2023年8月にGlossyは、ロード(Rhode)のペプチド・リップトリートメント(Peptide Lip Treatment)の販売本数が100万本に到達しつつあることをいち早く報じた。スキンケア効果のあるこのリップクリームは、ヘイリー・ビーバー氏による同ブランドを一躍有名にした商品だ。定価16ドル(約2400円)ということは、ひとつのSKUですでに1600万ドル(約24億円)を稼いでいることになる。

リップを取り付けられるスマホケースが話題に

無香料、スイカ、塩キャラメルという3つの「フレーバー」で発売されたが、その後はまるでポケモンのように、もっと厳密にたとえるならボン・ベル(Bonne Bell)のリップスマッカー(Lip Smacker)のように、新たなバリエーションを増やしてコレクターズアイテムのように思わせることで人々を夢中にさせている。ただ、フレーバー付きリップを近年流行らせているのはロードが初ではなく、サマーフライデーズ(Summer Fridays)も盛況だ。たとえば、同社はブランドの創業6周年に合わせて、バースデーケーキのフレーバーを最近発売した。そして、ソーシャルメディアを利用している人ならすでに知っているように、ロードは一見シンプルなこの商品に関して、ファンをワクワクさせ続ける新たな方法を見つけている。インスタグラムのビーバー氏のフォロワー5100万人とロードのフォロワー130万人のあいだで1カ月近く大きく騒がれているのは、ペプチド・リップトリートメントを取り付けできるように特別にデザインされたスマホケースだ。ビーバー氏自身が(あるいは少なくともビーバー氏が雇ったチームが)マーケティングに精通していることはすでに証明されているので、2023年9月の発売以来、品切れ状態が続いていた4色の色付きペプチド・リップトリートメントが再入荷する2月27日にタイミングを合わせて、35ドル(約5270円)のその「リップケース」を登場させるのは理にかなっている。ちなみにリップティントは別売りである。スマホケースとリップティントのセットの価格は、ビーバー氏のファン向けには51ドル(約7680円)になる。

リップケースモーメントの作り方

とはいえ、スクエア型スマホケースで知られているケースティファイ(Casetify)やフロント(Flaunt)などの人気ブランドのケースも、40ドル(約6000円)から50ドル(約7500円)で販売されている。当然ながらそれらのケースにリップクリームは付いていない。
このリップケースは、2月4日の最初の発売予告から発売日までのあいだに、これまでのどの商品よりも多くの重要な瞬間を迎えている。まずビーバー氏はスーパーボウル(Super Bowl)でリップケースを取り出し、ブランドはその様子を投稿した。インスタグラムの投稿には「試合の途中でタッチアップ 👀📱🎀✨ @haileybieber」というキャプションが付けられていた。またバレンタインデーには、ビーバー氏がエレウォン(Erewhon)とコラボした新しいストロベリーグレイズソフトサーブ(Strawberry Glaze Soft Serve)のプロモーションにて、購入者にはロードからのプレゼントが当たるスクラッチチャンスがあり、その景品のひとつがこのリップケースだった。

TikTokでの反響は?

ビーバー氏がやることはいつもそうだが、「ストロベリーメイク」や「チョコレートシロップヘア」のように、このスマホケースもインターネットで話題騒然となった。Glossyでは2022年に初めてマーケティングの主流化について報じており、かつて「内輪ネタ」と考えられていたマーケティングトークが、今やTikTokで人気コンテンツになっていることを取り上げた。このスマホケースの背後にある戦略も例外ではない。TikTokはすぐにさまざまな意見であふれかえった。まず、このケースがiPhone14と15にしか対応していないことに人々は落胆した。8万5000以上の「いいね!」がついたあるTikTokでは、ユーザーのシドニー・クーパー氏が、このスマホケースを手に入れるために1000ドル(約15万円)の新しいiPhoneを買う可能性について投稿している。そのほか、この仕組みを改造してDIYバージョンのスマホケースを提案する人もいた。また、このリップクリームに以前からある不満の声である「ザラザラ感」を解消するために、スマホとリップクリームのあいだに何らかの熱のバリアを作るような方法で設計されたのではないかと指摘する人もいた。実用性に関する文句も複数みられた。たとえば、MagSafeには対応していないなどだ。模倣品だという非難は? 当然ながらあった。見た目がヴァギナに似ている? それも言われている。ブランド親和性と平均注文価格(AOV)を高める見事なマーケティング戦略だった? もちろんそうした意見もある。この記事に対してロードにコメントを求めたが、回答は得られなかった。

