すき家の「ディストピア朝食・500円」の正直な感想
すき家セルフサービス店の朝食メニュー。カットりんごやアイスコーヒーを付けても、ごはんを小さいサイズに変えることで「ぴったりワンコイン」が実現しました(筆者撮影)
喫茶店やレストランが、朝の時間帯にドリンクやトーストなどのメニューを割安価格で提供するモーニングサービス。名古屋の喫茶店が始めた文化とされていますが、最近では大手外食チェーンも数多く提供しています。
そんなチェーン店の外食モーニングをこよなく愛するライター・ブロガー、大木奈ハル子さんがお届けする本連載。第84回となる今回、訪れたのは「すき家」です。
さまざまな外食チェーンで販売している朝限定メニュー。カフェやハンバーガーショップ、おそば屋さんなどはもちろんのこと、最近では焼肉店やラーメン店などでも独自のモーニングサービスを展開しています。
朝メニューの定番として、根強い人気を誇るのが牛丼チェーン。安価で提供される王道の和定食を食べたことがある人も多いのではないでしょうか。
7月は大手牛丼チェーン4社「すき家」「吉野家」「松屋」「なか卯」の朝メニューを食べ歩き、予算500円で食べられる朝食をレポートしていきます。先週は「なか卯」をご紹介しましたが、今週は「すき家」です。
すき家の豊富な朝食メニュー
「すき家」の朝食メニューの販売時間は朝の5時から11時までとなっています。
大手牛丼チェーン4社のなかで、最も朝限定メニューが多いのが「すき家」です。価格設定も税込290円から税込520円とお手頃で、16種類中14種類が500円以下。お得感のある300円台のメニューも豊富です。
席に座ってからタブレットで注文するスタイルではなく、席に座る前にこちらで購入します。キャッシュレス時代がいよいよ進んできました (筆者撮影)
朝のメニューはこんな感じ
ということで、朝のメニューをご紹介していきます。
すき家の朝限定メニューは16種類(筆者撮影)
・たまかけ朝食 税込290円
・納豆たまかけ朝食 税込360円
・牛たまかけ朝食 税込390円
・塩鮭たまかけ朝食 税込490円
・塩さばたまかけ朝食 税込490円
・まぜのっけ朝食 税込290円
・納豆・まぜのっけ朝食 税込360円
・牛まぜのっけ朝食 税込390円
・塩鮭まぜのっけ朝食 税込490円
・塩さばまぜのっけ朝食 税込490円
(筆者撮影)
(筆者撮影)
店内での提供にも、使い捨て容器を使用
今回の取材は「すき家」のセルフサービス店舗を利用しました。店内入り口に並んだタッチパネルで会計を済ませ、印字された札番号を呼ばれたら自らカウンターに取りに行くという、効率的なシステムが採用されています。
店内で提供する食器にも使い捨て容器を使用していることがSNSで、「ディストピア(反理想郷、ユートピアの逆の意味を持つ)」だと話題になったので、ご存じの方も多いのではないでしょうか。
広めにスペースを確保した受け渡しカウンター(筆者撮影)
興味深かったのはセルフサービス店のメニュー写真が、一般店舗のタブレットメニューとは別のものだったこと。提供される商品とメニュー写真に乖離がないように、プラ容器や紙皿に載ったメニュー写真が採用されていました。
こうしておけば、使い捨て容器で出てくることを了承したうえで購入することになるため、思っていた商品と違ったというクレームを回避できます。冷凍食品などの商品パッケージの下に小さく印字される「写真はイメージです」とは真逆の戦法ですね。
実は筆者はかなりの「すき家」ヘビーユーザーです。なぜなら最寄りのコンビニよりも近くに「すき家」があるから。コンビニのレジ横のコーヒーマシンよりも、「すき家」のアイスコーヒーを飲む頻度が高く、「からあげクン」感覚で「からあげ」をテイクアウトしています。
