリーのトレンドを理由に挙げた。「ロゴ・マニア、たとえばバレンシアガ(Balenciaga)やシャネル(Chanel)が好きな人たちは常に存在する。しかし、ファッションに敏感な女性たちの大多数は、控えめで洗練されたルックを求めている。そしてヴィンテージのリーバイスは元祖である。それは信頼できる存在であり、決して消えない。ヴィンテージという個性、完璧なフィット感、そしてクールさ――それはまさに天国でのマッチングである」と彼女は語った。
アリ・グレース氏は、大学を卒業した2018年に自身のヴィンテージデニムブランド「アリグレース(aligrace)」を立ち上げた。彼女はshopaligrace.comというeコマースサイトを通じて、また卸売チャネルを通じても販売している。アリグレースは2023年5月にリボルブ(Revolve)で、同年10月にFWRDでローンチした。2025年3月には、アリグレースがアンソロポロジー(Anthropologie)でも販売を開始した。
デヴィッドソン・ペイリー氏やワイスバーグ氏のように、グレース氏もインフルエンサーが自身のビジネスに与える影響を実感している。実際、インスタグラムのフォロワー13万4000人を持つケルシー・ディプリマ氏がグレース氏のビジネスを紹介した投稿が、現在アリグレースが取引しているリボルブのバイヤーの目に留まったのである。
ヴィンテージの価値を現代のフィット感で届ける
デヴィッドソン・ペイリー氏のウィズ・ラブ・レニーと同様、アリグレースでもヴィンテージデニムをカスタマイズしているが、ビジネスモデルは異なる。たとえば、アリグレースでもっとも人気のあるアイテムの一つは、カスタマイズされたバレルジーンズ(398ドル/約5万7300円)であり、これは2本のヴィンテージリーバイスを解体して再構築して作られている。もうひとつのアリグレースのシグネチャーアイテムは、「アリッサジーンズ(Allysa jean)」で、傾いたヒップポケットが特徴だ(価格は378ドル/約5万4400円)。
「ヴィンテージの美しさとは、カスタマイズ前であっても本質的な価値があるという点にある」とグレースは語った。縫製スタッフと仕事を始める前、彼女は何時間もかけて、たまたま顧客のサイズともっともうまく合致するヴィンテージジーンズを探していたという。現在ではそれは物流的に不可能だが、カスタマイズされたジーンズは今も注文可能であり、アリグレースのウェブサイトでは顧客が自分で採寸する方法をガイドしている。卸売で販売されているジーンズは、現代の一般的なサイズ規格に合わせて再構築されている。
「語れる服」が新しいラグジュアリーに
かつては、買い物客が地元のグッドウィル(Goodwill)などでヴィンテージデニムを自力で見つけることができたとグレースは語る。しかし、需要の急増によって今ではそうではなくなったという。「今では、店頭で売られているのはほとんどが現代のデニム。あの紙のタグがついた、アメリカ製の、20〜30年前の本物のヴィンテージリーバイスは、スリフトショップでは本当に見つけづらい。一方で、卸業者は本物のヴィンテージジーンズをパレット単位で持っていて、私が探している505や501のスタイルを揃えている」と彼女は語る。ただし彼女は、リーバイスの全シリーズから仕入れており、仕入れたジーンズは、自身のブランドで現在手がけている別の製品にリパーパス(再利用)されることもある。
彼女のビジネスが成り立つのは、顧客にユニークな商品を提供すると同時に、それを厳選してあげるからであるとグレース氏は語る。「Z世代はファストファッションを超えている。彼らは自分が着ているものに誇りを持っている」と彼女は言う。「私にとって、ヴィンテージを探すというハントそのものがこの仕事で大好きな部分。でも、時間がない人のために、私のウェブサイトではすぐに買えるように用意してある」。
これらのアイテムの持つ歴史もまた、魅力のひとつだ。「すごくクールなのは、たとえばこのジーンズはスーパーモデルが履いていたかもしれないし、農家や金属加工業者、画家が履いていたかもしれないということ。もしかすると有名人のパンツだったかもしれない……パリのレシートがポケットから出てきたこともあるし、70年代の映画のチケットや古いお金を見つけたこともある。すごくクールだよね?」とグレース氏は語った。
[原文:How vintage denim became the new luxury]
Sara Spruch-Feiner(翻訳・編集:戸田美子)
Image: Denim By Orlee/aligrace/With love, lenny.
