ビッグテックに関する限り、米国の次期大統領は、市場を独占し、議員やユーザーも納得させるに十分な力を持つソーシャルメディア企業を抑制する一方で、言論の自由、プライバシー、イノベーションを促進するという困難な職務を担うことになる。

そして、現役の副大統領であるカマラ・ハリス氏は、まだ公式に民主党から候補者として指名されていないが、すでに民主党の選挙人の過半数(7月23日の時点で1976票を超える)を確保し、現役の大統領であるジョー・バイデン氏の支持も獲得している。

このため米DIGIDAYは、ハリス氏に注目し、同氏がホワイトハウスの最上位の職務を賭けて元大統領のドナルド・トランプ氏と選挙で対決することに向けた見解について調査した。

米DIGIDAYは、2人の大統領候補について、ソーシャルメディアとビッグテックの主要な問題についての立ち位置を評価した。いずれの陣営も、米DIGIDAYからのコメント要請に回答していない。

TikTokの禁止



ハリス氏:TikTokを禁止する意図を表明していない。

トランプ氏:大統領だった2020年にTikTokの禁止を試みたが、2024年3月に法案がはじめて下院で審議入りしたとき立場を変更した。

これは、トランプ氏が共和党に巨大な額の寄付を行っているヘッジファンドマネージャーであるジェフ・ヤス氏との関係を再構築しようとしたのとほぼ同時期だった。ヤス氏はエンターテイメントアプリのTikTokに金融的な利害関係があると報じられている。

コンテンツの調整、誤情報と虚報



ハリス氏:ソーシャルメディアプラットフォームがアプリの有害なコンテンツに責任を持つとともに、コンテンツをどのように調整するかを明らかにするよう、より厳格な規制を望んでいる。

同氏の立ち位置は多くの場合、政府とソーシャルメディアが問題を解決するためオープンに共同で取り組むという結果をもたらしてきた。

トランプ氏:通信品位法230条(Section 230)の改定を2020年に提唱した(この法は現在、ソーシャルプラットフォームの所有者を、第三者により投稿される内容の責任を負うことから保護している)。

ソーシャルメディアプラットフォームの「虚報」を頻繁に非難してきたが、同氏自身がプラットフォーム上で誤情報を広めてきた。

オンラインのハラスメントとヘイトスピーチ



ハリス氏:ソーシャルメディアプラットフォームがハラスメントやヘイトスピーチの責任を負うべきだとし、これらのプラットフォームが問題点に対して適切に対処してこなかったと信じている。

トランプ氏:ハラスメントやヘイトスピーチに対して、さらに強い対策の設置を推進しておらず、言論の自由を保護することを優先していると思われる。

データのプライバシー



ハリス氏:ソーシャルメディアのユーザー(消費者)の個人情報を保護し、ユーザーが自分のデータ、そしてソーシャルメディア企業がそのデータをどのように使用するかをコントロールできるよう、強力なプライバシー法を望んでいる。

トランプ氏:特定のプライバシーポリシーを要請してはいないが、より軽微な規制を行う方針を全般的に支持している。

独占禁止法



ハリス氏:正当な競争を促進し、独占を防止することを目的としたバイデン氏の独占禁止法を続ける可能性が高い。

トランプ氏:従来は、一般的な共和党員よりもかなり積極的に行動しており、特にテック分野のM&A(合併買収)契約を精査してきた。

テック企業の分割



ハリス氏:2019年の時点で、大手テック企業の分割の検討については寛容であることを表明している。

トランプ氏:テック企業の分割を主眼として追及することは考えにくい。大手テック企業の分割に関心を抱いてはいるものの、主に独占禁止の懸念よりも個人的な不満、たとえば特定の企業が自分を正当に扱っていないと考えていることなどが理由だ。

AIの規制



ハリス氏:バイデン氏による、公共がAIの監督と規制をより細かく行えるようにするための行政命令を支持している。

トランプ氏:バイデン氏のAIに関する行政命令を取り消すことを公約した。

選挙への干渉



ハリス氏:選挙に外国からの干渉が発生する可能性を認め、今後の攻撃を予防するためプラットフォームに責任を負わせるとしている。

トランプ氏:選挙への妨害を防ぐため、ソーシャルメディアプラットフォームがさらに対策を行うことを望んでおり、2020年には十分な対策がなされなければX(当時はTwitter)を「厳しく規制するか、廃止させる」と公式に脅迫した。

ソーシャルメディアプラットフォームが2016年の選挙に干渉したと何度も訴えており、それ以来同氏がそれらのプラットフォームでの保守派に対する検閲と偏見であると信じているものを批判してきた。

[原文:Where Kamala Harris and Donald Trump stand on big tech issues]

Krystal Scanlon(翻訳:ジェスコーポレーション 編集:坂本凪沙)