SNSは単なるトレンドではなく、長期的なデジタル遺産として活用する可能性があり、その価値を再評価する必要がある。主要プラットフォームの国内外の動向を分析し、SNSの運用とユーザーの心理における「バズ」の影響を探る。Z世代の元ヘビーユーザーの視点を通じて、アルゴリズム主導のコンテンツフィードに対する不満と、その影響を受けたSNSの使い方の変化を紹介する。ユーザーリテラシーの向上と感情の数値化が求められるいま、SNSはどのように進化し続けるのか。本記事では、ソーシャルメディアのエキスパート、オウイエ聖羅氏がユーザーにとって何が有益であるかをいま一度問い直し、SNSを取り巻く環境を考察した。

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「もはやフィードには自分の意図とは関係のないコンテンツで溢れ、必要以上に追うことはとっくにやめた」と語るのは、Z世代の元プラットフォームのヘビーユーザーだ。アルゴリズムをハックするべく、プラットフォームの裏をついたSNS運用論など、喉から手が出るほど欲する業界人はかなり多いのではないだろうか? だが、いまSNSで起きているムーブメントや流れに冷静な視点を持ち、本来プラットフォームが持つ特性や価値を見直す時でもあると感じる。本記事では、ユーザーにとって何が有益であるかをいま一度問い直し、SNSを取り巻く環境を考察した。

SNSを取り巻く世界はもうすでに、使い尽くすところまでいった

現在SNSの状況を語るには、「定量的」「定性的」な両方を十分に理解していく必要がある。まずは、定量的な側面での現状を考察する。世界的に見た際、人気の高いプラットフォームの上位3位には、YouTube、Facebook、インスタグラムの順番に君臨している。どのチャネルもユーザーを着実に増加させているのは、周知の事実だろう。一方、国内の動きとしては、YouTube、インスタグラム、LINEの順番でもっともポピュラーとされている。国内外の動向を見ても、動画や静止画でのビジュアルコミュニケーションの活発なプラットフォームが上位を占めている。Facebookとインスタグラムを運用するメタ(Meta)のパワーを感じると共に、現在Meta Quest(メタクエスト)やRay-Ban(レイバン)サングラスをリリースするなど、リアルとデジタルの垣根を超える施策も記憶に新しい。

国内での近年の動向

国内の、主なSNSの動向をおさらいしていく。【Facebook】広告リーチが減少傾向。ユーザーの好みやプラットフォームのエンゲージメントの変化が影響しているのではないか。2023年初頭の時点で、Facebookの広告リーチは日本の総人口の12.2%に相当しており、ほかのプラットフォームと比較して控えめな存在感を示している。【YouTube】2023年初頭には、7840万人のユーザー数を記録。影響力のあるマーケティングとコンテンツ作成で重要な役割を果たしている。【インスタグラム】日本で4570万のユーザー数を持ち、若い世代と女性に強い視覚文化の親和性を示している。リールをはじめ、新機能のアップデートも行われユーザーの滞在時間も伸びている。【TikTok】2023年初頭までに日本では2070万ユーザーに拡大し、若年層(特に、10〜20代)の大きなシェアを獲得。しかし現在、米国での事業を売却しなければ国内でのアプリ配信禁止するなど、国によってアプリの規制対象にもなっている。【X】日本のソーシャルメディアシーンの要。ニュースや情報が匿名での表現できるため、現在プラットフォームとしての正確性やアルゴリズムに関して疑問を感じるとの声もある。

「バズ」重視のトレンドとユーザー心理の影響

また、定性的なSNSの変化は、定量的な数値の成長に比べやや雲行きの怪しいニュースが飛び交っている現状もある。昨今SNSでの戦いは、コンテンツドリブンな「映え」要素より、アルゴリズムドリブンな「バズ」をいかに行えるかという2つがある。「バズ」にフォーカスしたSNSトレンドが多く見られ、コンテンツの手法はある程度決まってきたように思う。ユーザー心理として、「より見られるコンテンツ」を配信したい気持ちにかられるプラットフォーム上の仕組みが要因といえる。TikTokやインスタグラムのリールなどのショート動画は、「既存フォロワーにリーチ」する仕組みではなく、「新規の潜在フォロワーにリーチ」しやすい仕組みとなっている。つまり、コンテンツをより見られる確率が高まるというわけだ。多くを求めて、いつしかどの程度多く見られるか? と無意識のうちに期待値も高くなった状態で、投稿後の反響を気にしながら投稿していくユーザーも多く見受けられる。過度な露出をする、炎上につながる危うい投稿をするなど、モラルに反する行為がSNS上での注目を集める「ネタ」になり得るというリスクを高める現象が生まれた要因といえる。SNSは本来誰のための、どんな道具で、どのような影響をもたらすことができるのかは、今後も議論が必要だと考えられる。また、プラットフォームの著しい変化に伴ったユーザーリテラシーもまだ追いついていない現状もある。コンテンツ配信側とコンテンツを受け取るユーザー双方に対し、SNSの本質がより問われる時代へと突入していくのではないだろうか。

見えない感情の事象化とアップデート

SNSでいわれてきた従来のルールやリテラシーは従来の常識。大概は手法を攻略するか、勝ちパターンを見つけ運用方法を模倣するなど、表面的な部分しか行き着けていない場合がほとんどだ。ある意味でSNSは、原点回帰のタイミングではないだろうか? 自然の原理の如く、SNSは水のような特性といえる。形や流れが変化していることを踏まえると、いま人々に求められるのは、「見えない感情の事象化とSNS思考のアップデート」ではないだろうか?ここからは、著者でありSNS領域でクライアントワークや様々なステイクホルダー達との意見交換を行ってきた数年の情報、およびSNS従事者の一員としてSNSの本質について切り込んでいく。正直なところ、発信者であっても、受け取り手であってもまず「SNSは誰のためのものなのか」という点をどう解釈しているかで、その人のSNSリテラシーが問われる。闇雲にSNSアカウントを開設する、SNSでフォロワーを増やしたいという漠然とした目標に対しても、「何のために」という点での議論が抜けてしまう。そして意外にもこの点について語られているケースが少ない。たとえば、ラグジュアリーブランドのボッテガ・ヴェネタ(Bottega Veneta)は2021年に、公式アカウントを突然消したことで世間の注目を浴びた。当時、彼らにとってソーシャルメディアからもたらされる最大の価値は、ユーザー自らがプロモーションに参画し、リアルな声としてUGCが創出されることとしていたからだ。もっとも重視していたのは、ユーザーからの直接的な声や反響がどれだけソーシャルメディアで集まり、ブランディングにつながるかという点だ。意外かもしれないが、SNS運用を行うことが必ずしもSNSというプラットフォームでユーザーの心を射止める唯一の方法とは限らない。当時、ユーザーによって約140万人規模のファンアカウントが立ち上がるなどの現象を考えると、SNS活用がアカウント運用だけではないということが明らかになった。

感情の数値化とデジタルの遺産

多くの場合、SNSは手法に注目が集まりがちだ。だが、プラットフォームをどのような場所として捉え、活かしていくのかを考えることでソーシャルメディアのスタンスも自ずと行うべきことが見えてくる。この視点は、過去あまり語られることはなかった。あえて今回いうならば、ブランドの方向性や本来の強みを模索していくなかで、こういった潔い決断しかり長期的な価値も含め、本来SNSの価値を提示していくことが私自身を含め従事している人に求められる部分だ。SNSを分解して考えていくと、行き着くのは、本来人々の感情がツール内でありとあらゆる指標となっているということ。代表的な機能でいうと、?like:どの程度関心を寄せているか?Comments:自分の反応を言葉で表現できる?share:多くの人と共有がしたい−−人々の感情の結果が数値や機能として備わり進化している。そんな感情の集合体が数値となって表されることで、人は初めて影響を視覚的に捉える。数字に圧倒され、それが欲求と重なり、さらなる機能の促進に対応する。常に魅力しつづける場所として、新たな感情の数値化が行われている。いまは数値として示せていないが、我々の感情を揺さぶるものはなにか。互いに影響しあっている事柄にどう目を向けていくのか。思考や想いなどを表現した結果、SNSによって浮き彫りになっていくのではないだろうか。こういったサイクルを経て、その事象を育てることが果たしてSNSで可能なのか? SNS自体もトレンドで終えてしまうのか、もしくはひとつのデジタルの遺産として育てていくことができるのか? という部分はユーザーに委ねられているといってもよいだろう。Written by オウイエ聖羅