(写真:Luce/PIXTA)

結婚相談所の経営者として婚活現場の第一線に立つ筆者が、急激に変わっている日本の婚活事情について解説する本連載。今回は、東大、慶応大といった高学歴、高年収の40代女性が、婚活で苦戦している事例からその理由を探ります。40代女性でも年齢をハンデとせずに結婚できる人との違いはなんでしょうか。

高望みはしていないのに次々断られる

東京大学を卒業し、非常勤の麻酔科医として働く女性・美咲さん(仮名)。40代で年収は1500万円。30代後半から結婚相談所に入会し婚活を始めましたが成婚に至らず、当相談所で4軒目です。趣味は旅行で、国内と海外、毎月交互にいっています。

向上心が高く、語学やスポーツ、楽器など習いごとも大好き。 結婚相手の条件は「40代で大卒以上、年収700万円以上、バツイチでも構わない」。それほど高望みしているわけではありません。しかも、美咲さんのプロフィールの「年収1500万円」はアピール力が強いので、お見合いは次々に成立します。

しかしそこから先に進まない。「1回きりで終わり」か、うまくいっても「数回会って終わり」というパターンばかりで苦戦しています。 まず、プロフィール用の写真撮影から苦労しました。

なかなか笑わないので、カメラマンが「笑ってください」と声をかけると、「私、笑えないんですよ」と言う。カメラマンに頼んでなんとか微笑んで見えるような写真を撮ってもらいました。

お見合いの服装にしても、カジュアルな服を着ていってしまいます。自分で選んだものに注文を付けられることをひどく嫌がり、自分を見直すことがないのです。

婚活で人気のあるパステルカラーのワンピースをおすすめすると、「なぜいつもの服ではダメなんですか。私は自分がいいと思った服を着たいです」と拒否します。

待ち合わせの場所での謎なこだわり

お見合いの待ち合わせ場所では、相手が目の前にいても絶対に自分からは声をかけません。「待っている男性に気づいたら、声をかけてくださいね」とアドバイスしても、「男性から声をかけるべきでしょう。なぜ女の私から声をかけなければならないんですか」と反論する。プライドが高いのです。

少々気難しいところがある美咲さんですが、結婚願望は人一倍強い。周りの友人は結婚しているし、妹も結婚している。結婚している同世代と比べて劣等感を持っているようです。

また、職場で子育て中の同僚が早く帰り、そのしわ寄せを独身の自分が受けることにも不満で、「独身は割が合わない」とも言います。 そんなとき、書店でたまたま私の著書を見かけたのでパラパラ眺めて、「これくらいなら私も結婚できそうだな」と思ったそうです。終始「私は東大卒の優秀な医師。選ぶ立場であって、選ばれる立場ではない」という態度。

20代から「先生、先生」と言われ続けてきたことも影響しているのでしょうか。 カウンセリングでは、「あの男性は頭が良くないです。話す内容がくだらない」「こっちの男性は要領が悪いから年収が低いんだと思います」などと相手を見下してばかり。

「でも、その男性と4回もお会いしましたよね。それはどういうつもりで会っているのですか」と尋ねると、「一応、キープしてるだけです」と美咲さん。高年収の割に「デート代、私が100円多く払ったんですよ」と意外とお金にも細かいところもあります。

「自分より年収は低くていい」と言いながら

美咲さんを含め、結婚相談所に入会している40歳以上の女性の年収は、日本人の平均年収よりかなり高い。そういった女性の多くは「自分より年収は低くていいので、『子どもはいらない』という年下の男性がいい」と言うのですが、それでいて職場の同世代男性や同僚女性の夫とお見合い相手を比較しがち。

「自分より年収は低くていい」と言いつつ、周りの2000万円を稼いでいる男性たちと社会的地位や身なり、生活レベルを比べてはお見合い相手に不満を抱き、交際に進まないというケースがよくあります。 一方で、希望している20代、30代の男性は40代女性をなかなか求めないという現実も。そこでミスマッチが起き、婚活は難航します。

美咲さんには「態度を改めてお相手に歩み寄る姿勢を見せない限り、お見合いから先に進めませんよ」と何度も伝えていますが聞き入れない。もう10人以上、交際不成立が続いています。

慶応大学卒の40代公認会計士の春菜さん(仮名)も苦戦中。プロフィールシートを作る際にも、「料理をするつもりはないです。それぞれ自分で買うなり外食するなりすればいいと思うので、その希望を書きます」と言います。

「それなら、せめて『平日はお料理を分担して下さる方が希望です』『土日は2人で一緒に作れると嬉しいです』などと歩み寄りましょう」と促しても、「なぜ私がそんなふうに書かなければならないんですか。何時に仕事が終わるかなんてわからないので無理です」と春菜さん。

なんとか譲歩して「人生をともに楽しむパートナーとして、家事を協力しあいたい」と書いてもらいました。婚活では、相手に対して「私と結婚すればこんなメリットがあります」ということもアピールする必要があります。自己主張だけでは成婚は遠のきます。

また努力家で仕事に精力的にこなしているのはいいのですが、お見合いで、「私はこんなに頑張っているのに、世間の大半の人は頑張っていない」という態度をとったり、不満を顔に出してしまうことも。

男性のことを「くん」と呼んでしまうクセ

男性のことを「○○くん」と呼んでしまうクセもありました。お見合いで「○○くん、それ本気で言ってる? それがどうしたの?」などと言ってしまうので、その都度、私が相手にお詫びの電話を入れています。

さらに「結婚したら私の実家の○○県に住むよ」と、相手の意見も聞かずに言い切ってしまう。「だって、○○くんは私よりも稼げてないよね。実家なら家賃もかからない。私に付いてくるしかないでしょう」という発想です。

多くの方が「結婚相談所に入りさえすれば結婚できる、魔法使いのようにポンと結婚相手を用意してもらえる」と思っています。特に美咲さん、春菜さんのような高学歴、高収入の方は「自分は相手を選べる立場である」という思い込みが強い。

「私は優秀だから結婚だって簡単にできるはず。誰もが優秀な私と『結婚したい』と思っているはず」と思い込んでいます。しかし、それは勘違いです。

美咲さんにしても春菜さんにしても、カウンセリングではプライドを傷つけないように「あなたのような優秀な人はそうそういないので、あなた以上の人を探すことは難しい。だから、あなたを応援してくれる人を探しましょう」「相手を思いやることができなければ、結婚しても長くは続きませんよ」と、結婚は人生のパートナー探しであることを少しずつでもわかっていただけるように伝えています。

6000円のお茶代を男性が払おうとしたら

東大卒の40代女性・彩さん(仮名)は会社員で年収500万円。お見合い相手のことはいつも「自分にはもったいないくらい素敵な方でした」と言っています。

あるお見合いでは、ケーキセット1人3000円、計6000円を男性が支払おうとしました。通常、お見合いにかかるお茶代は男性が支払うことになっているのです。

しかし彩さんは、男性が自分よりも年収が低いのに「6000円はあまりに高い」と思い、「私の分は自分で出させてください」と申し出られました。女性でそんなに気が利く人はなかなかいないので、彩さんはすぐに成婚となりました。

彩さんのようなタイプはめずらしいですね。一般企業で上司や取引先にもまれて生き抜いてきた経験が役立っているのかもしれません。実際私の経験だと、「先生」と呼ばれることに慣れている士業の方よりも会社員の方のほうが、どちらかと言うと婚活がスムーズに行くことが多いように思います。

(植草 美幸 : 恋愛・婚活アドバイザー、結婚相談所マリーミー代表)