モデル経験ありの20代女性が、婚活で一回り上のお相手からフラれた理由は……(写真:Ushico/PIXTA)

婚活で出会い、“この相手とだったら、人生を共に歩みたい”と、結婚を決める。しかし、いざ2人で結婚話を進めていくうちに、親の口出しや反対によって気持ちが翻ってしまうことがある。

仲人として婚活現場に関わる筆者が、婚活者に焦点を当てて苦労や成功体験をリアルな声とともお届けしていく連載。今回は、親が子どもの結婚に口を出し、破談になったケースを見ていきながら、当人同士の気持ちでは片づけられない、結婚と親、それぞれの家の問題を考えたい。

さゆり(27歳、仮名)は現在、医療事務をしているのだが、かつてはモデルやタレントの仕事を少しかじっていた。そんな仕事ができるくらい見た目が華やかで、スタイルのいい美人だ。

高校時代に街でスカウトをされたのだが、“学業が優先”という母との約束のもと、大々的には活動していなかった。高校卒業後は大学に進学せず、バイトをしながら芸能の仕事に本腰を入れた。

しかし、芸能界は甘くない。25歳になってもエキストラのような仕事しか来なかったので、夢はあきらめ、医療事務の資格を取得して、現在の職場に就職した。

お金のある男性を捕まえなさい

両親はさゆりが小学校の頃に離婚しており、母はお金に苦労した経験があるので、さゆりには堅実な人生を歩んでほしかったようだ。結婚に関しても、「若いうちに、お金のある男性を捕まえなさい」と、医療事務の仕事を始めた頃に、結婚相談所に入ることを勧めた。

面談には、母親とやってきた。

「私がした苦労をこの子にはさせたくないんです。年上でもいいから、経歴がしっかりしていて、高収入の男性と結婚してほしい」

20代半ばで美人のさゆりには、同い年から親子ほど歳の離れた男性まで、幅広い年齢層から驚くほど申し込みがきた。さゆりも母の苦労を見てきているので、母と同様の気持ちで、15歳離れていても、年収が高ければ見合いをしていた。

しかし、なかなか結婚にまで進める男性には、巡り会えずにいた。

芸能界は、見た目もコミュニケーション能力もずば抜けて高い人たちの集まりだ。さゆりは40代でも若々しくて魅力的な男性をたくさん見てきた。対して、一般社会の男性は、年収が高い人ほど、コミュ力に欠けた堅物が多かった。考えてみれば、年収が高くコミュ力のある男性は、結婚相談所に登録する以前に、自力で結婚しているのだろう。

お付き合いに入っても、「良い人なのはわかるんですけど、いざ結婚となると……」と言っては、なかなか前に進めずにいた。

その場の空気がどんどん悪く

そうこうしているうちに2年近くが経ったのだが、やっと“結婚をしたい”と思う男性に巡り会えた。男性は、一回り年上で、代々続く老舗の跡取り息子のしょういち(39歳、仮名)。彼は、若くて美人のさゆりに一目惚れだった。

成婚退会の際、さゆりは母親と一緒に挨拶に来た。幸せそうに微笑むさゆりの隣で母が言った。

「舅姑、大舅姑がいるところに嫁ぐのは大変でしょうけど、『同居するわけではないし、盆暮正月、ご実家に行ったときに、いい顔をすればよいのだから』と、さゆりには言ったんですよ」

まずは2人で都内にマンションを借り、しょういちはそこから実家の仕事場に通う。それは、“いきなり大家族との同居は大変だろう”という、しょういちの配慮でもあった。

しかし、そこから1カ月後。この話は破談になった。

「再び活動をしたい」と言って親子で面談に来たときに、破談になった理由を、さゆりはこう言った。

「あちらの家にごあいさつに行ったら、目の前に座ったお義母様が、そっぽを向いて、一度も私と目を合わせてくれませんでした。お義父様は、優しそうな方で話しかけてくださいましたが、お義母様の態度がひどく、結婚に反対しているのがアリアリで、その場の空気がどんどん悪くなっていきました」

