古厩:なるほど、青山さんの『EUREKA』直後だったんですね。塩田明彦監督の『害虫』(2002年)も良かったし、あおいちゃんは、ほんとに映画の人ですね。いろんな撮影で大変だったと思います。『ケータイ刑事』の現場では、ずっと寝ていました。家が同じ方向だったので、帰りの電車ではよく、二人で爆睡(笑)。

――現場の監督と俳優にしかわからないエピソードですね。古厩監督は青山監督の劇場デビュー作『Helpless』(1996年)で助監督を務めています。その青山監督の追悼上映会『帰れ北九州へ―青山真治の魂と軌跡SHINJI AOYAMA RETROSPECTIVE 2023』へに寄せた菅田将暉さんや『空に住む』(2020年)に出演した岩田剛典さんのコメント文から監督と俳優ののっぴきならない関係性を感じました。監督と俳優の関係性をどのように考えますか?

古厩:僕ら世代の監督は、「私」という個性を前面に押し出す俳優よりも被写体として素材でいてほしいと思う感覚が強いと思います。映画にすべてを捧げます、みたいな……。もちろん逆のタイプの俳優も好きです。でももし勝新太郎さんが目の前にいたら、絶対に魅力的ですよね。

何度か飲みに行ったりする俳優さんはいますが、あまり近しくならないですね。共犯者みたいな人を作って、その俳優と作品をたくさん作れる体制を整えられたら最高ですが。

それこそ、青山さんのように。それにしても遺作になった『空に住む』はすごかった。空虚を絵にしようとする試みというか……、青山さん。

◆今後の監督作品にむけて

――『空に住む』では、まさか青山作品のエンディングとして三代目 J SOUL BROTHERSの曲が流れるとは驚きました。LDH繋がりだと、の木村慧人さんと山中柔太朗さん主演のドラマ『飴色パラドックス』(2022年)で監督をされています。

古厩:『飴色パラドックス』の木村くんと山中くんは、ほんとにいい子たちでした。LDHの人は体育会系だから礼儀正しくて、気持ちいいですね。

前に目黒のホテルに泊まっていたとき、こんなことがありました。すごくおしゃれなホテルで、僕が「乗ります」と言って、エレベーターに駆け込んだら、全員EXILE。ものすごいいい匂いだったのを思い出しました(笑)。

――それ、わかります(笑)。LDHアーティストが出演する某局の番組収録を見学したとき、ドアが開閉しただけでものすごいいい香りが漂ってきました。

古厩:すごいいい匂いですよね。「ああもうちょっと俺だめ……」みたいにキュンとなってしまいました(笑)。今度、どの香水なのか、銘柄を聞きたいと思います。

――『PLAY!』の撮影現場からは青春の香りが豊かに漂ってくるように思いますが、今後はどんな作品を撮りたいと思っていますか?

古厩:青春の香り……と言われると嬉しいですが、「生きてるエネルギー」のようなものが写ってるならいいですね。若い人たち以外を題材にしても、迷って、揺れて、思い込んで、後悔して、笑って……というような、お行儀のいい表情からはみ出して、こぼれ落ちてしまう生命力みたいなものを撮っていければいいなと思います。

<取材・文/加賀谷健 撮影/山川修一>

【加賀谷健】
音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu