TポイントとVポイントが2024年春に統合する(写真:記者撮影)

TSUTAYAにTポイント、そして蔦屋書店――。

『週刊東洋経済』12月2日号の第2特集は「CCC 平成のエンタメ王が陥った窮地」。カリスマ創業者が率いる「企画会社」は、なぜ没落したのか。


共通ポイントの先駆者が、ついに街から姿を消す。

カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が展開するTポイントと三井住友フィナンシャルグループ(FG)のVポイントが、2024年春に統合する。ID数は合計1.46億人と、楽天などを抜いて国内最大規模となる。

ポイントにひもづく決済機能が弱かったCCCと、決済には強い一方で知名度の低さが課題だった三井住友FGとの間で2023年4月に資本業務提携を結んだ。

新ポイントでは、青と黄のイメージカラーが継承される一方、名称はVポイントに統一。Tポイントのブランドは消滅する。

日本初の共通ポイント

Tポイントは2003年、全国1100ものTSUTAYA(ツタヤ)店舗網(当時)とその顧客基盤を背景に、同業態の会員カードを発展させる形で誕生した。日本初の共通ポイントとして、あらゆる業種の有力企業を続々と取り込んでいった。

中でも大きな提携先だったのが、ヤフーとファミリーマートだ。2013年にはヤフー、2015年にはファミマがTポイントの運営会社へ出資もしている。

元ファミマ関係者は「運営会社に出資することで、Tポイントへの貢献度に見合った利益配分を得たかった」と明かす。それだけ当時のTポイントに、高い価値を見いだしていたことがうかがえる。

パイオニアとして栄華を極めたTポイントの牙城を崩したのが、楽天グループとNTTドコモだ。ECをはじめとする経済圏の活性化機能として、2014年に楽天が共通ポイントに参入。2015年には、ドコモもdポイントを始動させた。

ITや通信を主戦場とする両社に対し、CCCはツタヤからの収益が細りつつあり、「資金力勝負の還元合戦で太刀打ちできなかった」(CCCのTポイント事業関係者)。

2019年には、ファミマが楽天ポイントとdポイントを利用可能にするマルチポイント化を断行。同時に出資も引き揚げた。その前後で、三越伊勢丹グループなどの離脱も相次いだ。

「宝の持ち腐れ」状態

とどめはヤフーの離脱だ。同社グループは2018年にキャッシュレス決済サービス「PayPay」を開始し、独自のPayPayポイントも導入。2022年3月に大半のサービスでTポイントの取り扱いを終え、ファミマ同様に出資も引き揚げた。

逆風にさらされ、没落したTポイント。Vポイントとの統合で問われるのが、今後の提携関係におけるCCCの貢献度だ。

CCCは、Tポイントの顧客データを基に展開してきた販促宣伝のソリューションなどを、三井住友FGの膨大な決済データと連動させ、高度なマーケティングの提供を目指すという。

ただ、前出のCCC関係者は「加盟店の手数料ビジネスで稼げていたので、データを使う人材が熟練していない。宝の持ち腐れという状態だ」と打ち明ける。


三井住友フィナンシャルグループの太田純社長(左)とカルチュア・コンビニエンス・クラブの増田宗昭会長兼CEO(撮影:今井康一)

今回の資本業務提携により、Tポイント運営会社の出資構成はCCCが60%、三井住友グループが40%となった。

統合後のVポイントの運営も同社が担うが、競合からは「三井住友のポイント還元原資は大きく、強力なライバルになりうる」(PayPay関係者)との声が上がり、実質的にCCCが三井住友経済圏に入ったも同然の状況だ。

マーケティング企業としての実力を高め、メガバンクにおんぶに抱っこではないと示せるか。ポイント事業の帰趨は、グループの再起に向けた試金石となる。


(森田 宗一郎 : 東洋経済 記者)