SNSでは各ブランドがジョークを投稿

2月14日には、インスタグラムに990万人、TikTokに58万9000人のフォロワーを持つ創業48年のベネフィットコスメティックス(Benefit Cosmetics)が、自社の代表商品であるベネティント(Benetint)をスマホにテープで貼り付けるという、発売間近のロードのスマホケースをジョークのネタにした動画を投稿した。するとすぐに、数十ものブランドがそれぞれの自社商品を使って同様の動画を作成し始めた。カラーポップ(Colourpop)はベネフィットをタグ付けして、「御社のリップスマホケースを拝見しましたが、さらに当社はリップとチーク付きのスマホケースを提案いたします💖🎀」と書いている。ベネフィットは冗談めかして「すべてのロードはイノベーションにつながる💭」と返信している。ある人は「ヘイリーと一緒に笑っているのか、ヘイリーのことを笑っているのかわからない」というコメントを残した。一方、「クリーンな」サプリメントブランドのヒルマ(Hilma)は、ガス+ブロートレリーフ(Gas + Bloat Relief)サプリメントのボトルをスマホに貼りつけ、「お腹にガスが溜まっている行動派女子のために🏃‍♀️💨」と投稿した。これらの投稿はジョークだが、ロードのスマホケースがトレンドのきっかけになるというのは、いかにもという感じだ。最近のミルウォーキー(Milwaukee)のニュース番組によれば、Z世代の79%がデジタルウォレットを使用しており、物理的な財布を「時代遅れ」と考えている。「スマホ、財布、鍵」の時代は終わった。いまや「スマホ、リップクリーム、外出」の時代である。あるいは、ロードのコピーによれば、「テキスト、トリート、ティント(Text. Treat. Tint.)」だ。

潜在的なマイナス面

投資会社RX3グロース(RX3 Growth)の投資家でパートナーシップ責任者であるキラ・ジャクソン氏は、今回のリップケースに関する投稿で110万回再生以上を獲得しているが、さらなる考えをGlossyに共有してくれた。「私はバッグを持たないタイプだ。だからこれを見たとき、どうしてどのブランドもこれをやらないのだろうと思った。(ロードにとって)これはカートサイズを拡大し、これらのリップグロスを集めている顧客を維持させるためのすばらしい商品だ。そうした人たちはすべての色を購入して見せびらかしたいと思っているし、それがその人の個性の一部となっている」。ジャクソン氏によれば潜在的なマイナス面は、「TikTokやReddit(レディット)で話題にされているようなことだ」という。「つまり、人々はこれは無駄だと考えている。消費主義の極みであり、不必要な追加だと。いずれにせよ、業界のイノベーション全般について、そうしたことが多いともいえる」。

成功のカギを握るのは品質とクールさ

ジャクソン氏は、最初の話題性以上に成功のカギを握るのは、商品の品質だと指摘した。「リップグロスを取り付ける部分が膨張したり伸びたりしてしまい、商品を取り付けられなくなってしまえば、人々は失望するだろう」。2月27日の午前9時(太平洋標準時)に、色付きペプチド・リップトリートメント全4色と並んで、この商品がほぼ瞬時に売り切れになるのは必須である。数年前、バーツビーズ(Burt's Bees)は、同社の看板であるリップクリームをスマホグリップ部分に詰めたポップソケット(PopSocket)を発売したものの、あまり話題にはならなかった。流行りのルックとなるような色付きリップではなかったし、ビーバー氏のお墨付き商品でもなかったからだ。2022年6月の発売以降、何かにつけて話題を呼ぶロードを支えているのは、言葉では言い表せないこうしたクールな要素なのだ。[原文:Glossy Pop Newsletter: Rhode’s ‘Lip Case’ offers TikTok a marketing masterclass]SARA SPRUCH-FEINER(翻訳:Maya Kishida、編集: 都築成果)