そして、そこから数日後、しょういちから「母親があんなに反対するとは思わなかった。僕の代で家業を閉ざすことはできない。家は捨てられない。このまま結婚をしたら、さゆりちゃんが苦労すると思う。この話は、白紙に戻そう」と言われたという。

なぜ、しょういちの母はそこまで露骨に反対をしたのか。

まずは、さゆりの学歴が高卒だったこと。芸能界の仕事をかじっていたこと。そして、さゆりの両親が離婚をしていたこと。“育ちが悪い”“家の格が違う”というのが、反対の理由だった。

娘を金持ちと結婚させようと必死な女性側の母。息子が選んだ女性の経歴が気に食わないと、露骨に反対する男性側の母。子どもの幸せを願わない親はいないのだが、過度な愛情、過干渉は、子どもから幸せを遠ざけているのを理解していないのではないか。

たとえ2世帯でも同居は嫌

やすこ(37歳、仮名)は、都内のメーカーに勤め、商品の企画開発部に所属していた。入社時からその部署を希望していたが、最初は営業部に配属になり、その後は総務部。やっとのことで移れた希望の部署だったので、結婚後も仕事を続けたいと思っていた。

バリキャリタイプのやすこは、これまで仕事に夢中で結婚をなおざりにしてきたのだが、36歳になって、「出産を考えたら、ここ1〜2年のうちに結婚をしたほうがいい」と思い、結婚相談所での婚活を始めた。そして、半年活動をした末に、きよたか(41歳、仮名)と出会い、成婚を決めて、退会していった。

きよたかは都内で働く団体職員で、仕事も安定しており、「結婚後も仕事を続けたい」というやすこの気持ちを尊重してくれていた。

新居は、2人の職場の中間地点にマンションを借りることにした。公園、保育園、託児所、病院などがなるべく近くにあり、子どもが生まれたときに育てやすい環境にある物件を探していたようだ。

ところが、成婚退会をしてから1カ月後、「結局、結婚の話は破談になりました。もう一度活動をします」という連絡が、やすこから入ってきた。

事務所にやってきたやすこは、破談の経緯を語り出した。

「きよたかさんの家に、結婚のごあいさつに行ったときに、ご両親から言われたんです。『ここを2世帯に建て直そうと思うんだけれど、どうだろう』って。寝耳に水でした」

その費用はすべてきよたかの親が出す。「都内の賃貸は、2LDKが13万〜15万円はする。そのお金が浮いたら、貯金や子どもができたときの教育費に回せるのではないか」とも言われた。

きよたかの家は、やすこの職場にも40〜50分もあれば行ける、都内23区の一等地にあった。

さらに、母親は続けた。「外側に階段をつけて、玄関は別、トイレもキッチンもお風呂も別にしようと考えているんですよ。上と下というだけで、別々の家。私たちも、2人の生活に口出ししようとは思っていないし」。

やすこの会社には、そうした環境で暮らしている同僚がいた。「『夕食を多めに作ったから』『たくさんいただきものをしたから』と、義母が毎日のように訪ねてきて、2世帯と言っても体のいい同居よ」と、いつも愚痴をこぼしていたので、それだけは避けたかった。

ただ、面と向かって「嫌だ」とは言えず、その場は「そうですねぇ」と話を濁した。

あいさつを終えて、車で家まで送ってもらう道すがら、きよたかに言った。「いきなり2世帯は、ちょっと抵抗あるかな。まずはこれまで話していた通り、2人で都内のマンションを借りて生活してみない?」。

ところが、きよたかは2世帯に賛成しているようだった。

「実家の近くにはスーパーも、公園も、病院もあるし、なんといっても、親が育児のサポートをしてくれる。保育園に預けるにしても病気になったときに親が子どもを見てくれるなら、何より安心だと思うんだ」

