ストレスが多い毎日でもペットの猫に癒やされている、という人も多いのでは(写真:kotoru / PIXTA)

飼い主を笑顔にしたり、心を癒やしたり。ペットとして日本でも親しまれている猫。それゆえ、よく話題になるのが「あなたは犬派か猫派か?」ではないでしょうか。スウェーデンの愛猫家でジャーナリストのカリーナ・ヌンシュテッドさんと、ウルリカ・ノールベリさんが上梓した『にゃんこパワー:科学が教えてくれる猫の癒しの秘密』から一部を抜粋、再編集し、お届けします。

忙しい人のペットに最適な猫

猫は、働いている人のペットとしても最適です。今では世界人口の過半数が大都市に暮らしていますが、猫は都会の生活にも適応できます。最近では在宅勤務が増え、人恋しくなってもふわふわの相棒が心強い存在。

それに猫は多くを望みません。人間と一緒に過ごし、たくさん眠り、エサを食べ、トイレに行ければいいのです。あまり文句も言わないし、それほどお金もかかりません。


日本のランキングは、ベネッセコーポレーション「ねこのきもち」アプリにペット登録されたユーザーの情報を基にランキング。毛の種類の違いを表す一部のアプリ登録猫種については、合算して集計(集計期間:2022年4月1日〜2023年3月31日)(出所:『にゃんこパワー:科学が教えてくれる猫の癒しの秘密』)

保護施設から引き取られる猫の数も増えていますが、純血種の猫を飼うメリットには、ヘアレスキャットやサイベリアンならば人間にアレルギーが出にくいというのがあります。

バーマンやラグドールは甘えん坊で、バーミーズやベンガルはアクティブ。スウェーデンではブリーダーや猫保護施設から猫を引き取ると、健康状態のチェックが済んでいて、ワクチンも接種済みです。

「猫派と犬派」どちらが幸せ?

よく「あなたは猫派? 犬派?」という話になりますが、2017年のフロリダ大学の調査で、明らかな違いが判明しました。

418人に大がかりな性格検査を受けてもらったところ、猫派の人は内向的で、独りを楽しむタイプが多かったのです。それにクリエイティブで独立心旺盛。真面目でセンチメンタルなところがありますが、周りの人に影響されにくいそうです。

一方で、犬派の人は外向的で社交的、グループで過ごすのが好き。使命感が強く、地に足のついたタイプです。

心理学者のデニス・グアステロ教授は、犬を飼う人は活発で、猫を飼う人はソファで読書をするのが好きだと分析。読書好きにもぴったりのパートナーなのです。

もちろん猫も犬も好きで、両方の特徴を持っている人もいます。ウルリカもハミルトンという名前の茶色いミニチュア・ピンシャーを飼っていて、猫のボーレとクレアとも仲良しです。

ハミルトンはウルリカの夫マグヌスの闘病中に飼い始めた犬で、家族全員が塞ぎこんで家に閉じこもっていた時期でしたが、ハミルトンが来たことでもっと外で遊ぶように。おかげで猫のボーレまで活気づき、一緒におもちゃを追いかけるようになりました。そして並んで眠るほどの仲になったのです。

世界的にも著名な猫研究者デニス・C・ターナー博士は、ボン大学の心理学者ラインホルト・バーグラー教授と共同で、飼い主がペットをどのように見ているかを調査しました。

ペットの特徴を丸で囲んでもらったところ、犬は合理的でコミュニケーション能力があり、わかりやすく、従順で飼い主を守ってくれるという回答が集まりました。

一方、猫は非合理的、敏感、セクシー、愛情深い、独立心がある、ナチュラル、優雅、反応が速い、静かで穏やか、清潔、ランニングコストが安いという回答でした。

猫と犬、どちらが自分を幸せにしてくれるでしょうか?

どちらを飼うか悩んでいる場合、まず猫と犬の特徴どちらに魅力を感じるかを考え、それから自分がその動物のニーズを満たせるかどうかを確認するとよい、というのがターナー博士の答えです。

人を猫派か犬派に分ける必要はないのかもしれません。誰だって「うちの子」に夢中なのですから。

「ミャオ効果」でイライラ軽減

猫が幸福感を広める現象は「ミャオ効果(Meow Factor)」と呼ばれ、研究でも、ユーチューブで猫の動画を観ると悲しみやイライラ、不安といったネガティブな感情が軽減されることがわかっています。

猫動画は楽しいことに集中し、人生に希望や満足を感じさせてくれるため、中毒性もあるようです。

注意を引きたい時、誰かを喜ばせたい時には、まずは可愛い子猫の写真を見せる−−世界的に有名な環境活動家グレタ・トゥーンベリさんも、2021年のアースデイに向けて動画を投稿した時にそのテクニックを使いました。するとすぐに数百万回もの再生があったのです。

イギリスの調査によると、イギリス人は1日に380万枚も猫の写真を投稿しています。一方で、人の自撮り写真はわずか140万枚。世界的に有名なインフルエンサー猫もいて、天気予報を伝えたり、スペイン語を教えたりします。

黒猫は「不運をもたらす」?

黒猫が横切るのを見た人には本当に不運が訪れるのでしょうか。しかし歴史上の賢人たちは異論を唱えているはず。古代エジプト人は猫ーー特に黒猫には邪悪な力を追い払い、周りの人を守ってくれる力があると考えていました。

ところがローマ帝国が崩壊した後、猫の歴史にも急展開が起こります。なぜか突然、魔術と関係があるとされたのです。

特に黒猫は超自然的な存在で、不運をもたらすと。

アイルランドでは、神様が死者を迎えに来る前に黒猫が魂を盗んでしまうと信じられ、埋葬されるまでは交替で遺体を見守りました。イギリスでは黒猫は魔女が姿を変えたものだとされ、その考えが大西洋を越えてアメリカ大陸にも根づきました。

黒猫に関する民間伝承は色々あります。甲板に黒猫がいると船が沈没すると思っていた海賊もいたし、漁師の妻たちは黒猫が幸運を意味し、船旅を安全にしてくれると思っていました。


劇の初日の客席に黒猫がいると(当時は劇場に猫を入れてもよかったのです)、公演は成功するとされていました。

1970年代のスウェーデンで育った私たちは、黒猫が道を横切ったら必ず「ヴィーヴィーヴィー」と言うように教わりました。おもしろいことに、このおまじないは国によって異なります。

黒猫が不幸を呼ぶという偏見があるのはヨーロッパの一部の国や北米だけです。日本では昔、黒猫は「福猫」として愛されたし、中国の風水では猫は調和をもたらすとされています。猫の夢を見ること自体が良い兆しなのです。

( カリーナ・ヌンシュテッド : 作家・翻訳家)
( ウルリカ・ノールベリ)