1993年に発売された「DOOM」はファーストパーソン・シューティング(FPS)ゲームの草分け的存在であると同時に、カーナビやスマート芝刈り機、医療用超音波スキャナー、妊娠検査キットなどありとあらゆる端末に移植されていることで有名です。そしてついに、DOOMの量子コンピューター移植版である「Quandoom」がリリースされました。

GitHub - Lumorti/Quandoom: A port of DOOM for a quantum computer

https://github.com/Lumorti/Quandoom



DOOMはほとんどすべての有用なコンピューターデバイスに移植されてきましたが、これまで量子コンピューターへの移植版はありませんでした。そこでスペイン・バルセロナのInstitut de Ciències Fotòniques(ICFO:光子科学研究所)で量子コンピューターを研究するLuke Mortimer氏は、量子コンピューター用に設計したDOOMの移植版を開発することにしました。

Mortimer氏が開発した量子コンピューター移植版DOOMの「Quandoom」は、量子コンピューター上で実行される量子回路とアルゴリズムを記述するために設計されたプログラミング言語・QSAMで書かれた単一ファイルです。

Quandoomの実行に必要な量子ビットは7万、量子ゲートは8000万個とのこと。記事作成時点でこれほどの性能を持つ量子コンピューターは存在しませんが、QASMシミュレーターを使えばノートPCでも10〜20fpsでプレイできるとMortimer氏は述べています。

実際にエミュレートしたQuandoomの画面はこんな感じ。



ユーザーがキーを押すと入力量子ビットの1つの値が設定され、すべての量子ゲートを含むQSAMファイルが全体に適用されるとのこと。



その後、残りの6万4000量子ビットが測定され、320×200バイナリピクセルの画面として表示されるそうです。



このプロセスを繰り返すことで、量子コンピューター上でDOOMをプレイできるとMortimer氏は説明しています。Quandoomの量子回路ファイルは非常に大きいため、5〜6GBのRAMが必要だとのこと。



なお、Mortimer氏は1年ほどQuandoomに取り組んだ後に飽きてしまったため、プレイできるのは最初のステージのみとなっています。また、「すべての物体が透過されている」「色・音楽・効果音が付いていない」「敵が部屋の間を移動できない」「オートマップがない」など、いくつかの制限があるとのことです。