すき家の一部メニューが70円値引きになる「すきパス」や、レシートに印字される30円値引きのアンケートクーポンなど、リピート客をいい意味で「えこひいき」してくれるしかけがあったり、単品メニューが多いので複数回利用しても食べ飽きないなど、ファン化するしくみは秀逸です。
すき家 牛まぜのっけ朝食のとん汁こだわり変更で500円ちょうど(筆者撮影)
個人的にダントツのお得感を感じるのがこちらの朝食アレンジ(すき家用語でこだわり変更と呼びます)。税込390円の牛まぜのっけ朝食のみそ汁を、110円追加でとん汁に変更して、お支払いはジャスト500円です。
みそ汁をとん汁に変更する差額はプラス110円と、牛丼チェーンのなかで一番安いのでお得感もひとしおです(吉野家は121円、なか卯は170円プラスでとん汁変更可能、松屋は単品価格210円)。
おかずは、牛小鉢、おんたま、おくら、かつおぶし。一般店舗では白ごはんとは別添えで、牛小鉢、おんたまとおくら小鉢が提供されますが、セルフサービス店では丼として完成した状態でごはんに載って出てきました。
牛丼よりおいしいまぜのっけ丼
筆者が「すき家」で最もお得だと思っているのが、この牛まぜのっけ朝食です。実はレギュラーメニューに「かつぶしオクラ牛丼」という商品があるのですが、こちら並盛で税込580円するのです。ここに単品税込110円のおんたまを載せたら690円。これが、牛まぜのっけ朝食とほぼ同内容となります。
もちろん「かつぶしオクラ牛丼」と比較すると、具材の全体量は少ないのですが、さらにみそ汁までついて税込390円というのは、コスパが良すぎやしませんかと。さまざまな種類のメニューを食べたいという気持ちを凌駕するバリュー感に負け、ついついまぜのっけ朝食ばかりを食べてしまいます。
牛小鉢の甘辛いしょうゆ味の味付けは、万人受けするおいしさ。くたくたに煮込まれた甘い玉ねぎと一緒に白ごはんをかっこめば、口の中に幸せが広がります。
これだけでもおいしいのに、そこにオクラのシャキシャキとねばねばが加わり、さらにおんたまで、とろりとしたコクとまろやかさを追加して、仕上げにかつお節で風味と香ばしさでまとめる。
おいしいものとおいしいものを一緒に食べれば、よりおいしい。「すき家」のフードペアリングの魔法がいかんなく発揮されたメニューなのです。おくらの緑、おんたまの黄色、紅しょうがの赤という、色彩のコントラストの美しさもお気に入り。目で見ておいしいというのも大切ですよね。
牛丼店やとんかつ店など、和食ファストフードチェーンのとん汁は、軒並みおいしいうえに安くて具沢山なので、みそ汁をとん汁に変更するだけで、満足感や摂取できる食品の品目数が格段にアップするため、積極的にオーダーするようにしているのですが、「すき家」のとん汁はそのなかでも上位のおいしさです。
具材には小さめサイズの豚肉もたっぷり入っています。豚肉の脂がスープに溶け込んだコクのあるスープにしいたけとカット昆布でさらに旨みをアップ。おいしさの相乗効果を引き出しています。
ほかにも、大きめサイズのこんにゃくがプリッ、厚切りの大根がほっくりじゅんわり。ごぼうがシャキシャキ、にんじんはくたくた、しいたけなどが入っています。で、ボリューム満点で食感も豊かです。
「外食先でみそ汁かけごはんはお行儀が悪いかな」と、いつもは我慢していたのですが、今回は使い捨て容器なので、とん汁のカップにごはんを入れてぞうすい風にして食べました。ごはんで豚汁の塩気が和らぎ、優しい味になってますますおいしい。
壁に向かって設置されたカウンター席なので、他の誰かの目を気にすることもなく、自分が好きなスタイルで気兼ねなく食べました。
すき家の密かな人気メニューカットりんご
サイドメニューを組み合わせると、さらにバラエティ豊かな朝食をオーダーできます。軽い朝食にデザートと食後のドリンクを添えてもワンコイン。税込290円のたまかけ朝食を、ごはんミニにすれば税込260円。小盛のごはん(とはいえごはん茶碗1杯分ぐらはあります)に、生卵とみそ汁、小鉢と味付けのりというシンプルな朝定食は、軽く朝食を食べたいときにぴったりです。
すき家 たまかけ朝食ミニに、カットりんごとアイスコーヒーMで500円ちょうど(筆者撮影)
デザートにカットりんご税込130円、食後のドリンクにアイスコーヒーMサイズ税込110円を追加注文すると、ぴったり500円です。カットりんごは2切れ入りで、ちょっとつまむのにいい量です。「デザートが欲しいけれどプリンなどのスイーツだと甘すぎる」というときに、さっぱり食べられるのが嬉しい。
今ではコンビニでもカットフルーツの取り扱いがある店舗が増えましたが、以前は「すき家」でしか食べられなかった異色のメニューです。手軽に生フルーツを食べられるというのはありがたい限り。シャリシャリした食感と、甘酸っぱい味わいで、口の中がさっぱりします。
以前も、同連載で紹介しているのですが、密かに筆者が激推ししているのが「すき家」のアイスコーヒーです。
牛丼屋とあなどることなかれ、本格的なアイスコーヒーを110円で販売中(筆者撮影)
一部店舗のみの取り扱いではあるのですが、フェアトレードのコーヒー豆を使用しているにもかかわらず(一部店舗と言いつつ、体感的には比較的利用できる店舗が多い印象です)、税込110円というコンビニのレジ横のコーヒーメーカーみたいな安さで、カフェチェーン並の完成度の高いアイスコーヒーを楽しめます。
味はかなりの深煎りで苦味の強い仕上がりなうえに、濃度も濃いめのため、ミルクとガムシロップを入れて飲むのがおすすめです。多分、オーダーしてからすぐではなく、ある程度氷が溶けてから飲むことを想定して商品を開発しているので、濃いめにドリップしているのかもしれません。
牛丼を食べたあとのもっちゃりした口の中を、冷えたアイスコーヒーでリフレッシュするのも、なかなかオツなものです。なんとなく食べ終わったあとぼんやりしづらい牛丼店ですが、「疲れているし、もうちょっと長居したいなぁ」という気分のときに注文すれば、免罪符にも最適です。
ディストピアすき家は猛暑のオアシスだった
セルフサービスは提供スピードアップで、利用者にもメリットあり(筆者撮影)
SNSでは使い捨て容器をディストピアと揶揄され、「味気ない」「食事ではなく餌のよう」というような否定的な意見もあるセルフサービス店ですが、合理化されているためオペレーションが早く、注文して1分もすれば注文した商品を受け取れました。
スピード面でいえば利便性は上がっているので、「すき家」に何を求めるかによって評価が分かれそうです。SDGsという観点から見れば、使い捨ての容器というのは褒められたものではないかもしれませんが、視点を変えれば「食器を洗わないことによって節水をしている」「働く人にゆとりをもたらしてる」と言えなくもありません。
席を立つ際にゴミもセルフで処分する。食べ残しはゴミ箱へ(筆者撮影)
白と白木調を基調とした店内は明るく、客席は全てカウンター席で構成され、利用客がトレイを持って行き来しやすいようにかなりゆったりと通路が設けられています。片付けまでがセルフサービスなので、店内が荒れていないのも好印象です。食べ終わった食器がテーブルに残っていると、空席でも座れないし、荒れた印象になりますしネ。
利用した日は梅雨だというのに真夏並の暑さで、9時の時点で30度を超えていました。汗だくで店内に入ると、エアコンがガンガンに利いた店内は、ディストピアどころか都会のオアシスだと感じた朝でした。
【その他の画像も】「ディストピアか」と話題、店内飲食でも「プラ容器」提供の店舗があるすき家。容器やメニューの様子【25枚】
編集部注:本記事に登場するメニューの価格は、すべて取材時点のものです。昨今の円安、原材料高騰などの影響を受けて価格が改定されている可能性があります。また、店舗によってモーニングの値段・内容は異なる場合があります。
画像をクリックすると本連載の過去記事にジャンプします
(大木奈 ハル子 : ブロガー・ライター)