出産を経験したやすこの友達は、「子どもが小さなときは、保育園で流行病や風邪をもらってくる」「急に熱が出た時が一番困る」と言っていた。そして、そんな緊急事態でも仕事が休めないときは、「親に子どもを預けて、仕事に行く」という話をよく聞いていた。

確かに親が近くにいてくれたら、心強い。しかし、大学時代からずっと1人暮らしをしてきたやすこは、たとえ2世帯とはいえ、夫側の両親と同じ屋根の下で住む覚悟ができなかった。

やっぱり白紙に戻そう

返事を濁していたのだが、意に反して2世帯の話はどんどん進んでいった。地方に住む親にも相談したが、「2世帯ならいいんじゃないの? それでも高いお金を出して、2人でマンションを借りたいというのは、あなたのわがままなんじゃない?」と言われる始末。

誰も自分の気持ちをわかってくれない。そうなると頑なに2世帯に住むのが嫌になっていった。そこから急にこの結婚をやめたくなってしまった。

「やっぱり、2世帯に住む決心がつかない」

そんなLINEを出すと、きよたかからの返信が来なくなり、そこから3日経って、「やっぱりこの結婚は、白紙に戻そう」という連絡が来た。

やすこは、筆者に言った。「破談になって、ほっとしている自分がいます。きよたかさんは、いつも『父親を尊敬している』と言っていたんです。きっと頭が上がらないのだと思う」。

さらに、初めてあいさつに行ったときに、きよたかの母に言われた言葉にもカチンと来ていた。

「子育てを甘くみないほうがいいわよ。仕事は、やすこさんでなくても代わりの人はいくらでもいる。でも、子どもが生まれたら、母親はやすこさん1人。代われる人は誰もいないの」

やすこは、筆者に続けた。

「父親に頭の上がらない夫。知った顔で子育て論をいう母親。そんなところにお嫁にいっても、絶対にうまくいかないと思いました」

地方から上京し、大学時代から1人暮らしをしてきたやすこにとっては、親の言いなりになっているきよたかが頼りなく感じた。

きよたかは、実家が都内の一等地にあったので、1人暮らしの経験がない。親の言うことを聞いて2世帯に住めば、15万円近い家賃の出費もなくなり、子どもができたときにもサポートを親に頼めると、安易に思っていた。

親から自立しているやすこ、どこか親離れできていないきよたかでは、結婚してもうまくいかなかっただろう。

口出しは“よかれ”と思う親

結婚相談所の場合、お見合いからお付き合いに入り、結婚をしてもいいという相手が現れると、男性がプロポーズをして、それを女性が受ける。そして成婚退会となる。その後は、それぞれの両親に結婚のあいさつに行く。まずは女性の両親、続いて男性の両親というのが、一般的な順序だ。

このときに、大抵の親は歓迎してくれるのだが、前出のさゆりのように“この結婚には賛成しかねる”という空気を醸し出す親もいる。

また、親から予想もしていなかったことを言われることがある。

2人目のやすこのように、2世帯の同居の打診。ほかにも、女性が一人娘で、 “婿養子に来てくれないか”と突然お願いされ、最終的にそれが受け入れられずに、破談になったケースもあった。

結婚は当人同士の気持ちが大事。しかし、恋愛とは違って、結婚では家と家の結びつきの問題が少なからず出てくる。

親には親の常識、希望があって、そこに添えない結婚にはいい顔ができない。また親の口出しは子どもの幸せを願ってのこと。それは善意であり、親にとっての正論なのだ。


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親に反対をされると、結婚しようという前向きな気持ちがいったん止まるし、考えた挙句に気持ちが翻ってしまうこともある。

親の口出しにどう向き合うか。親に反対されてもそれを押し切って2人で結婚を進めていくか。後者の場合は相当の覚悟がいるだろう。

相談所でのケースを見ていると、親にいい顔をされなかった結婚は、破談になることがとても多い……。

(鎌田 れい : 仲人・ライター)