『おむすび』写真提供=NHK

写真拡大

 朝ドラ『おむすび』(NHK総合)の世界を彩り豊かに、そして賑やかにかき乱してくれているのがヒロイン・米田結(橋本環奈)の地元のギャル集団「ハギャレン」こと「博多ギャル連合」だ。

参考:橋本環奈に影響を与えるのはどんな“ギャル”? 朝ドラ『おむすび』ハギャレンを解説

 その総代表を務めるルーリーこと真島瑠梨役のみりちゃむにも注目が集まっている。朝ドラ初出演で、本格的な芝居も本作が初めてとなる。みりちゃむ含めハギャレンのメンバーは全員、女性1864件、男性391件の応募総数のもと開催された過去最大規模の「若手オーディション」の中から、5カ月に渡る選考の結果選ばれた(※)。

 みりちゃむはハギャレンメンバーの中でも“本物”のギャルであり、総代表役を務めるに文句なしの経歴の持ち主だ。ギャルの代名詞でもある女性向けファッション雑誌『egg』の元専属モデルで、egg公式YouTubeにも彼女の動画は多数上がっているが、その頃からかなり堂々とした落ち着きと貫禄を発揮していて驚かされた。

 みりちゃむがブレイクのきっかけを掴んだのもやはり彼女の物怖じしない度胸が招いた当然の結果に思える。YouTubeチャンネル「佐久間宣行のNOBROCK TV」の「口ゲンカ最強女子オーディション」という企画で、佐久間や男性芸人に対して一切怯まず自然と罵倒する姿は見事だった。“キレ芸”というのはなかなか難しく、塩梅を間違えてしまうと無理やり感が出たり、ただただ騒がしくなってしまったり下品に映ってしまうもの。なかなかにセンスが問われるものだと思うが、みりちゃむのすごさは、的確な一言や一文で相手を牽制してみせるところにある。さらに質問に対する回答には、まさに“ギャル魂”とも言える“自分軸”が光る。時代や流行だけに左右されない彼女らしさがきちんと添えられ、興味を惹きつけられるのだ。

 本作で彼女が発する自然なギャル語の台詞にも説得力がある。常にハッピーで楽しく“アゲェ~”なテンションを維持し、知らず知らずのうちに相手を巻き込んでいく求心力もギャルそのものだ。相手のペースや都合などお構いなしに着実に結同様に視聴者にも侵食していく計算外の波及力はさすがだ。

 地元では伝説のギャルとして語り継がれている歩(仲里依紗)の妹というだけで結に近づき、総代表になって欲しいと唐突に申し出たり。パラパラのイベントに出るのを辞退しようとする結に自分達と撮ったプリクラを親に送りつけると脅してみたり。かなり突拍子もなく強引なやり口が描かれるものの、その強引さがやらしく映らないのは、みりちゃむの持つ潔さや一本気なところが滲んでいるからだろう。

 それもこれも、全ては歩が総代表だった時代から求心力が衰えてきたハギャレンの再起に懸けるピュアなルーリーのギャル愛あってこそ。そして人一倍ギャル愛が強いだろうルーリーは、自身の立場よりハギャレン全体の盛り上がりを優先しようとする。そのためには迷いはなく手段を選ばない忠誠心と行動力もまさに“ギャル魂”そのものに思える。

 きっとみりちゃむにもDNAレベルで組み込まれている、その時々を“場面で”楽しみ思いっきり今を謳歌するというギャルマインドが、彼女を朝ドラ出演という予想もしない展開に連れていったのだろう。まさにギャル魂が切り開いた新境地とも言える。

 さらに頑なにギャルを拒む結を信じ抜く力は、ハギャレン再起のためだけとは思えず、そもそも人を信じることができる才能がルーリーにはあるのだと思える。

 過干渉とも思える結の父親についてすぐさま「心配してくれて超良い親じゃん!」と言い換え、親と食事に行くというメンバーの背中をちょっと切なそうに見送るルーリーの視線が印象的だった。彼女が抱える事情もそのうち明かされそうで、そこでどんなみりちゃむの演技が見られるのかも楽しみだ。

参照※ https://realsound.jp/movie/2024/03/post-1591967.html(文=佳香(かこ))